第3話 ずるいずるい! は、妹だけじゃなく弟でもやる
あの後、試しで、手軽に用意できる木剣を使って素振りをしたんだけど、フェアヴァルターの言うとおり、なんか合わない。
なんだろう、あの違和感。ちょっと説明しにくい感じ。
僕の素振りを見てくれていたフェアヴァルターや、ほかの庭師たちも、剣は合わないんじゃないかと言いたげで、僕自身あの何とも言えない違和感や扱いの感覚に、剣が合わないことには早々に気が付いた。
これは、おじい様と要相談ということになった。
双子から僕と一緒に護身術を学んでいるネーベルと、ストレッチをしながらその話をしたら。
「意外だ。アルは運動神経がいいほうだと思ってたから、結構なんでもうまくこなすと思ってた」
と、言われてしまった。
「単に俺の体力が少ないだけかもしれねーけど、あのお散歩コースは俺にはできんわ」
「あれはさぁ、やっぱり慣れよ? 僕も動けるようになるまで結構時間かかったし、青あざとか、打撲とかもいっぱいできたよ」
「そうかもしれないけどおおおおおっ、ギブギブ! それ以上は曲がらねぇ!」
背中を押していたらネーベルが悲鳴を上げる。
「ネーベル、魔力巡りちゃんとできてる? 量はそんな少ないほうじゃないよね?」
ネーベルも前の家では剣術は習っていたそうなので、体力は少ないほうじゃないけど、結構、身体は硬い。
「少なくはねーけど、アルみたいにいっぱいあるわけじゃねぇよ」
「僕、魔力量は平均並みだよ?」
たぶん、ネーベルと同じぐらいじゃないかな?
「え? はぁ? うっそだろ?」
「ほんとほんと、あのね、魔力巡りって量は関係ないんだ。だって自分の中にある魔力を体内に巡らせて循環させるものだから。巡らせる持続性は必要だけど、それは使い慣れていけば徐々に身についていくもんだし。量自体は少なくても全然問題ないの。そう言うのって、習わないの?」
「他の家はどうだか知らねーけど、元の家ではなかったわ」
ん~、ということは、まず身体作りと剣術を優先させたのかな?
「その割には体が硬いね?」
「いや、今までこんなのやったことねーよ?! 長距離走ったり腕立て伏せしたりとかはやってたけど!」
「なんでそれで、ストレッチはやらんのよ」
急に身体を動かすのは筋肉に負荷がかかるんだっけ? まず準備運動でストレッチして、それから体力作りの筋トレして、それで最後にもう一回ストレッチで身体をほぐすんだよね?
「ネーベル。ストレッチは朝起きた時と夜寝る前、毎日やろう? そのほうがいいよ」
日中、ここにきて身体を動かすから、計三回は必須になるんだけどね。あとで一人でもできるストレッチを教えてあげよう。
僕とネーベルが一緒にストレッチしている姿を見て、ヒルト嬢がうらやましそうに見ていたけど、そこはスルーさせていただいた。
まだまだ子供でも、さすがに女の子と柔軟するのはね? 代わりにランツェが一人でできるストレッチ教えるから、覚えていっておくれ。
今度宰相閣下に頼んで、ヒルト嬢が来るときは女性の騎士を派遣してもらおうかな?
そんな感じで、ネーベルとヒルト嬢が、僕のところにほぼ一日おきぐらいに来て、一緒に身体を動かしたり、ラーヴェ王国周辺諸国の共通語である、ディオラシ語を一緒に勉強したりしていたら、凸されました。
イグナーツくんに。
なんでぇ? ちょっと、どうしてそうなるのか、僕、わかんない。
だってイグナーツくん、君、いつも先ぶれ出してからくるでしょう? いきなり凸ってくるなんてこと、一度もしてこなかったじゃん。
庭というか少し開けた芝生の上で、ネーベルに魔力巡りのコツを指導していたら、建物のほうから僕らのほうに近づいてくるイグナーツくんと、それを引き留めようとしているうちの使用人。
「お待ちくださいっ、第二王子殿下!」
制止の声にも止まらず、イグナーツ君は僕らの傍に来て、僕と向かい合うようにして立っていたネーベルを突き飛ばした。
「ネベ!」
「うぉっ!」
とっさに手を伸ばしたものの、バランスを崩したネーベルは、背中からどしんと芝生の上に倒れてしまう。
「ネーベル!」
助け起こそうとすると、今度は後ろから拘束というか、イグナーツくんに抱きつかれて、なんだと思ったら、くそデカボイスで叫ばれた。
「俺の兄上なんだぞ!!」
ちょ、何を言いだしちゃってるんだよ、イグナーツくん。
「俺の兄上なのに、なんでお前たちばっかり一緒なんだ! ずるい! ずるい! 俺だって兄上と稽古したり勉強したいのに!!」
イグナーツくんはそう言った後、いつもの寡黙さはどこへやら、ギャン泣きしだす。
うえぇぇぇ……。どうすればいいんだよこれ。って言うか、イグナーツくん、なんか、思ったよりも、精神年齢低くないか? あれ? 今までちゃんとやれてたのにどうした?
どうやって収拾すりゃいいんだ。
途方に暮れる僕の横で、いつの間にか使用人たちが、テーブルと椅子とそれらを覆うパラソルを設置し、シルトは倒れこんだネーベルを起こして、どこか怪我がないかとボディチェックをしたあと、軽く手当てを済ませる。
ほかの使用人たちが、テーブルの上にクロスをかけ、ランツェがティーセットと茶菓子の載った荷台を押してやってくる。
お前ら準備良すぎじゃないか。
僕に抱き着いているイグナーツくんを引き離して椅子に座らせて、ネーベルにも一応被害を被ったわけだから同席してもらう。ヒルト嬢には、帰ってもらおうとしたら、ネーベルに気遣わしげな視線をむけながら、出来れば同席させてほしいと言われてしまった。
あ、はい、そーっすね。ごめんね、にぶにぶで。そりゃー、好きな相手のことなんだから、気になっちゃうよね?
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