第6話
手術が終わり、一旦、退院した俺は有紀に付き添ってもらって、その年の十二月に、クリスマスプレゼントを選びに出かけた。
「驚いた……兄さんが、永井さんの娘さんに、クリスマスプレゼントを贈りたいって言い出すなんて……」
「悪かったな……だが、俺だって格好つけてみたいのさ……永井と飲んだくれている間、俺はあの娘から父親を奪っていたことになるものな……それに、随分、真理子さんを怒らせた。母親の怖い顔を見て、嬉しい子供なんかいない。あの娘にかわいそうなことをした。ちょっとした罪滅ぼしをしたくなった……」
「でも、何年ぶりかしら……兄さんとこんなふうに出かけるの……」
クリスマスプレゼントを永井の家に送る手配をしたあと、有紀と喫茶店に入って俺はかたちだけコーヒーをたのみ、有紀にケーキセットをおごってやった。
「家のほうは大丈夫か?」
「大丈夫よ。ダンナには全部、話してあるから……兄妹二人の時間、大事にしろって……私、遅い結婚で、子供にめぐまれなかったから……楽しいものね、子供にプレゼントを選ぶって。」
「そうだな。お前が手伝ってくれて助かった。婿殿によろしく言ってくれ。」
「まあ、兄さんにしては殊勝な物言いだこと……」
「有紀、俺は、来年も、永井の娘にクリスマスプレゼントを選べるだろうか……」
「頑張ってよ、兄さん。今年はチョコレートにしたけど、来年も、一緒に、クリスマスプレゼント、選びましょうよ。それを目標に生きるのよ。」
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