第7話 お茶会と言うよりも、情報共有会のようなもの
ってことが四年前にあったわけだ。
それからちょくちょくと言うか頻繁に、王妃様のお茶会に呼ばれるようになってしまった。
一回はね、義理と、僕は王籍抜けるけど、王妃様と第一王子の間には、軋轢はないよというパフォーマンスも必要だろうなと思ったので、受けたんだよね。
そんなの無視すればいいじゃんって思うかもしれないけど、余計な勘繰りを避けるためには必要なんだよこういうの。
やっぱり王位諦めてないんだろうって疑われないためにね。
一応、上層部……国議に出席する貴族には、僕の継承権放棄と王籍抜けのことは報告したらしい。当然議会では紛糾したけど、そこは宰相閣下の腕の見せ所で、会議参加者の全員から承認を得ている。
だから、国政に携わっている上層貴族の一部は、僕の件は知っている。
そこで、僕と王妃様が不仲であると思われるような様子をみせたら、勘ぐったりするよねぇ? 特に第二王子にくっついてる貴族とかには。
だけど、こう言うお誘いは、一回受けちゃうと、また来るんだよなぁ。
しかもさ、月一とか多いときは月二、微妙に断りづらい間隔。唯一の救いは非公式のお茶会ってことと、出席者は僕と王妃様と宰相閣下だけってことかな。
初回は王妃様と二人だけだったけど、二回目以降からは、必ず宰相閣下が同席することになったんだよね。
っていうか、王妃様、最初のお茶会の時に、失敗ではないけど、言っちゃうと障りが出てくることをポロリしちゃったのだ。
何をポロリしたかと言うと、本当に王籍を抜けるのか? とか、もしよかったら自分が代母になって後見するから、継承権放棄は考え直さないか、とか。
お茶会自体は非公式のものだし、王妃様の発言は外に漏れることはなかったけど、報告はしたよね。うちの双子が宰相閣下とおじい様に。
もちろん、王妃様は宰相閣下からおやめくださいときつく上申され、おじい様からは王妃様と二人だけのお茶会禁止令が出された。
宰相閣下、今までのことがあって、僕に関しては、過敏になっちゃってるんだよね。
誓約書は作っちゃったから、僕が国王になるのも王族のままでいることも、心情は諦めきれないけど、もう無理であることは理解してる。
今まで僕に干渉しなかったから、あんなことになってしまったし、させてしまったという後悔もある。王位にはつかないし王籍からも離れるけど、僕とは友好な状態を保っておきたい。同じ轍は踏まないという宰相閣下の決意の表れだ。
王妃様はある意味宰相閣下と同じく、規律を重んじ公平な考えの持ち主だから、正しき継承権の持ち主が王になるべきだと、暴走しかけたのだろう。
うちの双子の調べでは、王妃様は、自分の子だから第二王子が王になるべきだとは考えておらず、第二子のわが子は王を支える臣下としてあるべきと考え、第二王子殿下には、王妃の子だからと驕るな慢心するな、第二王子であるその身は、いずれ王となる第一王子殿下の礎たれと、常からそのように言い聞かせていたらしい。
だからこその、あの発言だった。
まぁそれがおじい様と宰相閣下の耳に入って、次回からは二人だけのお茶会禁止令が発動されたんだけどね。
宰相閣下も忙しいだろうし、その手を煩わせるのも悪いから、お茶会自体をお断りしようとしたんだ。そうしたら、宰相閣下が『どのみち殿下の様子見は必要でございますので、王妃殿下のお誘いはお受けください』と言われてしまったのだ。
王妃様のミスはひとえに情報共有がちゃんとされていないことだ。
どうやら王妃様は、僕の継承権の放棄と王籍離脱は、おじい様が国王陛下と宰相閣下に言い出して、決まった内容だと思っていたらしく、誓約書のことは知らなかった。王妃様は内向きのことがメインと言えども、継承権が絡んでいる話である。王妃様にも当然知らせなければいけないというのに、国王陛下は話していなかった。
それを知ってから、誰が言い出したわけでもないのだが、王妃様との非公式のお茶会は、僕と王妃様と宰相閣下の情報共有会になったのである。
情報共有の場……、どんな情報の共有か。
まぁ色々だけど、まずは国王陛下に忖度していた人たちの処分がどうなったのか。
これはおじい様からも聞かされていたから、僕は知ってるんだけど、王妃様は王宮の使用人たちのやらかしも、周囲の使用人たちから情報遮断されていたから知らんからね。
まず、王宮の侍従長と侍女長は降格。一番下の部署に異動配置。あと減給処分。
彼らは僕に対して身体を傷つけることはなかったし、言葉の刃で蔑むことも、無礼な態度をとって僕を貶めたのでもない。僕を褒めそやしたことは、首を斬るほどの罪罰だったのか? では王族を褒め称えることは罪になるのか? ということだ。
彼らの罪は、やるべきことをしなかったことだ。
これで斬首と言うのはやり過ぎである。
ついでに王宮使用人全体の再教育が決行された。
次に宮中大臣。大臣職を罷免し、他部署である書庫管理部署の下位文官に異動配置。宮廷貴族であるので降爵。あとやっぱり減給処分に、そこから母上と僕に慰謝料を支払うことが決まった。
この処分は、彼は国王陛下に何度か僕らのことを進言していた温情もある。それに何よりも国王陛下の態度も問題だ。不愉快そうな表情で『いいようにしろ』なんて、どうとでも取れてしまう。一大臣と言えども、王の不興を買ってしまったらという不安で、もうそれ以上言えなかったとの自白もあった。
とはいえ、こういうことは宰相閣下に相談しなければいけなかったのに、なぜそれをしなかったのか?
まず国王陛下の指示に側近連中が何も言わなかったことに、もしや宰相閣下も同じお考えなのでは? と疑心暗鬼にとらわれたそうで。だからと言っても放置は許されることではない。
それから財務大臣。やったことは横領ではなく、側妃と第一王子の予算の横流し。しかも独断。いくら忖度だから~と言ってもこれはねぇ?
ただ側妃と第一王子の予算を着服したのではないのが、ネックなのだ。横領してその金で贅沢な生活をしていたわけでもないのに、一族郎党にまでその罪を被せるのはどうなのかという話になった。でもここで財務大臣だけの処罰だと、残された彼の家族からの逆恨みが懸念される。
やっちまった財務大臣と一族郎党は、爵位を剥奪した上で鉱山での終身労働が決まった。横流しした予算とマルコシアス家への賠償金をそれで支払えということだ。
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コメントでお茶会の件を言われてる方がおりますが、王妃様が王子様の宮を訪れたのは、謝罪のためであって、『お茶会』をしたわけではありません。
『お茶会』は王妃宮に呼ばれて、非公式ですが初めて行われました。
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