第二章 十三節
白虎騎士団に入団し、ロレインは初陣を飾った。
他の騎士達がうろたえる中、ロレインは慣れた手つきで敵を殺しまわった。
帰還の最中、敵城から連れ帰る奴隷の中に綺麗な女がいた。
「なぁ、オッサン。何で上物がその中にいるんだ?」
本来綺麗な女は初めの内に上の者達が奪い合い、帰還するときには良い女はいなくなっている。
「誰がオッサンだ!!ソイツは病気持ち、何でも不治の病だってよ。普通にしてりゃ、うつらねーが…まぁアレだ、ヤッタらうつる。キスしてもうつる。気を付けろ」
性病か、俺と同い年位の若い奴なのに……なのに?なんだ?
幼い頃、両親から受けた暴力が鮮明に思い返される。
「おい、大丈夫か。酷い面してるぞ」
オッサンがロレインを心配して顔色を見る。
「フッ、アンタほどじゃねーだろ」
「んだと、クソガキが!!心配して損したぜ」
オッサンは怒って先に行ってしまった。
ロレインは、自分の中の感情が何なのか興味が出た。
この感情を持った原因に近づく
「おい女、お前名前は?」
「ん?…」
長い金髪で前髪を顔の真ん中で分けた彼女は、俯いた顔を上げた。
綺麗な青空を思わせる瞳に対象の赤い瞳が見つめ合った。
酷く心配されたがロレインは彼女を買った。
彼女の名はステラ、星と言う意味らしい。
騎士見習い時代、コツコツと宮廷の物を売って溜めた金でロレインは土地と家を買っていた。初陣から帰還し、ステラをエン爺に診てもらう。
「で、どうなんだ?エン爺」
「残念ながら、ステラさんは不治の病にかかっています。一見症状が無い様に見えますが、見えない所に出ています」
診察を終えたエン爺は、湯で手を洗う。
「ふーん、長くないのか?」
「話を聞く限り、彼女はうつされた様です。数年前、たちの悪い輩に…現在症状は倦怠感や食欲不振、時々手足が痺れると……もって一年かと」
「そっか、伝えたのか?それ」
「気づいている様でしたが、一応」
「フッ」
服を整えたステラが、ロレイン達がいるリビングに入って来た。
本当に外見は普通の人間と変わらない。
「女、お前どうすんだ?これから」
ロレインは直球に質問する。
「……どうもしないわ、それに今私は貴方のモノでしょ?」
「いらねーよ、お前なんか……なぁ、殺したくないか?」
「何を言っているの?」
ステラは険のある顔になる。
「お前をそういう体にした奴をだよ。殺したくねーのか?」
「馬鹿言わないで、それが出来なかったからこうなっているの」
額に手を当てて、ステラは嘆く
「出来る俺ならな、今はどうなんだ?」
「はぁ?」
「……」
ロレインは椅子をギシギシと揺らして、口をつぐんでいる。
「嫌よ、アイツを殺しても何も変わらない」
「……ムカつくなお前」
「むっ、何なのアンタ」
「俺か、俺はロレインこれでも騎士だ」
そういう事じゃない!!とロレインの家にステラの声が響く。
「ふっふっふ、賑やかになりましたな」
エン爺は、それを微笑ましく見守っていた。
数日たった日の夜、まだ慣れないベッドだからだろうか。久しぶりに嫌な夢を見た。
数年前の記憶、私を犯し恥辱の限りを尽くした男の事を。
うなされるステラの横では、容態を診るロレインが古い本を読んでいた。
ギシギシと椅子の揺れる音が、ベッドの軋みを思い起こさせる。
いや やめて 苦しい 誰か助けて
ステラの呼吸が早くなる。次第に手足が痺れているのか痙攣しだした。
ロレインはその様子を見て開いていた本を閉じる。
横になっているステラに跨り、彼女の唇に自分の唇を付けた。
「んっ……ハッ!!」
呼吸が止まった後、彼女は目を覚ました。
「今、アンタ……分かっているの?口づけだけでも、私の病は移るかもしれないのよ」
「お前が苦しそうだったからな……」
ステラの上で馬乗りになったロレインは平然と答える。
「そんなのアンタに関係な…うぐっ」
ステラは話す途中、心臓が強く跳ねた。動悸が早くなる。
ゼーゼーと息が切れて再び苦しくなる。
「落ち着け」
体を密着させ、頬が擦り寄る。ロレインの鼓動がステラに伝わる。
ドクン、ドクンと一定のリズム。
落ち着いた鼓動にステラは少しムカッと来た。
「こうゆうの…慣れてるんだね」
「普通だろ」
ステラの首にロレインが手を回す。
「あっ……」
ステラは、その先に性的行為が待っているのを感じた。
ロレインの顔に手を当てる。
「なんだよ」
「これ以上はダメ、落ち着いたしもう大丈夫」
「大丈夫じゃねーだろ」
震えるステラの手を取ってロレインは言う。
「これは……」
「忘れられねーなら俺が忘れさせてやるよ」
ロレインは、そう言うとそのままステラの唇にキスをした。
見つめ合い、頬を撫でたり、優しいキスをしあった。
ステラは今まで乱暴に扱われていた。その為優しく気持ちの良い性行為に幸福感を得た。
疲れて熱くなった体を横になって休ませる。
互いの体液で濡れた体を密着させ、ロレインの胸の中でステラが口を開く。
「ねぇ、何で私なんか拾ったの?それにここまで危険な事……」
「……知りたくてな、治らねぇ死ぬ病気でも生き続けようとしてるお前が」
「誰でも死ぬのは怖いよ、だからひたすら生きているの」
「そうか?それでお前は楽しいのかよ?」
するとニッと白い歯を見せてステラは笑った。
「今とっても幸せよ」
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本日はここまでです。
有難う御座いました。おやすみなさい。
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