第14話 光属性の人たちはコミュ強

 僕もネーベルも朝から疲労状態で、テオドーアくんとクルトくんと一緒に、城下の広場へと移動する。

 広場では大きな鍋や鉄板が何か所かに分けて設置されており、さっそくその近くに切り分けた肉が分配され、もうすでに調理にかかっているところもある。

 煮込みに、鉄板焼きに、串焼き、図らずも前に言った部位ごとの食べ比べが出来ることになってしまった。わーい、お肉大好き~。

 ボア系は豚肉に近い味だから、叉焼とか角煮とか、絶対美味しい。

 干し肉も、僕そんなに嫌いじゃない。この世界では携帯食だけど、僕はあれを出汁にして、野菜をたくさん入れたら、美味しいスープになると思うんだ。認識甘いかな?

 あとやっぱりがつんとくるソースは充実させたいなぁ。幸いフルフトバールは果樹栽培が盛んだから、ウスターソースさえ作れれば、中濃・濃厚ソースも夢じゃない。

 味噌醤油は確かに欲しいけど、フルフトバールは内陸だからさぁ、ないんだよ魚醤が。だったらまずウスターソースを先に手掛けたい。

 マヨは卵と油と食塩と酢さえあれば作れるし、トマトソース、グレイビーソース、ブラウンソースはすでにある。

 中濃ソースさえ作れれば、きっとあれが食べれるはず! お好み焼き!!

 本格的なものは、魚粉とか干しエビとか揚げ玉とか、いろいろ入れなきゃいけないのは分かってるけど、キャベツと小麦粉、それに卵さえあれば、作れるんだよお好み焼き。厳密にはもどきだけど。あとはそこにベーコンでも、煮込んだ牛筋肉でも混ぜて焼けば、絶対美味しい。

 そしてソースとマヨさえあれば、もう優勝。青のりなくても紅ショウガなくても、僕は我慢できる。本格お好み焼きが食べたいなんて言わない。もどきでいいのだ。

 それからやっぱりベーコンもほしい。食べたい。今度作ってもらおう。

 あとはやっぱりお米だよなぁ。これは貿易で探したほうが早いと思う。目星はね、ついてるんだよ。東のほうにヤーパネスっていう島国があってね。位置的にそこは日本と同じなのでは? と僕は疑っている。一応そことの貿易もあるらしいし、商人さんにお願いして調べてもらいたい。

 お米があったら、グレートキングボアの肉で作ったチャーシュー丼を食したい。絶対美味しい。

 はっ! もしかしたら、そのヤーパネスに、味噌醤油あるんじゃね? うぉ~!! これはぜひとも各国回ってる商人に探してもらいたい。おじい様とおばあ様にマルコシアス家のお抱え商会あるか聞いてみよう。


 そうこうしているうちにヘッダ嬢とヒルト嬢も合流し、城下町でのお祭りを見て回る。

 ヒルト嬢は、今回僕の学友としてではなく、侯爵令嬢としての立ち位置でフルフトバール領に訪れているので、いつものような男装というわけにはいかず、お茶会などでよく見るデイドレス姿で、僕らと一緒の行動をしていた。

 クレフティゲ伯爵一家のコミュ強にヘロヘロになってたネーベルのメンタルも、これで少しは回復するんじゃないだろうか?

 楽しげな二人を見ながら、ヘッダ嬢は笑顔を浮かべながら訊ねてきた。

「ところでアルベルト様、今回は不帰の樹海で狩りはなさいますの?」

「うん、『初狩りの儀』やってないからね。せっかくここまで来たんだし、初陣と一緒に済ませようと思って」

「まぁまぁまぁ! それはそれは、僥倖ですわ」

 あ、これは、なんかあかんやつ!

「ぜひご一緒させていただきとうございます」

 ほら~! 言われると思った!!

 僕のしかめっ面を見ても、ヘッダ嬢はにこにこの笑顔のまま動じない。クッソ、ダメか。諦める気がしない。

「ヘッダ嬢」

「なんでしょう?」

「遊びじゃないんだよ」

「もちろん存じております」

「危険なの」

「承知しておりますわ」

 無理か~。ヘッダ嬢にはアインホルン公女のことお願いしてるから、強く言えない。

「ハント゠エアフォルク公爵夫妻の許可を取ってください」

「もちろんですわ」

 頼む……、頼む公爵夫妻。絶対に止めてくれ!!

 ヘッダ嬢がどこまでできる人なのかわからんけど、魔獣相手だ。ご両親がちゃんと止めてくれることを願いたい。

 そして僕とヘッダ嬢の会話を聞いていたのか、テオドーアくんまで声を上げた。


「俺も行く!!」


 思わず傍にいたクルトくんを見ると、クルトくんはテオドーアくんを止める気がないらしく、いい笑顔を浮かべているだけだった。

 援軍は頼めそうもないなぁ。

「なーなー、いいだろ?! 俺も魔獣狩り行きたい!!」

 そして朝の悪夢再び、騒ぎ始める。

「アルが行くなら俺も行ったっていいだろ?」

 だから遊びじゃねーって言ってるっていうのにさぁ。

「テオドーアは、明日帰るんじゃないの?」

「残る!」

 そんな簡単に残るって言うな!!

 マティルデ様、却下してくれるかな? して欲しいなぁ? どうかお願いだから止めてください。

「テオドーアは残るって言っても、マティルデ様が許さないでしょ?」

「じゃぁ一緒に頼んでくれよ! アルが言ってくれたら母上許可してくれるはずだ」

 なわけねーだろうが!! おめー自分の母親を甘くみんな!! マティルデ様はラーヴェ王国の裏ボスだからな!!

「アルも一緒に頼んでくれるよな?!」

 知らん! 頼みたくないから頼まないぞ!

 不帰の樹海は浅層だって十分危険な場所なんだからな? 昨日クリーガー父様が何でもないような顔をしてグレートキングボアを狩ってきたけど、あれは不帰の樹海に入りなれたプロだから出来るんだからな。

「あのねぇ、テオドーア」

「んだよ! 水臭いなぁ! テオって呼べよ!!」

 そう言えばいつの間にか『アル』呼びされてたぞ。なにこのコミュ強。

「わたくしも、そろそろ『嬢』はとっていただきたいですわ」

 ヘッダ嬢もぐいぐい来るなぁ。


 結局二人の勢いに押されて、テオドーアくんのことはテオ、ヘッダ嬢とヒルト嬢のことも、私的なところでは嬢を取ることを決められてしまった。

 この二人と一緒にいると、僕の気力、吸い取られる。





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