第三章 十六節

リディの軍がグランデルニア五千の兵を誘い出し、とある農村にて討った事が確認される。


これを聞いたアルフレッドは、次に大きく出る事にする。




平野が続く地に四万の軍を置いていたアルフレッドは、これに号令をかけた。


将を務めるのは、キュネ、エリック、ガトー、そして特別部隊のアンネだ。




平野からグランデルニア王都を狙うレグネッセス軍を迎撃するべく、グランデルニア軍も二万近くの兵を城から出した。布陣したのはアフマ教の神殿、集結した兵は皆これに祈りを捧げた。




「どうか、我々の国を御救い下され」




「どうか、どうか……」




翌日、平野に布陣するレグネッセス軍にグランデルニア軍が迎撃にでた。


しかし、二万とは言え寄せ集めの兵士達。次々と敵の首が挙げられていった。




「アンネの奇襲策は、必要無かったな」




討ち取った敵の首を置いて、エレックはアンネに呟く。


神聖な神殿が血に染まった事に、アンネは悲しみながら答えた。




「要人に越したことはありません。願わくば、敵方も降伏してくれたら……」




まさに玉砕戦法といえるグランデルニア軍、今まで世界の大国を引っ張ってきた姿は見る影も無かった。そして勝敗の天秤はレグネッセスに優勢に傾いていく。




絶望的かと思われたグランデルニア軍には、一つの希望があった。


それは、グランデルニア王都を守る城の南壁の大地にある。そこは大地が広がっており、少し盛り上がっていた。これを越えねばレグネッセス軍は、王都に辿り着けない。




ここに戦力を展開していたグランデルニア軍は、裏を返せば本当の意味で最終防衛地と言える。




東部で、アフマ教の神殿を攻略した軍とアルフレッド率いる本陣が合流した。


しかし、ここでアルフレッドが今まで挙げて来た敵将の首その親族の無惨な死体を送り付け、グランデルニアへ投降を命じるのだった。




「何!?アルフレッド様が投降を促しただと?」




「どうやら、アイツにも人の情が残って居た様だ」




味方の将は、表面的にしかこの降伏勧告を知らず。


ルートやペアレスは、アルフレッドに自分の思いが届いたと安堵した。


しかし、




「セロ将軍!!こんな無惨な……」




「ゆ、許せん!!敵将アルフレッド!!只では殺さぬぞ!!」




グランデルニアの兵達は、この所業に怒り震えたった。


降伏など誰がするものかと




アルフレッドの狙いは、その降伏をグランデルニアが跳ねのけ立ち向かってくる事にあった。アルフレッドの考えは既に戦争のその先を見据えており、この後のグランデルニアの戦力を、降伏をしなかった氾濫分子として鎮圧する。という大義名分を理由に切り殺す事しかない。




その凄惨な死体から降伏する心配があったが、帰って来た知らせにアルフレッドは笑みを浮かべた。




戦争が再開されると同時、これまで体力を温存していた白竜軍が打って出る。


白竜軍は戦争経験の浅い者が多く、現在優勢な状況化で武功を挙げようと躍起になっていた。




しかし、考えなしには上手くいかない。




自然の堀になっていた地で、高所を利用したグランデルニアの戦術はレグネッセス軍の進撃を止める事に成功した。




この時、ルートが落とされた城からグランデルニアに援軍が到着した。


援軍を指揮した男の名はウォーレン、まだ世に出ていない名だったが、ドアキア超大国の進行を幾度となく止めて来た強者だった。




「かなりマズい状況だな、先ずはあの堀から切り崩す!!」




「御意!!」




ウォーレンの力は、戦争経験の浅い新兵には厳しいモノだった。


彼の肌には、おびただしい程の古傷が見える。それが語る物はくぐり抜けて来た修羅場の数。




彼の持つ戦斧は一撃必殺。何で防御しようと、砕かれ気が付いた時はあの世だ。


それに続く兵も、腕利きぞろいと来た。




彼の出現でレグネッセス軍の指揮官たちは、並々ならぬ気配を感じ取りつつある。




まず初め、白竜軍の攻める堀にて先行しつつあった白竜兵がウォーレンの餌食になった。


前に出過ぎていた隊の横腹を狙われたのだ。




ウォーレンは腕を止めなかった。これに続き、下に張っていた隊にも攻撃を加え、


堀を攻めていた隊は壊滅させ、これに怯んだ白竜軍に大きく損害を出した。




「誰だか知らぬが、これを期に一気に攻めるぞ!!」




「おおう!!」




白竜軍に猛威を振るう謎の騎士の出現は、劣勢にあったグランデルニア軍の息を吹き返す。


これを芳しく思わない者がいた。アルフレッドだ。




「随分と白竜軍は、落ちた物だ。かつて多くの将を輩出した名門が、今ではこの体たらく。


 まぁ、まだペアレスよりはマシだがな……」




勝負を確信し、指揮を白竜に任せていたアルフレッドは再び動き出す。


特別部隊のアンネを本陣に呼び出し、策を伝えた。








湿地帯から霧が立ち込めて来る。


その濃い霧は、平原地帯を覆いかぶさりアルフレッドのいる本陣と堀に、見えない壁を作り出した。これに乗じて、ウォーレンはレグネッセス軍に奇襲をかけようとしていた。




「運が我等に味方している。このまま行けば」




「この調子!!この調子!!」




この時、霧に紛れて進行していたのはウォーレンだけでは無かった。


運よくすれ違う形となったが、アンネ達別動隊も堀に向けて進んでいたのだった。




「この作戦で、レグネッセス軍に勝利をもたらしますよ」





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本日もう一話連続投稿します。

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