第二章 九節
超大国と成ったレグネッセスは、急ぎ元ミケアの地を改良した。
レグネッセスの武を司る四つの騎士団団長達は、皆国の四方の州を治める事となった。
ロレイン率いる白冥騎士団とフォーグ率いる白竜騎士団が北東の州元ミケアの地を、ゴドフロウ率いる白虎騎士団は西の州を、オスカー率いる白鳳騎士団は南の州をそれぞれ。
ミケア大国が亡びてから半年冬が訪れた。
それまで新しくレグネッセスの土地になった領土で、小さな戦争が続いていたがその寒さに何処の敵も撤退していった。
「やっと落ち着いたね」
寒さで鼻を赤くしたサラが、部屋に顔を出した。
「本当だね、ここ半年は忙しかった」
辺り一面が雪に染まった城の中、暖炉で燃える火の中にアルフレッドは薪をくべた。
アルフレッドは、白竜騎士団副団長に就任してからすぐ新領地の守備に当たった。
その場所が、ここオードリ城である。方角的に北に位置するこの場所は、とても気温が低く近くにある森には危険な大型獣が棲んでいる。
サラは冬になり一旦危険が無くなった為、こうしてアルフレッドの元に帰ってきたのだ。
「此処らへんに住む人達が言うには近々吹雪になるらしい、何か欲しい物があったら今のうちに言ってね」
冬越えの為、アルフレッド達は食料を備蓄している。
近隣住民とも関係を築き、手を取り合っていくつもりだ。
「ハーイ、うーんとね」
サラは牛革で作られたソファーに飛び込み、天井を見上げて考えた。
そういえば、よくロレインの奴が本を読んでいたっけ……。
「確か内容は、沢山の悪い人を勇者が倒して……最後は勇者が悪い人になっちゃう話」
以前、ロレインの本を盗み読みした時の記憶を思い出した。
「それって、七大国……今は六大国か、まぁ全大国に共通してある伝説の話じゃない?」
「アルフレッド知っているの?」
「有名な話だよ、グランデルニアには余り知られてないのかな?勇者フィロルの伝説」
「その本あったら読みたい!!」
「了解、明日取り寄せて貰うよ」
暖炉の火で部屋が暖かくなってきた。
ソファーで横になっているサラは、ウトウトしていて今にも眠りそうだ。
久しぶりの穏やかな日常が何事も無く過ぎようとしていた。
オードリ城から少し離れた城で白冥騎士団の騎士エギルは、夜の城内を見回りしていた。
「こんな夜更けに何の用だ?俺達と違ってアンタみたいな真っ当の騎士が」
「……」
エギルの言葉を無視して相手の男が体を当てて来た。
強い衝撃にエギルはよろめき転んでしまう。
「いってーな……ん?」
暗く冷たい廊下でエギルは目を凝らす。ぼやっと赤い色が浮かんだ。
「血!?待て、お前!!」
エギルは腰に差してある剣に手をかける。その瞬間エギルの手は切り落された。
「グワーーッ」
城内に悲鳴が木霊する。
相手の男は、焦ってエギルを切り殺した。
夜更けに悲鳴を聞きつけ、白冥騎士団補佐のリディが現場に駆け付けた。
そこには見張りの騎士が殺されていた。
「若には私が伝える、まだ近くに殺し屋がいる筈だ。追え!!」
「わ、分かりました!!」
リディはロレインの部屋に急ぎ、部下達は廊下の血の痕跡を追って捜索を開始した。
殺された者は三人いた。一人は白冥騎士団の伝令兵、二人は見張りの騎士だ。それに加えて殺された伝令兵の部屋は荒らされた形跡があった。
「若に限ってもしもは無いと思っていますが、無事で何よりです」
リディが部屋に着いた頃には、キュネとシュラがロレインの部屋を分厚く守っていた。
ロレインと補佐達を連れリディが殺害現場に案内する。
「これヤッた奴、何でわざわざ伝令兵なんざ殺したんだ?」
シュラが伝令兵の遺体を見て疑問を口にした。
「確かに、失礼ですが殺すのなら上の者を狙うべきですね」
「……内通者だ」
二人の疑問にロレインが答える。
「と、言いますと……裏切り者が我々の中に!?」
「さぁな、此処は俺達に恨みのある奴等も山程いる。誰かに雇われたか、それとも……」
確かに、此処は元ミケアの地。その可能性も高い。
しかし、ミケアの生き残りだとしたら何故伝令兵を?
「今から出るぞ、アルフレッドの野郎が居る城は何処だ?」
リディが考え込む中、ロレインは急な指示を出した。
「……今からですか!?外は雪が積もっています。風も強く、危険です!!それよりも何故アルフレッド何ですか!?」
「出るぞ」
真夜中の雪道を白冥騎士団は進んだ。
道中、元から此処に住んでいる近隣住民と出くわし、これを殺した。
そして夜明けと共にロレイン達白冥騎士団はオードリ城に入城したのだった。
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本日も連続投稿をします。
本日はこの話を含め五本です。よろしくお願いします。
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