第三章 十八節
堀に居た特別部隊に、援軍が到着しこの決戦の勝敗は決した。
全面降伏を受け王都の門は、内側から開けられ連合軍の主力は入城した。
「はぁ!?何でアンタが此処に居るのよ、サラ!!」
王の居城に入るな否や、キュネが付いて来ていたサラを見て声を上げる。
「アハハ、何でって……」
説明に困った様にサラは、両手の指を合わせる。
それを聞いてアルフレッドが口を開いた。
「俺が説明する……事の始まりは、パラディア城と言う城から始まった。
ロレインから聞いているだろうが、サラには不思議な力がある。それを奪い返す為にグラ
ンデルニアは色々として来た訳だ。その因縁が絶たれようって時にサラが居なかったらおかしいだろ」
捕縛されたグランデルニア王の部屋に向かう中、アルフレッドは説明する。
「そ、そういう事……」
何故か、サラはアルフレッドと距離を取っている。
それをキュネは不思議に思っていた。
「どうした?お前達何かあったのか?」
とりあえずサラに聞いてみるキュネ。
「べ、別にこれと言った事は無いんだけど」
「無いんだけど?」
「ひ、久しぶりなんだよ。アルフレッドとはそんな会って無くて……それに別人みたいだし、
何だか怖いんだよ……」
「マジ、か……」
(そうだった、白冥騎士団団長になってからアルフレッドは、サラをミケア州のとある城に置いて外から守っていたんだった。けれどまさか顔を出していなかったとは……)
「それは無いんじゃないの?閣下」
キュネは前を歩くアルフレッドに、皮肉を言う。
すると一瞬だが、アルフレッドがキュネ達を睨みつけた。
「……」
「こっわ……」
「や、やめてよ。キュネ」
「えっ、そこ私!?」
その目の下は、深いくまが出来ている。
優しかったアルフレッドが、ここまで来るのにどれだけ辛い思いをしたのかが、それを物語っている。
アルフレッドが足を止める。その先には、グランデルニア王が居る王の間だ。
「行くぞ……」
見張りの兵士が扉を開ける。
王の間は、荒れていた。
床には、ガラスの破片が散らかっており、拭き取られてはいるが血の跡が残っている所もある。
「来たか……」
その部屋に、鎖で身動きが出来なくなっているグランデルニア王が待っていた。
警備は厳重、もう逃げも隠れも出来ない。
「やっと会えたな……」
グランデルニア王の目の前にアルフレッドが立つ。
「ふむ、貴様とは初対面だと思うが?」
「俺の名はアルフレッド、お前が殺したロレインの思いを受け継ぐ者だ」
アルフレッドの名乗りを聞いて、グランデルニア王の顔から笑みが消える。
「そうか、奴の……」
「聞かせろ、サラの力の話を。何故彼女を使い戦争を起こした?」
グランデルニア王は、少しの間の後話始めた。
「……人は神に捨てられる程、価値が無いのか?確かめたかったのだ」
「何を言っている?ここに来て世迷言を」
「事実だ。今から千年近く前、神は使いの者達とこの世を去った。人を見捨てたのだ。余はそれが許せなかった。自身の創った生命を最後まで見届けないとは、無責任にも程がある。余は、余に仕える者達と共に反抗した。しかし、神に敵う訳も無く今ここに居る」
「嘘か真かなどこの際どうでもいい、それとサラが何の関係がある」
「サラは、その神が残した最後の遺物なのだ」
後ろにいるサラが、身をビクリと震わせる。
「私が遺物……」
アルフレッドは、顎に手をやり思考する。
(サラの超常的な力は、神が遺した物だとするなら確かに納得できる。)
「だが、そうなればサラは千年モノ間生きている事になる。それはどう説明する」
「彼女はある程度成長すると、一人で受胎する。全く瓜二つの子を産むのだ。
それは死しても成される。体のどの部位からでも産み落とされる。灰になろうともな」
「うっ……」
サラは、その話を聞いて口元を押さえた。
「大丈夫!?」
「う、うん……」
キュネがサラの背中を優しくさする。
「……神は人を捨てたと言ったな何故だ、そしてその神は何処に行った?」
アルフレッドは、グランデルニア王との話を続ける。
「人に可能性が無かったからだ。そして神が何処に行ったかは、分からんよ」
「人の可能性だと?」
「そう、人の進化の可能性だ。神は人に何かを求めていた。全知全能と思われた神がだ。それが何だったのかは分からないが、いつまでも争いをやめぬ人にあきれ果てたのだろう」
「それでもお前は人に可能性を感じていた」
「!?」
グランデルニア王が顔を上げる。
「だから、サラを使い戦争を起こした」
「……」
アルフレッドの言葉にグランデルニア王は、無言で頷く。
「それで、答えは……」
「まだ、分からぬ」
真剣に悩むようにグランデルニア王は、口にした。
「ハァ!?これまで散々大国動かして来て出た答えが、分かりませんだぁ!?」
キュネが呆れたように罵倒する。
「何とでも言うがいい、しかしお主達も道半ばであろう」
含みのあるグランデルニア王の言葉に、アルフレッドが返す。
「……知っていたのか」
「かつて一つであった世界が分裂し、多くの国が出来、繫栄していった。
だが、それは間違いだったと言うかの様に、お前達は大国を潰して周っている。
答えはお前にある」
「答えが……俺に?」
「お前は、世界を滅ぼして何を望む」
グランデルニア王の問いに、アルフレッドが首を横に振る。
「違うな、俺は正しいと思ったから世界を滅ぼすんだ。今の世界は間違えている。
だから人が人を殺し合っている。それを正す為に今ある世界を壊すんだ。その先は、次の人に任せるよ」
後書き
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