第五話


「へ???」


 

俺は素っ頓狂な声を上げる。

耳から入ってきた言葉が素直に脳で処理されないのだ。


『暮らす』?


別に異性と暮らすのはどうだっていいが、

大好きな1人の時間が無くなるのはとてつもなく嫌だ。


流石に嫌なので

「いやいやいやいや....

 なんで俺がお前と暮らさなくちゃいけないんだ?」

 と多分当たり前の事を聞き、更に俺は一拍置いて続ける。


「俺『男』だし、お前、、、いいのか?」


すると


「「え!?」」


と、シオンの声が響く。


そして

「ハクさんって男の子だったんですか!?

 てっきり可愛い女の子かと思っていました...」

と、驚きと落胆が混ざった声で言ってきた。


(またこれだよ...)と思いつつ俺は頬杖をつく。

実のところ、これまで幾度となく女子と勘違いをされてナンパをされてきたのだ。

そのせいで、自分が『かわいい』と自覚してしまっている。

てか普通、一人称とか口調とかで『男』って分かると思うんだが...

まぁ、声が女子みたいに高いし仕方ない...のか?


俺はぶっきらぼうに

「悪かったな、男で。」と返す。


するとシオンが

「まぁ、ほとんど女の子なんで構いませんよ。」

と、心優しい事を仰って下さった。

続けて「では住む寮の部屋の鍵を渡しておきますね。」

と鍵を渡してくれた。

俺は「助かる。」とお礼を言って鍵を受け取る。

その時、

 


『キーンコーンカーンコーン』

 


と丁度タイミングよくチャイムが鳴ったので

俺達は話すのをやめて先生と思わしき人が入って来るまで読書をして待つのだった。。。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんだこの学園...」



俺はそう呟きながら廊下をテクテク歩いていた。


結局、担任がクラスに来なかったので入学式に少し遅れたし、

学園長もバカンスに行ってて休みだったのだ。


入学式の日にバカンスってやばいでしょ...

おまけに入学式は死ぬほど面白くなかったし長かった。。。


やがて俺は教室に辿り着き、そそくさと荷物をまとめる。

幸いにも、この後は帰宅となっていたので帰る事が出来るのだ。


俺は荷物をまとめ終わったので、教室の扉を開ける。


嫌な予感がビンビンする。

でも俺は帰る。惰眠を貪る為に。


そしてシオンに「またな。」と告げて帰宅したのだった。


◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆


俺は、寮の位置をスマホで確認しつつ帰宅していた。

この辺は道が入り組んでて帰るのが難しいのだ。

そして少し歩いて、薄暗く開けた場所に出る事が出来た。


 

その刹那、


 

「シュン!」と風を切りながら刃が俺の横腹に向かって来ていた。


俺は殺気が濃く漂っているのを感じ取っていたので上にジャンプしてそれを容易く避ける。

そしてフワリと着地して、俺は後ろを振り返る。


そこには驚愕の顔をしている3人組の男がいた。


その内の1人が

「なんで、、、Gランクが今の避けれんだよ!?」

と問いかけて来る。


それに対し俺は、

「なーに、ただのまぐれだっての。」と答える。

そして、

 

「何の真似だ?」


少しドスを効かして俺は理由を聞く。


すると3人全員が、一瞬だが体を震わせた。


(こんなんで怯むなんて、Bランクか?)等と思っていると、


「『何の真似だ?』じゃねぇぞ!!

 白銀サキ様とGランクの癖に会話しただろ!!」

と噛みついてきた。

 

こいつらはサキの親衛隊なのか?

別に、話したくて会話してた訳じゃないんだけどな〜。


俺はその旨を伝える。


「別に好きで会話したかった訳じゃない。

あっちが急に攻撃したから、その理由を聞くため会話しただけだ。仕方なくないか?」


これで分かってくれるかと思ったが、

反対に殺気をもっと濃く漂わせていた。

(面倒臭えぇ...)と思いつつ荷物を降ろす。

そして、また噛みついてきた。


「うるせぇ!そんなん関係ねぇよ!!

 Gランクが白銀様と会話しただけで万死に値するんだよ!

 だからBランクの俺様達が直々に手を下してやる!!!」


その言葉は俺の琴線に触れた。


『万死に値する』?


たかがBランクが何を言ってんだ。


久々にムカついてきてしまった。


こいつらは『死』について軽く見すぎている。

能力を持って『自分は殺されない』とでも思っているのだろう。


それなら、自身の『死』を持って分からせなきゃダメなようだ。


 


『お前らが住む世界ほど、温い世界はない。』と、、、

 



俺は、周りに防犯カメラが無いか確認する。


(よし、何もないな。)


確認した俺は準備運動を行う。

 

その間にもあいつらは俺を見て笑っている。


そして俺は前髪を片手で上げ、口角をニィと上げて告げる。



   『『お前らはもうGAME OVERだ。』』



次の瞬間、


俺は地面を思い切り踏み抜いた・・・!!


「はや...!!」と聞こえたが、そんなん知らない。


俺は近くにあった○○○を拾い、3人の内の1人に近づいて袈裟斬りを落とす。


そいつは、「プツン...」と糸が切れた操り人形みたいに膝から崩れ落ちた。


絶命だ。俺は1人の命を刈り取ったのだ。


「おのれぇ...!よくも友達を殺ってくれたなぁ!!」


と、もう1人が突っ込んできた。


俺はつくづく呆れ、後方にバックステップをとる。


すると当然、相手は追ってくる。


俺は足をバネのようにして、また地面を踏み抜く。

そして後ろを取ることが出来たので、

こいつの首の辺りを○○○を使って薙いだ。


「ゴトッ」と音を立てて首が落ちる。


あと1人。


すっかり恐怖に染まっていた奴に俺は歩いて詰め寄る。


奴は『死』という運命から逃れる為に、

能力を発動しようと右手をかざす。


が、、、発動しない。


「なんで...発動しないんだよ!?」

と言いながら再び手を俺にかざしてくる。


それでも発動しない。


俺は腰が抜けて地面に座ってる奴に近づき、髪の毛を掴む。


怯えきった顔を前に、鋭い圧をかけ続ける。


すると、

「なんで...お前みたいな奴がGランクなんだよ!

 その実力ならSランクにだってなれるだろ!!

 お前は、一体何者なんだよ!?」


と最後の最後まで噛みついてきた。


だが、俺はその問いに正対していない事を言う。


「学校出た時から尾行するならもっと気配を隠せ。」


その言葉に奴は顔をより一層青くする。


「じゃあな。」


そう言い、俺は手に持っている○○○で首を切る。

 

「スパン!」と音を立て、頭と体を切り離した。


そして、俺は掴んでいた頭をその辺に投げ捨てた。


俺は荷物を持ち直す。今度こそ帰宅だ。


俺は手に持っていた○○○を捨て、歩きだす。



 





後日に通報を受けて警察がその場所に向かったところ、

無機質なコンクリートで出来た道路の上に



紅く染まった葉が1枚だけ落ちていたそうだ。


 

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