第15話 陽が沈んだ世界
☆
私が...というかこの私が何でこんな目に遭っているのだ。
そう思いながら私は怒りを感じる。
それから私は突っかかっていたがそんな私を威嚇する様に変な女が現れた。
私は隆一郎達に接する事も出来ず。
そのままバイト終わりになった。
「...」
そうして自転車に乗り込もうとした時。
目の前から「山柴律子だね」と声がしてきた。
私はビクッとして顔を上げる。
するとそこに...女が居た。
スカートの短いボブの女だが。
「...誰。アンタ」
「私は佐藤累子(さとうるいこ)。...私は...霧島隆一郎のイジメっ子だった」
「...!」
「...中学校の時に私、事故に遭ってから幸せになる霧島の事を更に恨む様になってね」
「それで何の用事」
「...一緒に復讐しない?霧島隆一郎に」
日が当たり現れた彼女は杖を突いていた。
右半身不自由...らしい。
後遺症で麻痺しているという。
私は無言で彼女を見つめる。
それから「...分かった」と返事をする。
「アンタは霧島に恨みがある。私も霧島に恨みがあるから。丁度良いんじゃないかな」
「私は浮気した時にその彼が浮気して不幸になった。だから絶対に霧島隆一郎は許せない」
「その意気だね。私も事故に巻き添えになってから許せないから」
それから私は杖を突いて歩き出すその女子を見る。
私は何だか暗黒の方面に進んでいる。
だけど私はこれで良い。
アイツだけは。
霧島隆一郎が幸せになるのは許せない。
☆
望が俺を見てから「見せたいものがある」と言った。
そして俺達は特殊な墓地に来た。
それは...動物霊園だそうだ。
俺は動物霊園でシロのお墓だとされるお墓を見る。
望は手を合わせた。
俺も手を合わせながら「お前は優しいな」と言う。
「何が」
「こうして来ているんだろ。時たま」
「...そう。確かに来ている。...私の大切なシロが眠っているから」
「...マタタビもお供えって事か」
「そうだね」
そして俺はマタタビを見る。
彼女はそれをお供えしながらそのまま暫くして鞄に仕舞った。
「...他の動物が来ちゃうから」と言いながらだ。
俺は「成程な」と笑みを浮かべる。
「...シロは幸せ者だな」
「...?...そうかな」
「ああ。俺はそう思うぞ」
「...そうだと良いけど」
そうして俺達は暫くシロのお墓を眺めてからそのまま立ち上がる。
それから望が俺を見てきた。
俺は笑みを浮かべる。
「いつか大切な人とこの場所に来たかった」
「彼氏にも紹介して無いのか」
「...してない。...する訳ない。あんな最低な人達に」
「それはそれで何だか恥ずかしいな」
そして俺は赤面する。
すると望は「...帰ろう」と言う。
俺は「ああ」と頷いてから表に出る。
歩道を歩いていると...向こうから杖を突いた...。
「!!!!!」
「...え?...どうしたの」
「...お前...この街に戻って来ていたのか」
「久しぶりだね。霧島。...佐藤累子だけど。覚えてる?」
悪魔の様な笑みを浮かべるその顔に俺は汗が噴き出す。
それから胃がキリキリ痛む。
それは...見たくない顔であり絶望の姿だった。
佐藤は歪んだ笑みを浮かべながら「アンタのせいでこうなったんだから。...反省してよね」と言ってくる。
「...あくまであの日。俺が...」
「そう言って私の人生を潰して?のうのうと彼女を作って?滅茶苦茶なお花畑だねアンタ。私は身体がったがたで妊娠も出来ないんだよ。...この体になってから」
「...」
俺はあの日を思い出す。
雨の日に階段から落ちた事を。
違うか。
いじめを受けていてもみ合いになってコイツは足を滑らせた。
「...私はアンタへの恨みを忘れた日は無い」
「...確かに割合的には俺もお前も悪いのは五分五分だとは思うけど。だけど今更何だ。何をしに来たんだ」
「簡単。私は私のこの先の人生を身体障害者にしたアンタを許さない。だから人生を潰しに来た」
「...」
沈黙する。
すると望が不愉快そうな顔をして「貴方...何か気に入らない。...貴方からは危険な香りがする」と俺達の前に立ちふさがった。
佐藤は「...アンタが木橋望?」と名前を言う。
何故それを知っている。
「...聞いちゃった。全部を山柴から」
「...あのクソ女...」
「...私、彼女と手を組む事にしたんだ。...全部おじゃんにしてあげる」
「もう過去の話だと思うんだが。こうなった以上は...」
「私は過去の話でもこうして杖を突かないと歩けないボロボロの身体だ!!!!!」
佐藤は絶叫しながら俺を見る。
俺は「...」となりながら佐藤を見る。
佐藤は酷く道化以上に歪んだ笑みを浮かべる。
殺人鬼の様な。
「...私はこの身体が治らない以上。アンタ達を許す気は無い。そして子供を産める様な幸せな家庭は築かせない」
「もう止めろ。佐藤。...もうこれ以上争っても...」
「調子に乗るな。クソが」
そして佐藤は吐き捨てながら「じゃあ今日は帰るけど。覚えておいて」とそのまま歩いて帰って行く。
俺は冷や汗が出る。
それから唇を噛んでいると望が「...ゴメン」と言った。
「割って入れなかった。圧倒的だった」
「...あくまでお前のせいじゃない。...アイツと俺の因縁の話だ」
「...」
望は俺を見る。
そして俺は佐藤が去った方角を見た。
何故俺がイジメを受けていたか。
それは...とある女子を救う為だったのだが...。
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