第16話 霊薬の製造方法に探りを入れる
「霊薬の件どうなりましたか?」
パドキアに戻ると、俺は早速団長に確認をする。
セサミでニアに薬を飲ませ経過を見守ること半日。離れてから一日半が経つのだが、焦りばかりが浮かんでくる。
「駄目だ、霊薬を売ってくれる相手は見つからなかったよ……」
表情から伝わってきていたが落胆してしまう。
できれば良い報告を聞きたいと思っていただけに、どうしても期待してしまっていたのだ。
「一応、ゼロス国王からは追加で交渉に使えそうな魔導具や宝石類などを預かってきました」
俺は団長に預かってきた物を団長へと渡す。これだけあれば霊薬を買えるはずなので、どうにか購入先を探して欲しいところだ。
「実際、事故があったのは本当らしくてな、霊薬を持っている人間は少ない」
パドキアの強みはいかなる怪我や病気をも治癒する霊薬を作り出せる点にある。
王族・貴族の一部は万が一の事態に備えて霊薬を持っているはずなのだが、今の状況で保有しているのがバレると上位貴族や王族から取り上げられるのか秘匿しているらしい。
「つまり、交渉のテーブルにすらつかせられない」
「ああ、パドキア内でも奪い合いが起きているからか、金銭を匂わせても乗ってくる者はいないだろうな……」
思っているよりも難儀しそうだ。
「霊薬の製造方法はわからないんですよね?」
それならば、市場に出る前に現物を押さえてしまえばどうだろうか?
「パドキアの最高機密だからな、おそらく一目につかない場所で作っているのだとは思う」
そう簡単に尻尾を出すとは思えないが、団長と同じアプローチをしていても望みが薄いので、俺はこちらをあたることにした。
「俺は霊薬の秘密を探ってみようと思います」
上手くやれば、自分たちで霊薬を作成できるようになるかもしれないし、そうすれば今後同じような事態になった際、弱みを握られることがなくなるかもしれない。
「それは構わないが、心当たりがあるのかね?」
団長は驚きの表情を浮かべると俺に聞く。
「霊薬は大勢の魔導師が年単位で作っているとコトネアから聞いたので、魔導師が集まる場所を探ってみようかと」
転移を駆使して国中を飛び回れば探せるかもしれない。
「確かに、ヨウスケ殿ならばこれまでパドキアが秘匿していた霊薬の秘密に辿り着けるかもしれないな……」
俺は頷くと、団長と別れて霊薬の秘密を探ることにした。
「さて、時間がないから急がないとな……」
転移を繰り返し、建物の頂上へと登る。
高い場所から見下ろすと、パドキアの国民の姿が目に映る。
整備された道路を魔導車が走っている。
どうやらこの国では元の世界のバスのような物が存在しているようで、定期的に国内を回っているらしい。
魔力を動力にしているからか排気ガスも発生せず、そのお蔭で空気も澄んでいる。元の世界に魔力があればこういったものが発明されたのではなかろうか?
(ここらは住宅街なのかな?)
魔導車から降りてくる住民を見ると、子どもや女性が多い。
学校帰りのような様子なので、おそらくは住居区なのだろう。
(流石に住居区の近くで霊薬は作らないだろう)
裏をかいて実はという手もあるが、国の最大機密で裏をかいて警備の手を薄めるのはまずない。
やはり警備の厳重な場所こそが怪しい。
俺はそう考えると転移を繰り返した。
(あそこが、一番怪しいよな……)
一日中転移を繰り返し、パドキアの国内全てを網羅した俺は、国の中心にあるとある施設を見張っていた。
人の出入りがかなり厳しく、入った人間がまったく出てくる気配がない。
入場時のチェックも厳しいらしく、魔導師が何名もゲートでチェックを受けていた。
(ひとまず、ここから調べてみるか)
転移をして地面に降りる。
降りたのは、ゲートから離れた場所で今もゲートでは魔導師がチェックを受けているのが見える。
(似たようなローブは手に入れたし、後は……)
程なく、チェックを終えた魔導師が建物に入るためにゲートが開く。
(いまだ!)
次の瞬間、俺は転移を使い、建物の奥へと移動した。
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女神から依頼を受け、俺が『異世界』を征服することになった件~チートマシマシで異世界勢力図を塗り替えていきます~ まるせい(ベルナノレフ) @bellnanorefu
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