第14話 貴方なら任せられる
☆
私は目の前の隆一郎を見る。
隆一郎は笑みを浮かべながら燕を見ている。
燕は居心地悪そうな感じを見せる。
私はそれを見ながら「ちょっと飲み物取って来る」と言う。
すると燕は「え!?」と声を発して私を見る。
縋る様な感じで見てくる。
私は「飲み物取って来るだけ。すぐ戻って来る」と言う。
燕は「...」という感じで私を見る。
「すぐ戻って来て」
「うん」
そして私は席を立った。
それから2人を見る。
燕は居心地悪そうな感じを見せていた。
私はそれを見ながら飲み物を取りに行く。
☆
「...燕さん」
「...な、何でしょう」
「...そんなに固くならなくて良いよ。...俺としてはいつも通りにしてもらえれば」
「だ、だけど...」
「俺はあくまで怒ってないから」
そう言われながら私は顔を彼に向ける。
霧島という彼氏に、だ。
そして私は複雑な顔をする。
すると霧島さんは紙ナプキンでいきなり折り紙を始めた。
「...え?」
「何をしているかって?そうだな。折り鶴でも折ってみようかと」
「な、何でいきなり?」
「それはまあ折りたくなったから」
その言葉に私は驚きながら居た。
だけどやがて真剣に折るその姿に少しだけ吹き出してしまった。
それから私は「何で」と聞く。
すると霧島さんは「ようやっと笑ったね」と笑みを浮かべる。
「...え?」
「俺がこれを折ったのは君に笑ってほしかったからだよ。...うん。笑ってくれた」
「...」
私はその言葉に沈黙する。
それから「...霧島さん」と口にする。
すると霧島さんは「うん」とニコッとした。
私は聞いてみる。
「...貴方は優しいですね」
「...そうだな。...まあ...優しさだけが取り柄だから」
「...そうですか」
「...うん」
そして霧島さんは「俺...何ていうか。こういう事しか出来ないから」と口を開く。
「昔から苦手な事ばかりだったから。常に影に隠れて...やるしか無かったから」とも言いながらだ。
私は「!」となる。
「...君が笑ってくれるのが嬉しいかも。...俺の彼女の妹だし」
「...」
私は心の闇が祓われた気がした。
それから私は彼を見る。
そうか。
彼が信頼出来るのはこういう事か。
そう思えた気がした。
「...貴方はお姉ちゃんの彼氏を辞める気は無いんですか」
「無い。...さらさらない」
「...そうですか」
その言葉に私はホッとした。
それから「有難う御座います」と頭を下げる。
そして私は霧島さんを見る。
霧島さんは「?」を浮かべた。
「それはどういう事?」
「貴方が...お姉ちゃんの彼氏で良かったという意味です」
「...俺が?」
「そうです。貴方なら...確かに信頼出来そうな気がします」
そして私は頭を下げる。
「お姉ちゃんを...お願いします」という感じで、だ。
それから私は顔を上げた。
すると丁度、お姉ちゃんが戻って来た。
「お姉ちゃん」
「...話は終わった」
「...そうだね。霧島さんと話、終わったよ」
「私の彼氏。だから大丈夫」
そう言いながら笑みを浮かべるお姉ちゃん。
私はその顔を見ながら「そうだね」と苦笑する。
それからお姉ちゃんは私に飲み物を差し出してから。
そして霧島さんが飲み物を取りに行ってから他愛無い話をし始めた。
「シロ...実は燕の所でおしっこ漏らしちゃって」
「そんな事あったんだね」
「臭かった。おしっこ」
「そうだね。お姉ちゃん」
そんな会話をしていると「隆一郎...」と声がした。
その声に私は「?」を浮かべる。
そこに店員が居る。
2人の知り合いの様だが...何か。
おかしい。
「...お前...ここの店員だったんだな」
「そうだけど」
「...もう出よう。隆一郎」
そして霧島さんとお姉ちゃんが動く。
すると舌打ちをしたその女。
それから「あのねぇ!!!!!」と言いながら掴もうとする。
お姉ちゃんを。
私は咄嗟に振り払った。
「...な、何アンタ」
「それはこっちの台詞だけど。...アンタ誰」
「私は彼達の知り合いだけど」
「俺はお前の知り合いになった覚えはない」
「だそうだけど。アンタ本当に何?」と脅す。
すると彼女はまた舌打ちしてから去って行った。
何というか店員の姿ではない。
そう思いながら私はその女の背中を見てから溜息を吐いた。
それからそのまま清算してファミレスを後にする。
☆
「あれは浮気相手だ」
「...つまり霧島さんの彼女だった人ですか」
「...そうだな。...恥ずべき過去だよ」
「お姉ちゃんも酷い目に遭っていますから」
そして歩いてから私達は家に着いた。
私は「じゃあ」と言う。
それから私は家の中に入ろうとした。
するとお姉ちゃんが潤んだ目で彼を見ていた。
「...お姉ちゃん。もしかしてもう少しだけ霧島さんと一緒に居たいとか?」
「そ、そんな事ない」
「そっかそっかぁ。じゃあ私、戻るから」
私は笑みを浮かべる。
それから玄関を開けて中に入る。
ようやっと見つけたんだね。
お姉ちゃんは宿木を。
そう思いながら私は胸を弾ませ家の中に入った。
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