第2話
永井は俺の元同僚だ。世間を敵に回しているような俺に、何の屈託もなく話しかけてくる奴だった。幼いころに生みの母親と死に別れ、継母と折り合いが悪かった永井は、人懐っこく、寂しがりやで甘えん坊で、とにかく手のかかる奴だった。
ぶっきらぼうにあしらっても、永井は気にもかけず、話しかけてくる。酒が弱いくせに、週末になると、
「どうです?飲みに行きましょうよ。」
と、みんなを誘い、俺にも強引に声をかけ、引っ張り込む。そのくせ、すぐに酔いつぶれて、みんなに迷惑をかけるので、毎度のことだが、一足先に、俺が永井を自分のアパートに連れ帰り、泊めてやる羽目になる。
夜中、酔いが冷めて目を覚ますと永井は
「僕は、できるだけ早く結婚したいんです。暖かい家庭に憧れているんですよ。だから、相手は幸せな家庭で育った娘がいいです。僕は、幸せな家庭ってわからないから。」
とよく言った。
「だったら、見合いでも何でもして、さっさと結婚してしまえ。飲めない酒を飲んで、酔いつぶれてる場合じゃないだろ。」
俺が言うと、永井は
「見合いですかあ……」
と、へらへらと笑う。その後、いびきをかいて俺の布団で大の字になって寝て、明くる日の朝は起こしてやらないと起きない。おまけに二日酔いで胃が痛いと泣き言を言って、仕方なく、俺は永井のためにお粥を作ってやる。永井は、子供のように手のかかるが、どこか憎めない奴だった。
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