第14話 有能人材ゲットだぜ!
ネーベルは庶子だってことだし、本人も言ってたから、家での扱いがかなり悪いんだろう。そうじゃなかったら、王族である僕にあんなこと言わんだろう? もう死なば諸共って、そこまで思わせるんだから相当だ。
だけど、逆に見ればネーベルはそこまでの覚悟が決まってるってことだね。
目的があって引き取ったなら、自分のところに利が入ってくるように扱えばいいのに、常日頃から粗雑に扱っているタイプは、上からの覚えがめでたくなれば、さらに図々しくなって高圧的に命令してくるんだよなぁ。自立の手段が手に入れば、そんな命令聞くかっつーの。
もったいないね。うん、実にもったいないよ。
「ネーベル、今の家から離れる心構えはある?」
「え?」
話についていけないのか、ネーベルは聞き返すような声を出す。
「今日、僕に気に入られなかったってことになったら、君の扱いってもっと悪くなるよね?」
「まぁな」
ふむ、そこはちゃんとわかってるんだ。
「今の家族に何か思い入れある?」
「ねぇな」
「家名を変える気は?」
「……ある」
ネーベルの返事に僕は楽しくなってにんまりと笑う。
「即決、良いね。今日、家に帰って僕のこと聞かれたら、相手にされなかったって言ってくれる?」
「わかった」
「明日、マルコシアス家の寄り子の家門から、君を養子にしたいって申し込みがあるから、それまでうまくやれるかな?」
「やる」
「うん、次に会えるのが楽しみだ」
側近候補ゲットだぜ! よろしくは、次に会った時だね。
あっさりと決まってしまった側近候補。あー、でもあともう数人、見繕わなきゃいけないのか? でもこればっかりは、僕の直感がモノを言うからな。
僕とネーベルの会話をひたすら黙って聞いていたヒルト嬢が、意を決したように声を出す。
「アルベルト殿下、本日は図々しくもお願いがございましてお声掛けいたしました」
「口調、崩して?」
「え、あ、いえ、そう簡単にはできません。わたくしたちヴュルテンベルクは、アルベルト殿下の恩情で、今ここに存在することができているのですから」
ヒルト嬢の家門、ヴュルテンベルク家は、例の愉快なお仲間の一人、あのチャラ側近、ゼルプスト・フース卿の本家だ。
ヒルト嬢はその本家のご令嬢である。
「……決めたのは、おじい様だからね。僕じゃないよ」
それに各家門のトップが話し合っての手打ち内容なんだから、そのことで僕が何か口を出したわけではない。
僕が言ったのは、あいつら愉快なお仲間たちの処遇だ。
『ぬるま湯につかりきってるみたいだから、熱湯にぶち込んであげれば?』
そう言っただけ。
聞いてたあいつらは顔を真っ青にしてたけど、もともとバレたら首切りの覚悟だったんだから、地獄を見るつらい目に遭っても文句はないっしょ?
それでも、ヴュルテンベルクの方々には恨まれてると思ったよ。族滅にはなってないけど家門のひとつを潰したのは事実だし、しかもその家門は国王陛下の覚えもめでたいところだったわけだからね。
しかし、ヒルト嬢は恨みつらみを僕に抱いてはいなかった。
「それでも、アルベルト殿下のお心ひとつだったと思います。殿下が許せないと一言おっしゃったなら、フルフトバール侯爵はそのように動かれたでしょう」
どうかなぁ? おじい様は坊主憎けりゃ袈裟まで憎いタイプじゃないから、王国滅亡させるのは本意じゃないと思うよ? あれの首は国王じゃなくなれば、いつでも取れるから、その時を待ってるんじゃないかな?
「ヴュルテンベルクは、いえ、わたくしは、アルベルト殿下に感謝しています」
「感謝かぁ。それをされるほど、僕は何もしてないけど」
「していただけました」
ん? う~ん、もしかして、もしかすると……。
「ゼルプスト・フース卿に恨みがあったのかな? ヴュルテンベルク家が? それともヒルト嬢個人?」
「両方です」
ファ~ッ! なに、あいつ、当時六歳の、しかも本家筋のお嬢様にまで恨み買ってたの? え~、何やってんだよあいつ~。知りたくなっちゃうじゃない。
「好奇心に負けそう」
「え?」
「いやいや、こっちの話」
「そうですか。あのそれで……」
「あ、頼みたいこと、あるんだっけ? 聞き入れられるかどうかは、話を聞かなきゃ何とも言えないけど」
言うだけはただだから言ってみ? この場にいるのは僕とヒルト嬢とネーベルくんだけだしね。他のお子様たちは気にはしてるけど近づいてこないし。
「アルベルト殿下は、将来的にマルコシアス家の当主になり、フルフトバール侯爵を継がれることでしょう。ですので、わたくしをアルベルト殿下の奥方になられる方の護衛騎士にしていただきたいのです」
そっち?! てっきりヒルト嬢が嫁候補として売り込みに来たのかと思ったんだけど?
「お前が奥方になるんじゃないのかよ」
ネーベル、ナイス突っ込み。
「はぁ?! 馬鹿かお前は。アルベルト殿下の奥方だぞ? 剣を振り回すことしかできないわたくし如きが、務まるとでも思っているのか?」
あー、そうだった。ヴュルテンベルクは王家の護衛騎士を多く輩出している一門だったわ。
ラーヴェ王国には女性騎士がいないこともないけど、数は少ないほうだ。なり手が少ないのは、まだまだ受け入れ口が狭いというのもあるし、女性が騎士なんてと言う保守的な考えも強いからだ。
「そこまで言うことねーだろ。剣の才があるんだから、そこは誇れよ」
おやまぁ、ネーベルはヒルト嬢のことをそのまま受け入れてるんだね。
そうだなぁ……。
「ヒルト嬢」
「はい」
「騎士と言うのにこだわりがあるの?」
「え……」
「マルコシアス家は、護衛騎士を必要としてないんだよね。これの意味は分かる?」
「そ、それは、はい」
マルコシアス家は建国からずっと、フルフトバール領に隣接している、不帰の樹海の管理者だ。あそこから湧き出てくる魔獣の討伐が一番の役目と言うことになってるけど、実際はもう少し違う。
護衛騎士と言う存在は、あるだけで抑止にもなるから、それを否定することはないけど、マルコシアス家にそれは必要ない。
ラーヴェ王国の暗部を統括してるのが、マルコシアス家のもう一つの役目だからだ。
「うちの訓練を受ける気は?」
「あります!!」
ネーベルといいヒルト嬢といい、即決しすぎじゃない? もう少し考えよ? 未来はまだまだ未定だよ?
誘った僕が言うことでもないか。
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