第4話 実は王妃様とお茶会していました

 今回のお茶会は、あくまで母上の再婚の周知だから、僕の側近候補の選抜は絶対というわけではないとおじい様は言った。

 僕の勘にピピッと来ないのであれば、無理に仲良くなる必要はないとのことだ。

 その辺は有り難い。

 で、茶会、お茶会かぁ……。

 実のところ、まったくしたことがない、ってわけでもないのだ。

 非公式な感じだけどね。


 お相手は、王妃様。


 そう来ちゃったんだよなぁ~、国王陛下のロマンスのお相手。国王陛下の泣き所。最愛の奥方。

 まぁなんだ、とにかく国王陛下の運命の相手で、真実の愛(笑)で結ばれた人。


 四年前、母上が宿下がりをして、僕が成人したら立太子するのではなく、王位継承権を放棄して、王籍からも抜けて、マルコシアス家とフルフトバール侯爵を継承する話をどこからともなく耳にした王妃様が、僕に会いに来たわけだ。

 宰相閣下と一緒に。

 さすがに王妃様一人(一人と言っても、当然お付きの侍女とか、女官とか、その他ぞろぞろ引っ付けてきたけど)で、第一王子と面会というのは許されなかった。

 これは王妃様の立場と僕の立場、どちらを優先してなのかは不明だ。でも王宮ではいろいろ決まりごとがある。特に王妃様が自分の子ではなく、側妃の子供に会うとなれば、いろいろ懸念することもあるじゃないか。

 あと、宰相閣下はおじい様の怒髪天を衝くことを一番警戒したのだろう。

 なんせ王族の筆頭たる国王陛下がやらかしてるのだ。国王陛下と王妃様を一緒にするのは失礼なことだろうけれど、あれの奥方であることにはかわらないので。


 それで、僕、それまで王妃様と顔を合わせたことって、一度もなかったんだよね。

 王族が出席する式典やお茶会って、年齢制限があるんだよ。それから、あれって社交のデビューっていうの? そういうのを済ませていて、表に出ても問題ないマナーができていることが、出席の最低限の条件。そういったものが全部クリアーできてようやく出席できる。


 僕はずっと捨て置かれて、たまに王城内をふらふらする以外は、殆ど側妃宮に引きこもり状態だから、社交デビューもしてなかった。最低限のマナーは乳母や双子たちから教わっていたけど、それでも出席はしなかったんだよね。

 まず母上は国王陛下のことでいっぱいだったから、僕に関するもろもろの手配を疎かにしてしまったし、国王陛下は言わずもがな、思惑があるから僕を放置で、もとより手配する気もない。

 こんなのだから、僕は国王陛下に何もしてもらってないと思うし、父親とも思えないわけだよ。


 そんな事情だったので、社交デビューをしていなかった僕は、必然的に式典やら公式の催し物などに参加できる条件を満たしておらず、王妃様と顔を合わせる機会がなかった。

 母上は何度かあったと思う。

 でも、基本的に二人が一緒にならないようにされていて、国王陛下と王妃様それから母上が揃うのは、ラーヴェ王国に訪問した近隣国の王族を迎え入れた時ぐらい。

 で、そういう時は常に周囲が目を光らせて、王妃様と側妃が会話をしないようにしていたそうだ。

 母上は側妃として召し上げられた当初、王妃様のもとにご挨拶に伺おうとしたらしい。だけど、お断りの連絡が来て、しかもその日のうちに国王陛下が、王妃様との交流はしなくていいって、言いに来たんだって。

 国王陛下がそう言ってきたのは、ロマンスで結ばれた最愛の妃に、仕方なく迎え入れた側妃が嫉妬して、危害を加えるかもしれないって警戒したからだ。

 元婚約者だし、婚約時代は自分に好意を向けてきた相手だし、自分に愛されている王妃様に嫉妬するだろうってね。


 これは後でわかったことなんだけど、王妃様の周囲は、結局のところ国王陛下と王妃様のラブロマンス推しの方々ばかりで、やっぱりいろいろ忖度があったらしいよ。

 あと、純粋に国王陛下を慕っていたり、王妃様至上主義だったりで、そういう人たちは、理由があって側妃になったと言っても、心情的には、母上のことを国王陛下と王妃様の仲を引き裂く邪魔者、仮想敵だと認定していたんだよね。

 そう思ってるから、母上を排除したい、王妃様に近づけたくない。


 確かに母上は、国王陛下にぞっこんラブだった。でも母上は婚約時代、王妃教育受けていたから、子が出来なければ、国王陛下に側妃を召し上げることになるって言うのも、理解していたし分別もついていた。自分がその側妃の立場になるとは思わなかったんだろうけど。

 僕が言いたいのは、国王陛下が、母上を王妃様同様に自分の奥さんっていう認識で、そういう扱いをしていたなら、母上は王妃様に嫉妬なんかしなかったし、ヒスって暴れたりもしなかったんだよ。

 王妃様の陣営も、母上に対して敵愾心持つんじゃなくって、王妃様と同じく国王陛下を支える奥方っていう認識でいたなら、こうもぐちゃぐちゃドロドロ状態にならなかったと思うわけ。


 ともかくそんな感じで、こちらとは一切かかわっていなかった王妃様が、母上が宿下がりをしてから一週間ぐらい経った後、宰相閣下と一緒に僕のいる元後宮というか側妃宮……今は僕の宮(王子宮になるのではなく、シュトゥルムヴィント宮って名称に変更したんだって)に来訪してきた。

 一応、先ぶれはありました。母上が宮を出て行ってから、三日後だったかな?

 うちの双子はそういったものを握りつぶすことはせず、ちゃんと僕のところに持ってきて、お返事を差し上げてくださいと教えてくれたからね。


 王妃様の来訪目的は、間違いなく僕だった。母上に用があるならマルコシアス家のほうに連絡入れる。

 ただ、今まで全く接点なかった人が、なんの用で? って疑問には思ったよ。僕には、王妃様が会いに来る心当たりがないし。

 何よりも国王陛下だよ。王妃様がこっちと接触するのを嫌がってただろ? あとでごちゃごちゃ文句垂れてきそうじゃないか? そう思ったんで、国王陛下の許可をとってから再度ご連絡くださいと返事。

 そうしたらその翌日に、陛下からの許可はとったのでお伺いしますと、また返ってきたわけよ。

 許可、とれちゃったらさぁ、会うしかないじゃない? ここでお断り出したら、それはそれで、文句言いそうなんだもん。誰がとは言わないけど。





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