第7話 継承権放棄します。ついでに王族もやめます。
よかったねぇ国王陛下。僕を歪ませる画策してたのは自分たちだと、泥を被ってくれる忠義に厚い側近がいて。
「なるほど、王室典範で定められた王位継承の制度を無視して、私情で王位継承権第一位の僕を排除しようとしたんですね。国王陛下は側近の謀反をどうするおつもりですか」
実際の首謀者は国王陛下でも、側近が、自分がやりましたと名乗り出てしまったのだから、主犯は国王陛下の側近だ。
そして、やらかしたことの重大性を考えれば、謹慎で済ませられないっていうのに、ここにきて寝ぼけたことを言い出したのは国王陛下だった。
「謀反などと……。そんな大げさなことではないだろう」
そりゃぁ、国王であるおめーはそうだろうけど、やったのは、おめーじゃなくってそこの臣下ってことになってんだから、立派な謀反になるんだよ。
考えが、至らないというか、これは……。
「覚悟が足りていない」
んだろうな。きっと。
僕の言葉にどういうことかと、宰相閣下が無言で圧をかけてくる。
「リューゲン殿下、そのお言葉の意味は?」
「そのままですよ。国王陛下は、自分の臣下のしでかした罪が、王族を害したものだという認識ではいらっしゃらない。臣下が重罪を犯したと受け止める覚悟が足りていない」
本当は、僕が自分と同じ王族として取り扱われてることをすっぽ抜けているから、それが表沙汰になったときに、身代わりが重罪を起こしたことになる覚悟が出来ていない、になるんだけど。
「はぁ?!」
そしてガチギレしたのはやっぱり宰相閣下である。
「陛下、事の重大性、ご理解しておりますか? 貴方、ご自分が一国の王であるご自覚は? 貴方のお子が、王位継承権第一位の殿下が、次代の国王陛下が、害されたのですよ? 害した相手が貴方の仲の良い親友だからと言って、なかったことに出来るとお思いですか? 貴方が許しても私どもは許しませんよ? ハント卿もフース卿も極刑に処される行いをしたとご理解してますか? 斬首一択ですよ」
宰相閣下の発言に、ようやく国王陛下の表情が崩れ、チャラ側近のほうも顔が青くなった。
こんな回りくどい手を使わずに、母上ともども僕をズシャァすれば、疑惑は持たれても、いろいろと楽だったんじゃね?
その手を使わなかったのは、よっぽどの甘ちゃんなのか、それとも自分の手を汚すのが嫌だったのか。いや実行犯はそう言う王家の汚れ仕事をしてる誰かだし。
そのほかに考えられるとしたら、指示したのが自分だって言う証拠が残るのが嫌なのか。
回りくどい方法をとったのは、自分の国王としての経歴に傷をつけたくなかったからかな? 知らんけど。
「とりあえず、王宮内での僕の扱いが、そちらの愉快なお仲間たちの忖度であったことは理解出来ました。で、国王陛下。貴方はその忖度のことはお気づきになっていなかったんですか?」
気づかないなんてありえない。たぶん宰相閣下もこの話には裏がある、主犯は側近では無く国王陛下なんじゃないかって、思うはず。
そして僕の質問に答えない国王陛下。
「なるほど。それも知りませんでした、と。国王陛下のお考えはよくわかりました。では、本日をもって、僕はリューゲンの名前とア゠イゲルを返上します。宰相閣下、王位継承権を放棄しますので、王籍から僕の名前を抜くように手配をしてください」
「リューゲン殿下!! 何をおっしゃるのですか!!」
自分の声の大きさに気が付いたのか、宰相閣下は咳ばらいをして続ける。
「リューゲン殿下、貴方には王族としての義務がございます」
「空々しいことは言わないで貰おうか」
今までずっと黙っていたおじい様が、低く唸るような声音で吐き出した。
「王族の義務だと? ではその王族を管理している王宮は、わが娘である側妃と第一王子殿下に何をしてくれたのだ? 言っておくが、側妃と殿下にかかった費用は、すべて我がマルコシアス家が出している。王宮からは小銅貨一枚も頂いてはいない。相応の待遇もせず、義務だけを押し付けるつもりか?」
それを持ち出されたら、さすがに何も言えないでしょう。って思ったら宰相閣下は、それさえも初耳だったようだ。
「側妃様とリューゲン殿下に費用が支給されていない? そんな馬鹿な……」
「財務大臣を呼んで、気がすむまで調べればいい。出てくるのは王宮側の腐敗した埃だらけだろうがな」
側妃の扱いも僕の扱いも、ちゃんと王室典範に沿った扱いをしてれば、こんなことにならなかったのにね。
この様子では、国王陛下はちょっとつつけば、あっさりこっちの要求を呑む気がするけれど、問題は頭カチコチの宰相閣下だよなぁ。
いや、宰相閣下の立場や言い分が、わからないわけではないんだよ。
っていうかね、国王陛下が私情にかられず、王室典範に記載されている王位継承権を諾として、僕の待遇をちゃんとしていればこんなことにならなかったわけで、宰相閣下は第一王子の僕を次期国王としてみているから、おじい様の言い分を通すわけにはいかない。
でもこの部屋にいる人間で、僕が国王になることを望んでいるのは、宰相閣下以外誰もいないんだよね。
「宰相閣下。貴方の懸念、ご心配事は、後の王位継承者への不安ですか?」
僕の問いかけに宰相閣下は視線を向けてくる。
「確かに王室典範で定められている王位継承権第一位は第一子と定められていますが、過去国王となった王族の中では、第一子でなかったものもいるはずです」
「それとこれとは話が違います。リューゲン殿下がご存命で瑕疵がないにも関わらず、王位につけないことが問題なのです」
「本人が継承権の放棄を望んでいます」
「……六歳児の言動を真に受ける大人はいません」
くっそぉ、手ごわいなぁ。宰相閣下さんよぉ。
それでもって、宰相閣下の言ってることは、確かにその通りなんだよね。
普通、六歳の子供が王様にならないもーんと言ったとしても、五年後・十年後にそんなことを言った覚えはないと、当時のことを忘れているのが大半だ。
六歳児の発言には、信憑性がない。
今の僕は前世の記憶があって、精神年齢が六歳児ではなく成人男性と同じ。
王様にならない発言を撤回するつもりもないし、これから国王ではない道を進むためにあれこれ動くつもりでいるんだけど、そんなのは宰相閣下の知るところではない。
「では誓約書、作りましょう」
なのでもう一手、僕が王家と縁を切るための札を出した。
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