第21話 佐藤累子と霧島隆一郎
結論から言って...あの後どうなったかというと。
通行人が通報したのと燕さんが来た事により問題は解決した。
男達は警察に捕まり。
それから俺達は遅れつつ高校に向かった。
すると何故か佐藤がビクッとしていた。
俺は「?」を浮かべながらその姿を見ていたがそのうちに視線を逸らし。
窓から外を見ていた。
すると祐樹が「何かあったのか?」と聞いてきた。
その祐樹に「ああ...実は」と全て説明する。
「...ああ。そんな事があったんだな...」
「...祐樹?」
「...いや。実はな。佐藤の様子がおかしくてな。それと関連しているか知らんが」
「佐藤が?...うーん?」
もう一度、佐藤を見る。
佐藤は俺を「...」となりながら見ている。
その姿に確かに違和感を感じる。
何かをしたかアイツ。
そう思いながら居るとチャイムが鳴った。
「...何だったんだろうな」
「...分からん。屑のする事は良く分からん」
「...」
俺は考え込みながらも授業に集中する。
それから朝の事を忘れようと頑張る。
何となく気持ちも和らいでその記憶が薄れてきた頃。
佐藤が俺に話し掛けてきた。
☆
「...何だよ。佐藤」
「何でアンタこの場所に居るの」
「...何でって事はお前何かしたな。...何をした。言ってくれ」
「アンタにダメージを負わせるつもりだった」
「汚い真似をしたな佐藤。残念だったね。俺は死なないから」
「...」
佐藤は悔しそうな顔をしながら俺を見る。
そんな俺は佐藤を見上げながら「もう止めよう。こういう真似は」と言う。
すると佐藤は「止めない」と断言した。
そして「私はアンタに...」という感じでギリギリ歯を食いしばる。
「...佐藤。俺は今ならお前も引き返せるって思っている。もう無理だ。お前の計画は何をしても破綻する。だから引き返せ。無理だ」
「...私は...アンタにダメージを負わされた。...アンタは何も失ってないから分からないけど...相当にダメージ...」
「お前馬鹿か」
そう祐樹が言った。
それから立ち上がって佐藤を見つめる。
そして「彼は誰よりも失ったものが大きいぞ」と言い出す。
何を言う気だよ。
「妹さんも幼い頃に亡くしたし。...お前はあくまで突き落とされた様な感じにはなっているけど違うだろ。状況が」
「...は?」
「お前を守ろうとしたけど失敗したんだ。突き落としたかもしれないって隆一郎は言っているけど実際全てが真逆だ」
「...はぁ...?!」
佐藤はばっという感じで俺を見てくる。
俺は肩を竦める。
それから「...最後まで面倒で隠そうとしたのをネタバラシ止めろよ」と祐樹を見る。
祐樹は「いや。状況も状況だ。まあその。お前の傷をみせてやったらどうなんだ」と顎を動かして祐樹は言う。
「...いや。見せてどうなる」
「...待って。傷って何。...何が起こった」
「お前が頭打った時に守る為に肩を脱臼した。気絶していたのもありお前の入院の為のごたごたもありだったから何も知らないかもだけど」
「...そんなの今まで1度も聞いてない。嘘言うな」
「肩に脱臼してからボルトを入れたよ。...嘘は言ってない。あくまでお前の体重で脱臼した」
「まさか」と佐藤は困惑しながら汗を流す。
俺はその言葉に「やれやれ」と言いながら制服を脱ぐ。
するとそこに脱臼を支える為のボルトの入っていた傷跡があった。
佐藤は「...」と愕然としながら見る。
「...お前...いや。アンタ...気絶していたからってまさか嘘を言っていたの?突き落とした、悩んでいたっていうの!!!!!」
「隠すためにな。まあこんなのバラしても仕方がなかっただろうし」
「重要でしょうが!!!!!」
「俺にとっては話を聞き入れてもらえない中では重要じゃなかった」
「...!」
「...だが正直言って俺はお前以上に酷い傷は負ってないから」
そんな事を言いながら上半身裸になっている俺は服を着る。
すると佐藤は「...あり...えない」と絶句した。
俺はその姿を見ながら祐樹は「コイツ恥ずかしがり屋だから。...だけどこれで分かったと思うけど。...お前が引っ越した時にコイツが休んでいたのはこれが理由だ」と暴露する。
オイ。
「...だから何。私はもう引き返せないし」
「お前は今ならまだ引き返せる段階には居ると思う。だけどもう引き返せなくなるぞ」
「...私は...」
心がぶっ壊れたというか。
動揺している様な顔をしながら佐藤は杖を突いて授業が始まりそうなのにどっか行ってしまった。
俺はその姿を祐樹と一緒に見てから再び肩を竦める。
正直こんなのをばらした所で何も起こらない。
そう思っていたから今まで隠していた。
「...あのアホ戻って来るかな」
「知らないな。...どっか行ったみたいの様だから」
そして俺は制服を着てからそのまま授業を受ける。
何で今までネタバラシして無かったかというと。
正直、話が捻じれつつあるから入れる場所が無かったのだ。
佐藤が知らないならこれでも良いかと。
だけど祐樹が無理に全てバラしてしまった。
こうなった以上は佐藤にも変化してもらう必要があるかも知れない。
そう思いながら俺はどっかに行ってしまった佐藤の席を見る。
別にアイツを守りたかった訳じゃ無い。
どうでも良かったのだけど。
だけど死んでもらっても困るかと思っただけだ。
頭を途中で打って気絶していたのが幸いだったんだが。
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