第15話 この世の不思議を知りたいご令嬢のようだ

「ヒルトから聞きましてよ?! 殿下、魔力巡りって何なんですの?! どのようにされるんですの?! ぜひ見せてくださいまし!」

「ヘッダ様!!」

 身を乗り出して迫ってくるヘッダ嬢を、ヒルト嬢が慌てて押さえる。

「アルベルト殿下、申し訳ございません、その、ヘッダ様は無類の魔術ぐる、いえ、好きでして」

 魔術狂いって言おうとしたね? 

「ごめんあそばせ。わたくし、疑問に思うことは知らずにはいられない性質ですの」

 ヒルト嬢に止められて、落ち着きを取り戻したヘッダ嬢は、悪気ない笑顔を見せる。


 なるほどね、好きなこと興味のあることに一直線ってことは、ヘッダ嬢はいわゆるオタク気質な子なんだろうな。

 でもこうやってみると、内向きじゃなく外向きな性格っぽい? 人付き合いは無難にできるってところかな? 公爵令嬢なら当たり前か。

「ヒルトから、第一王子殿下とともに魔術の訓練をしていると聞いて、居てもたっても居られなくなってしまいましたの。ぜひわたくしにもご教授願いたいわ」

「いや、う~ん、魔術って言ってもね、僕らがやってるのは基礎みたいなもんなんだよ?」

 どっちかというとメインは、体力作りと武器使用の訓練なんだけどなぁ。

 魔術に関してなら、おそらく、ヘッダ嬢のほうが詳しいんじゃないか? だって公爵令嬢でしょう? 娘が知りたがることは親の公爵が手を回していそう。 魔術塔から魔術師をお迎えして習ってるんじゃないかな~?


「でも魔力巡りなんて、わたくし存じ上げませんでしたもの」

「あれは身体強化の下位互換だよ」

 おそらく身体強化の魔術が発見される前までのものだと思う。身体強化のほうが使い勝手がいいから、使われなくなった感じかな? あとたぶん魔力を全身に巡らせるって言うのは、面倒なんだと思うんだよ。

 魔力が少なくても使えるけど、習得するまでが面倒、そして持続させるのも面倒って感じ。

「魔術師なら知ってると思う。身体強化のほうが使い勝手がいいから使わないだけだと思うよ」

 フルフトバール軍は貴族よりも平民から人員を募っているから、魔力の少ない平民でも魔獣に対抗できるようにっていう対策、なのかな?

「知りたいというなら、基礎は教えるよ」

 自分の中にある魔力の感知や発動さえできるなら、そんな難しいものではないからね。難しいのは持続させることなんだよ。

「その代わり、僕のほうも頼みたいことがあるんだけど」

「あら? あら? まぁ、なんでございましょう?」

「魔道具を開発している魔術師に伝手はある?」

 魔術師って言うか魔術塔かな?

「ございましてよ?」

「なら紹介してほしいな。いろいろ聞きたいことあるから」

 この世界にどれだけの魔道具があるかはわからないけれど、もしなければ作ってもらえればいいし、それがあったら、フルフトバールの魔獣を狩ってる人たちには、とても便利なものになると思うんだよね。

 僕の言葉に、ヘッダ嬢が途端に目を輝かせる。

「第一王子殿下! どんな魔道具をご所望でして?!」

「アルベルトでいいよ。知りたいのは通信系の魔道具だよ」

 あの……ヘンゼル爺さんが、離れているおじい様に連絡を入れていた魔道具。あれはいわゆる据え置きタイプのものだったと思うんだよね。声だけの会話が可能なのか、それとも映像込みだったのかはわからないけれど、家電で言えば家電いえでんとかノートPCとかで、会話するやつ。

 僕が欲しいなぁって思うのは、スマホとまではいかなくていい、バイク乗りが使ってるインカム無線機。あぁいうのが欲しいんだよね。

「通信系の魔道具? それでしたら、マルコシアスでもお持ちではございませんこと?」

「あるよ。僕が知りたいのは、それの小型版はあるのかなってこと」

「小型……、つまり持ち運びができる通信魔道具のことでして?! どのような?!」

「どのようなものなのかな~? あるかどうかわからないから知りたいんだよ」

「小型のものはございません! どれぐらい縮小させたいんですの?!」

「ヘッダ様!!」

 またもやヒルト嬢に引きはがされる。

「本日は魔力巡りの件でご訪問したいとおっしゃったはずです」

「もぉ~、ヒルトは真面目過ぎてよ?」

「ヘッダ様!」

 この様子だと普段からヒルト嬢がヘッダ嬢に振り回されてるっぽいねぇ。


 ヒルト嬢とヘッダ嬢が楽し気に魔力巡りをランツェから指導されている中、僕はというとネーベルと一緒に、魔力巡りをしながらストレッチを行い、そのあとフェアヴァルターから僕が選んだ武器を、どうやって扱うのかという説明を受けていた。

 おじい様がいろんな長物武器を持ってきて、一通り手に取って振り回した結果、一番しっくり来たのがバルディッシュだった。

 どうも重心が前にある武器のほうが、僕の動きが安定するみたい。

「アルベルト様は、もしかしたら平均よりも握力や筋力があるのかもしれませんね。剣が合わなかったのは、きっと軽すぎたからかもしれません。クリーガーが使っているような大剣でしたらイケるかもしれませんが、重心のバランスを考えるとやはり長物、バルディッシュのほうがいいでしょう」

 でも今使っているバルディッシュは、仮のモノなので、そのうちフルフトバールの鍛冶師の作ってもらうことになる。

「今使っている得物は、基本の形のものですからね。これを基本の型にして、アルベルト様が使いやすいように、カスタマイズしたものをあたらしく作ります。たとえば柄の下の方にも重みが欲しいとか、刃の形や長さですね」

 それは、僕に合わせた、オーダーメイドってこと?

 えへ、顔がにやけてしまうぞ。





■△■△■△

面白かったら、フォロー・♡応援・★レビュー ぽちりしてください。

モチベ上がりますのでよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る