第8話 まったく、面倒なことをやらかしてくれたもんだよ

 最後の問題、国王陛下の愉快なお仲間である側近二人。

 エルンスト・ハント卿とゼルプスト・フース卿は国王陛下が幼少のころに側近候補として選ばれ、それから正式に側近になった方々だ。

 つまり何が言いたいかと言うとだね、そういった候補にあがる家門出身ということは、もとから王家と懇意である高位貴族の血縁者なのだ。

 ハント卿の実家が公爵位で、フース卿の本家が侯爵位、しかも名ばかりの爵位ではなく、しっかり王国に貢献している有力な家門なわけですよ。


 あいつらはどうでもいいけど、公爵と侯爵を族滅させると、国力的に弱体化するんですわなぁ。そんなの関係ない、一族郎党斬首斬首、処刑一択!! って言うのは易いけど、そう簡単にはいかねーんだわ。

 ラーヴェ王国の公爵家は二家、侯爵は四家。

 二家の公爵家の一つは先代国王陛下の姉君が降嫁した先で、そこはハント卿のご実家ではない。しかし、公爵家が一家だけになるのはよろしくないのだ。

 そしてフース卿の本家はいわゆる軍閥系と言うか、国軍の騎士や王族の近衛騎士を多く輩出している一門。


 あー、もうめんどくさい!! あいつらなんで国王陛下の尻馬に乗った?!

 あいつらは自分の首一つで済むと思っただろうけど、王位継承権の横やりが、そんなもんで済むわけねーだろうよ。もうちょっと頭働かせて?

 止めなかったのはあれだよね。立場的なものよりも、国王陛下の親友として応援したかったとかそう言う……、親友ならなおのこと止めろよぉ。

 話ズレた。


 国王陛下の愉快なお仲間たちがどうなろうと、マジでどうでもいいんだけど、それで国力を支えている二家門を潰したら、そこを他国に突かれて、ラーヴェ王国の切り崩しにかかる可能性も、無きにしも非ず。

 諸外国との現状は、和平協定が結ばれて友好関係を保っている。

 ラーヴェ王国は小国ではないけど大国でもなく、近隣諸国からの侵略の気配はないが、仲良くやってるから安心、なわけねーよ。そんな楽観視してたら、いつの間にか王国ぶんどられましたってことになりかねない。

 本来なら愉快なお仲間たちは族滅。全員首斬り。だけどそんなことしたら、国力弱体化。


 そこで家門トップの首脳会議が開催された。

 っていうか、ハント卿のご実家のご当主である兄君公爵と、フース卿の本家のご当主である侯爵が、処罰云々はともかく、とにかく、あいつらがマルコシアス家に喧嘩を売った詫びを入れさせてほしい。賠償金と言うのか慰謝料と言うのか、それを支払わせてほしいと、おじい様にアポを取ってきていたのだ。

 ちゃんとしたお家の方々じゃない。なんであんな馬鹿やった? 国王陛下と近すぎて、勘違いしたのか?


 それで、あいつらがやらかした賠償金なのか慰謝料なのかはわからないけど、それをマルコシアス家に支払うことで、族滅と言うのは無し。

 ただやらかした本人たちと、その家族(一親等)は絞首と言う話になった。

 これは建前の話で、絞首という刑が執行されたという態で、マルコシアス家の本拠地フルフトバール領で死ぬまで働いていただくということだ。ただし死んでいるので、名前も変えて平民として生きていくことになる。

 張本人たちも、死んだことにして名前変えて平民処遇というのは同じだけど、あいつらは家族とは別のやべー場所にいる。あいつら、まだ保ってるのかな? あそこは相当やべーって話だからなぁ。


 本当に刑を執行しないのは、温情とは違うけど、僕が王籍を離れることが出来る格好の理由を作ってくれた報酬のようなものってところかな?

 おじい様はもとより自分の跡継ぎとして、母上が産んだ子供、自分の孫に継がせたい。僕は、国王なんてやりたくない。平民になってでもいいから王籍抜けたい。

 最初から僕とおじい様にはその思惑があったのだ。

 そうしてあいつらは、僕らの都合がよくなる方向に事を起こしてくれていて、継承権放棄と王籍を抜ける口実を作ってくれた。


 何よりね、王宮の侍従や侍女もだけど、愉快なお仲間が僕にしたことって、物証が残るようなことではないのだ。あるのは人証のみ。

 口裏合わせてそんなことしてませんと言われたら、どうにもならない。まぁ全員素直にゲロってくれたので、刑罰の執行ができたんだけど。

 証拠はなくともされたことは事実だし、こちらも面子があるから、無罪放免にはしない。さすがにそこまで甘くねーわ。

 他から侮られて、マルコシアス家には何やっても許されるなんて思われるのは、そりゃぁ業腹だ。落とし前はつけさせてもらう。

 かと言って、奴らの首にどれほどの価値があるのか? おじい様は国王陛下の首ぐらいは欲しいかもしれないけど、おまけの首なんか、くその役にも立たないからいらない。 物言わぬおまけの首を貰うよりは、有効活用できそうな人力で奉仕してもらうほうが建設的だと、おじい様は考えたのだ。何より死んで終わりというのが、猛烈に腹立たしい。死ぬよりも、苦しんで絶望しながら生かすほうが、あいつらにとっては効果がある。

 そんなわけで、張本人とその伴侶、それから製造責任者の、最低人員の落とし前で、片をつけることにしたのだ。


 次は、王妃様のほうの情報で、王妃様に情報隠ぺいした王妃宮での話。

 まず王妃様に近いお付きの侍女、王妃宮を統括している侍従長と侍女長も併せて、王妃様の采配で全員解雇したとのこと。

 お付きの侍女の中には、王妃様の故国から一緒にくっついてきた侍女もいたが、故国に戻し、王妃様のご実家で監視しながら一から教育のし直しをしていくそうだ。


 王妃様は、僕の母上をともに国王陛下を支える同志だと思っていたし、自分のせいで側妃と言う立場にしてしまったことに、深い負い目を感じている。今回のことは、どれほど母上に謝罪しても、許されてはいけないことだと認識している。そして王妃宮の全員に対しては誠に遺憾に思うと通達した。

 今後、少しでも、王城に残された第一王子に害意や賊心があるのなら、王妃宮から他の宮に移るように手配する。しかし他の宮に移ったとしても、第一王子への態度を改めなければ、どこの宮でも受け入れはしてもらえないし、解雇という形になることを心しておくようにと告げたそうだ。

 そこからどれだけの使用人がいなくなったのか、そこまで僕は聞かなかった。聞いてもどうしようもないし知りたくもないしね。


 あと、王妃様が自分や第二王子に、側妃や第一王子の予算を横流しされていたことを気づけなかったのは、例の財務大臣が、王妃様や第二王子の私用予算に、直接全額を振り分けていたのではなく、例えば王妃宮や第二王子のいる王子宮の維持費、王妃様主催のお茶会や夜会の費用、第二王子の外遊の費用に回していたからだった。

 それで、年度末あたりに、王妃様や第二王子の私費のほうに少しずつ増やして、その増えた理由は、前年度に比べて外交等が増えたので、ドレスやアクセサリーも新調する必要があると言う報告をされていたそうだ。

 そういうところは頭回るんだな。

 だったら横流ししたらどうなるか、考えついてもいいものを……。過ぎたことを言っても仕方がないか。





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