第一章 五節

「アルフレッド大丈夫か!?皆、周囲を頼む」


「了解!!」


アイラ隊長が駆け寄って来る。

不思議と矢に刺さった痛みは無い。


「大丈夫です。気にしないでください隊長」


「何を言って」


胸に刺さった矢を抜くと、共に十字のペンダントが刺さった状態で出て来た。


「運良く、ペンダントが守ってくれたみたいです」


「ハハッ、凄いな。天も我らの味方か」


ならば、とアイラ隊長は声を張り上げた。


「アルフレッドが奇跡を起こしたぞ!!天が我らを守ってくださる!!皆の者、我らに恐れるものは無い突撃だ!!」


アイラ隊長は、敵の奇襲すら自分達の力に利用してしまうのだった。


ホント凄い人だよ、女の人だというのを忘れるぐらいに


騎馬隊は、そのまま勢いに乗り敵本陣まで辿り着いた。


「見えた、あれが敵将ホルコーンか!?」


「気合を入れろ!!護衛はかなりの手練れだぞ」


しかし、敵本陣から迎撃が来ることは無かった。

それは意図して他の騎馬隊が先に敵本陣を攻撃していたからである。


「やっと来やがった、そのまま持ちこたえろ。野郎共」


「ヤバいですよ兄貴!!もう十人も残っていない」


それは、ロレインが率いる小隊だった。

その小隊も既に無理のある動きの連続で風前の灯火にある。


「ホルコーン様、後ろからも敵が来ます!!」


敵兵が此方に気が付くが、もう目と鼻の先だ。


「ハァッ!!!」


敵兵達の波に剣を叩きこむ。

血潮は吹き荒れ、その場は赤い霧に包まれた。


時間が余りない、挟み撃ちとは言え数が圧倒的に此方が少ない。

反対側で敵の注意を引いていた味方は今にも消えそうだ。急いでこの場を打開する一手、敵将を討たねば。


「左に動くぞ、適当にあしらってから来い。まだ攻城戦にも入っておらぬのに…」


ホルコーンは、自信の合った攻城戦の前に押されている現状が不快であった。


「将軍お急ぎを、敵援軍がすぐそこまで来ています!!」


「何ぃ!!?」


砂塵の中で、白い軍機が翻るのが見えた。そこには大きく口を開けた竜が描かれている。白竜騎士団の旗だ。


レグネッセス左翼での動きに反応したオスカー副団長が援軍を送っていたのだ。


「どけ!!左に行くぞ」


そう言って、味方を跳ねのけ道を開く先にはレグネッセスの騎馬隊が構えていた。


「ホルコーン!!!」


「くっ!!!」


アイラ隊長の一撃がホルコーンを襲う。ホルコーンは槍でそれを防いだが、これで動きが止まった。すぐさまホルコーンの護衛達が出て来る。


「お前等もういいぞ、充分だ…ん?ハハッ生きてる奴居るか?」


「……」


ロレインはホルコーンが長くないと見て退く事にした。が、その時小隊の数は最初に比べて十分の一も残って居なかった。


「あれは!?」


アルフレッドの直線状にホルコーンが立ち止まっていた。

アイラ隊長に注意が集まっている。今此処を逃せば、次のチャンスがあるか分からない。


「クッ、僕が行きます!!援護を!!」


「よし、任せろ!!」


死ぬ気は無いが、大きな怪我は覚悟しなくては…。

脳裏で祈る姿のサラが過る。


「ホルコーン様!!」


「むっ!?」


ホルコーンは槍の達人だ。

僕は剣、リーチがある分此方が不利。それに僕は腕にそこまで自信が無い。


ならば一撃に賭けるしかない。


ホルコーンの槍が迫って来る!早い、見えない。咄嗟に体を捻る。

槍が脇の下を掠めた。全身に熱が走る。

痛みと恐怖でどうにかなりそうだ。だが、生きている。次はこっちの番だ。

大きく剣を振り上げる。


「アアアァァ!!!」


アルフレッドが吠え、全力で剣を振り下ろす。


「む、無念…」


アルフレッドの剣は深くホルコーンの肩から胸までを切り裂いた。

一目で致命傷と見えるホルコーンを見て敵兵達は武器を落とした。


「おおおー」


周りで歓声が上がる。

返り血で全身が染まったアルフレッドは、敵将を討った実感が沸々と湧いて来た。


「ホルコーン様の仇ィ!!」


多くのミケア兵が遁走する中、ホルコーンの護衛達だけがまだ戦意を失っていなかった。


「アルフレッド良くやった。だが、ここはマズい。一旦援軍の方へ抜けるぞ」


「はい!!」


時機に司令官ホルコーン討ち死にの報が戦場に駆け巡りミケア軍の大部分が降伏した。


レグネッセス軍がミケア軍に勝利したのである。


「良くやった、俺も鼻が高いぞ」


「有難うございます。いてて」


本陣に戻ると、フォーグ団長が迎えてくれた。


「俺の教え子が二人も大きな武功を挙げるとはな」


「二人?僕以外も誰か?」


「ああ、ロレインだ。アイツは白虎騎士団だから気持ち的には微妙だがな」


「ロレインが…」


後から聞いた話では、ロレインの奇策が今回の戦の勝利に大きく関わっているという。


浮かれている場合じゃない、僕は今回たまたま運が良かっただけだ。

もし、命を落としていたらサラを一人にしてしまっていた。

僕もアイツの様に強くならなければ。


ミケアとの戦の後、パレディア城に帰還したレグネッセス軍だったが吉報を聞いた首都から早くも武功を挙げた者は王宮へ来るようにと知らせが届いた。

勿論、アルフレッドもだ。


「まだ、帰って来たばかりじゃない」


「そうも言っていられないんだ、王命だからね。褒美を沢山貰って帰って来るよ」


サラの元気が無かった事が気になるが、手当てを済ませアルフレッドは首都へと向かった。


「敵将ホルコーンをよくぞ討ってくれた。これからも頼むぞ」


「お言葉有難く」


王からは、爵位を与えられた。それに加え


「僕が、隊を?」


「ああ、もっと任せても良い程の武功だが少しずつ慣らしていけ」


「あ、有難う御座います。期待に応えられるよう努力します」


フォーグ団長から、小隊を任せて貰う事になった。

しかし、良い事ばかりでは無かった。


「おい、大丈夫か!?誰か!!人が倒れたぞ!!」


その頃パレディア城内では、サラが高熱で倒れ。

時同じくして、若き天才と言われ始めたロレインが所属する白虎騎士団から嫉妬や妬みを抱かれ始めていた。




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本日の投稿はここまでです。読んで下さった方々ありがとうございました。

明日も五話投稿します。良かったら読んで下さい。それではいい夢を

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