第17話 Those who do not choose happiness


私は...最善の手を考えていた。

決して仲良くしようという意味ではない。

佐藤はあくまで敵だ。


だが...このまま進むのでは無く。

引き返せる部分もあると。

そう思ったのだ。

だから私は考えていた。


それからご飯を作ったりしていると燕が帰って来た。

私はリビングから出て燕を見る。

燕はハグして来た。

私は「?」を浮かべて燕を見る。


「どうしたの。燕」

「お姉ちゃんとハグしたくなっただけ」

「...そう。...その。隆一郎は」

「彼にはアドバイスをしてあげた」

「アドバイス?」

「...私の将来の夢も交えて」


そう言いながら燕は私を見てくる。

その瞳は...過去の燕と違う何かを感じた。

雛鳥が大人になる様な。

そんな感じの瞳に見えた。

私は驚きながら燕を見ていたがやがて「そう」と返事を柔和にした。


「...私は佐藤達を絶対に許さないけど。...だけどそれが全てか?と思った」

「...そうだね」

「...私は話をする方向で背中を押した」

「そう」

「間違っては無いと思う」


それから燕は私を見て笑みを浮かべる。

私はその姿を見ながら柔和になったまま「クッキー食べる?」と聞いてみる。

すると「それはお姉ちゃんが焼いた分?」と聞いてきたので私は頷いた。

そして私は紅茶を淹れて彼女の前にクッキーも持って行った。



「...私も同席しようかと思う。隆一郎の話し合いに」

「...うん」

「私は彼女として見守る義務がある」

「...うん。それが良いと思う。お姉ちゃんのやりたい様にやったら良いよ」


チョコチップクッキーを食べながら私はそういう意見を言う。

燕は全てに賛同してくれた。

それから私は2枚食べてから「そうなったら隆一郎にメッセージを送らないと」と言ってからスマホを出す。

それからキーボードをタップした。


(隆一郎)

(どうしたの?望)

(私も出席して良い。...話し合いに)

(...ああ。...だけど多分...話し合いは決裂すると思う)


そう言いながら隆一郎はウサギが考える様なスタンプを送ってくる。

私はそのスタンプを見ながら(そうだね)とメッセージを送る。

それから私は考える。

そして(佐藤は...妬んでいるんだよね。まだ)と私は言う。

すると隆一郎は(だろうな)と言う。


(...どうしたものか)

(正直俺は...彼女と分かち合うのは無理だと思う。...だが...それで終わらせても相手からの嫌がらせは続くだろう。...だから決着をつけたい)

(...そう)

(ああ。...だからお前が出席してくれるのは有難い)


そう言う隆一郎。

私はその言葉に(うん)と返事をした。

(ダメもとで。...燕さんも言っていたしな)と隆一郎はスタンプを送って来る。

私は考えながら(励みになったら良いけど)と答える。

すると隆一郎は(そうだな)と返事をした。


そして私達は他愛無い話をしてから翌日になって学校に行く。

それから衝撃を受けた。

何故なら転校生が来ていたのだが。

ソイツが...佐藤だったから。



「オイ。どういう事だ」

「どういう事って見れば分かるでしょう。私はアンタが居る学校に私の身体的機能。全てのバリアフリーの問題でたまたま転校して来た。それだけ」

「...」


考え込む隆一郎。

目の前の佐藤は肩を竦める感じで私達を見る。

クラスはピリピリしていた。

何故なら佐藤が私達の関係を邪魔する存在だと認識された様だ。


「この学校で下手な真似をすると居づらくなるぞ。...気を付けろ」

「アンタに言われる立場でも無い。私はアンタ達は死ぬほど憎いけどこの学校で捕まる事はしたくないし」

「...どうだか」


そんな会話を聞きながら眉を顰める私。

私は先手を打っておこうと「佐藤」と言う。

睨まれた。

そして佐藤は「何」と聞いてくる。


「貴方が下手な真似をしないとは限らない。だから私は貴方を警戒する」

「...どっちでも良いけど。勝手にしたら」

「私は貴方が嫌い」

「お生憎。私もアンタが嫌い」


私は「だけど」と切り出す。

それから私は「?」と浮かべて眉を顰めたままの佐藤を見る。

「それだけが全てとは思わないから」と言う。

すると佐藤は「何が言いたいのアンタ」と話す。


「...話し合いがしたい」

「は?私はこの身体が治らない限りは許さないって言っているでしょう」

「確かに。...だけど恨み合う事だけが全てじゃない」

「...何が言いたいの?はっきりさせたら?」


そう言いながら佐藤はイライラしている様な姿を見せる。

すると隆一郎は「お互いに良い関係を築きましょうって事じゃない。だが俺達は妬み合う事ばっかりしていたら人生を無駄にしている気がする」と切り出した。

「お前も妬むばかりじゃなくて別の事を考えろ」と言いながらだ。


「...私は話し合いをする気は無い」

「...だろうな」

「アンタは妬みの対象。...絶望の対象。...私を突き落としたんだから」

「...」

「生涯分かち合う事はない」


佐藤はそう吐き捨てながら杖をついて「トイレ行く」と去って行った。

教室中の女の子達が「何あれ?訳分らな」とか言って不愉快そうな顔をする。

男子達は「不愉快だな」と直に言う。

私は隆一郎を見る。

隆一郎は暫く佐藤の去って行った方角を見ていた。

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