第12話 崩れる(男)への認識


親が離婚し。

私は父親に引き取られた。

そうしていると私のお姉ちゃんに新しい彼氏が出来た。

だけど私は...認める気は無い。

信じられない。


「お姉ちゃん。別れよう」

「私は別れる気は無い。...燕は何も知らない」

「私は貴方の悲惨な状態を何度も何度も見てきた。だから言える。アイツは信頼できない」

「...分かる。...燕。だけど...お願い。彼の事をもっと知って」

「そう言ってもう何度も何度も何度も!!!!!裏切られた!!!!!」


私は思いっきり絶叫する。

それから「お姉ちゃんは私が守る。絶対に許さない」と言う。

歯を食いしばりながら、だ。


私は...お姉ちゃんが大切であり。

大切な家族だ。

だからこそ絶対に私は。

そう思っていると手が震えた。

そしてお姉ちゃんを視界を歪ませて見つめる。


「お姉ちゃん。お願い分かって。私は不安でたまらない」

「...うん。良く分かる。だけど...」

「お姉ちゃん。男は敵だよ」

「...うん。分かる。本当に良く分かる。だけど...彼は本当に違うの」


何で分かってくれないの。

そう思いながら私はグッと拳を握ってから呆れて駆け出す。

玄関から飛び出した。

それから走って走って走ってそのまま公園にやって来る。

そして私は号泣した。


雨が降り出した。

嗚咽を漏らしながら口元に手を添えてしゃがむ。

そして地面を殴る。

土が付こうが。

もう何でも良い。


「...何で」


そう呟いていると「燕さん」と声がした。

私はビクッとしながら背後を見る。

そこに...さっきの男が居た。

ビニール袋を持って傘を差している。


つまり...買い物にでも行っていたのだろうけど。

まあどうでも良いけど。

何故居る。


「...何」

「...君を偶然見掛けたから来た」

「は?偶然見掛けたから来た?馬鹿じゃないの?アンタ」

「...少しだけ話が出来ないかな?」

「アンタと話す事は何もない」


すると土砂降りになった。

私はオドオドしながら立ち上がる。

それから帰ろうとした時。

雷の中、ソイツは傘を差し出した。

1本しかない傘を。


「何」

「これを差して行きな。...雨に濡れてしまうから」

「...馬鹿じゃないの。アンタが濡れるっての」

「俺はどうでも良い。...お前が濡れる事が心配だ」


そして私に傘と温かい飲み物を渡してきた。

それからその男は「じゃあな」と駆け出して去って行く。

私は唖然としながらその姿を見送るしか出来なかった。

残された傘と温かいココアを見ながら。


「...意味分からねぇ」


そんな言葉が口から出た。

それから舌打ちをしてからそのまま傘を差して帰った。

するとお姉ちゃんが傘を差して探していた。

私を、だ。


「...燕...」

「...」

「その傘...どうしたの」

「...お姉ちゃんの彼氏から貰った」

「...そのココアも?」

「そう」


私は傘のつかの部分を握り締める。

それから唇を嚙みしめる。

するとお姉ちゃんは「良く帰って来た」と私の頭を撫でた。

それから笑みを浮かべる。


「...怒らないの」

「怒らないに決まっている。...貴方は私の妹。そして私に暴言を吐くのは当たり前の事。信じられない人ばかりだったから」

「...」


そして私を見てから「濡れちゃう」と言いながらお姉ちゃんは私の肩をそっと抱いて家に戻る。

私は傘を見せる。

「彼が残していったから。今度返して」と言いながら、だ。

するとお姉ちゃんはとんでもない事を言った。


「ココアのお礼もしないと」

「...そうだね。確かに」

「...その為には燕も行かないと」

「私...!?」

「そう。当たり前」

「...でも私、アイツに暴言ばかり。それに会いたくもない」


「じゃあ燕はそのままお礼も無く居るつもり」と言ってくるお姉ちゃん。

私は「しかし暴力まがいの事をアイツに」と言うが。

お姉ちゃんは「それは彼なら許す」と笑みを浮かべる。

まさかの言葉に「え!?」と反応する。


「だ、だって私...アイツの胸倉を掴んだよ」

「...それは彼にとってもびっくりだけど。彼は絶対に許す。...彼は...優しいから」

「そ、そんな事。...だけど私、さっき暴言を。そんなの絶対に怒っている」

「...彼は理解している。貴方がそういう態度をするのを。彼は...全てを理解して私達に接する。絶対に」


私は愕然としながら話を聞く。

それから俯いた。

「お風呂入って」と言われたので私は「...はい」と言ってからそのままお風呂に入りに行った。

着替える最中に...私は眉を顰めて鏡を見た。

鏡に...アイツの言葉が過る。


「濡れちまうから」


「...有り得ない。アイツは悪人だ。きっとまた浮気する。お姉ちゃんを見捨てるに決まっている。ハハハ。それを考えたら楽...だ...けど」


だけど何だこの感情。

私はそう思いながら胸にある大きな斜めの傷跡を見る。

それはお姉ちゃんの元彼から受けたDV、つまり暴力の跡である。


胸を踏みつけられた。

お姉ちゃんにも当然暴力があったりもした。

ソイツが気に入らない時に。


なのに。


私はどうしたら良いのだ。

男は獣なのだ。

認識が崩れてしまう。

私は...男を信じられない筈なのに。


「...」


私は複雑な思いでブラを外してから下着を脱いでそのままお風呂に入る。

するとお風呂にお姉ちゃんが入って来た。

それから一緒に洗い始める。

その時に...お姉ちゃんに1つ聞いた。

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