私は...付き合う事を認めない
第11話 木橋燕(きはしつばめ)
☆
俺は笑顔の絶えない彼女を見る。
そしてそのまま目線を逸らしながら赤面する。
彼女は...俺が好きだとそう断言した。
それから「お返事は今は要らない」と言われた。
「...」
何というか俺は根性が無い。
その何故かといえば...アイツの事を引き摺っている。
浮気されたショックが俺を襲っている。
アイツの事なんぞどうでも良いのに。
そう思いながら用事があると望に言われ人込みを分けて先に帰っていると...目の前にソイツが現れた。
「...何の用事かな。律子。今度は」
「私を放って置いて幸せそうだね」
「楽しいね。...お前のせいで全て壊れた分」
「...そんな事、絶対に許さないよ。幸せになるなんて」
「...お前は何を言っている」
「私は彼に浮気された。...それで可哀想と思わない?」と言った。
何を言っているんだこのアホは。
思いながら「思わない。所詮そこまでだったという事だ。お前の男は」と答えながら律子を見る。
山柴律子(やましばりつこ)。
コイツの本名だが...コイツが現れてハッとした。
そうか俺は(望)という女子にこれほどまで惹かれているという事に。
「...私は貴方達を...許さない。幸せになるなんて」
「...逆切れも甚だしいなお前」
「逆切れじゃない。...決めたんだ。...私は貴方達の幸せをぶっ壊すって」
「それを逆切れって言うんじゃないか。...律子。...お前頭おかしいよ」
「頭おかしい?私が何でこんな目に遭うの?そっちの方がおかしいよね?」
コイツ話聞いているのか?
思いながら俺は「はぁ...」と溜息を吐く。
すると背後から「律子だっけ」と声がした。
その方角を見ると...望が居た。
「私の彼氏に近付かないで」
「...は?アンタ達付き合っているの?」
「...そうじゃない。今はまだ」
「いや。俺達は付き合っている」
そう言いながら俺は望を抱き寄せた。
望は「はい?」となりながら真っ赤になる。
それから俺を見る。
俺は「今分かった」と望を見てから律子を見る。
「俺は望が好きだ。...だからもう失せろ。...お前の負けだ」
「...!!!!!」
律子は歯を食いしばった。
それから「はぁ?」となる。
望は涙を浮かべた。
「...りゅ、隆一郎?」と言いながらだ。
俺は守る。
「...俺はお前の様なゴミとは縁を切る」
「木橋望の何処が良いの?訳が分からないんだけど」
「彼女はお前とは違う。一途だ」
「訳分からない。それだけ?」
「彼女は優しい。守りたい存在だ。お前の様な間抜けと違ってな」
「...」
律子はイライラしながら俺を見てくる。
俺は望を見る。
望は赤くなってモジモジしていたが我に返って警戒していた。
律子を見ながら、だ。
俺はその姿を見て柔和になりながら彼女を見る。
「という事で...お前の入る隙はない」
「...信じられない...私を捨てるなんて。スペックが良いのに」
「お前は外見だけだろう。俺は内面が好きなんだ。望の」
「...」
律子は悔しがる様に歯を食いしばる。
それから「もういい!」と言ってから立ち去って行く。
「でも覚えてなさい。絶対に幸せにしない」と言いながらだ。
負け犬の遠吠えか?
「...隆一郎。という事はどうなるの?」
「付き合うか。俺達」
「...!」
「俺はようやっとわかった。あのゴミ屑のお陰で気が付いた。...俺はお前に惹かれていたんだ」
「隆一郎...」
「好きだからこそ。付き合おう」
それから俺達はそのまま付き合う事になった。
その日、恋人同士になった。
でも問題はまだ山積している。
アイツが...何を仕掛けて来るか...。
キレた屑は怖いしな。
☆
「ふへへ...」
隆一郎に寄り添いながら私は間抜けな声を出す。
何というかこんなに甘々な感じは...生まれて初めてだ。
彼が愛おしい。
そして彼に触れ合いたい。
そう思いながら彼に触れる。
「...ベタベタだな」
「そう」
「...まあそれでも良いけどな」
「私は隆一郎が好きだから。こうしてベタベタしている」
「...」
そう言いながら歩いていると「お姉ちゃん?」と声がした。
顔を上げると...茶色の髪の毛のボブヘアーの...女子が居た。
パーカーを羽織っている。
そして私達を見てから目をパチクリしている。
あれ?
「燕?」
「...待って。そいつ誰?」
「...あ、この人は...私の彼氏」
「...燕...え?誰?」
「私の妹...だけど離婚して引き取られた妹」
私はそう説明しながら居るといきなり燕が襲い掛かる様に隆一郎の胸倉を掴んだ。
それから眉を顰める。
私は「!」となって燕に「止めて!」と言う。
すると燕は「アンタ...本当に彼氏として信頼出来る?」と言う。
数秒間沈黙する隆一郎。
「どういう意味なのか考えたけど...成程」
「は?」
「...君はお姉さんが心配なんだな」
「...」
その言葉に燕は突き飛ばす様に隆一郎を放した。
それから「お姉ちゃん。私は彼を全然信頼できない」と眼光を鋭くする。
まるで不良の様に、だ。
私は「...燕。今度は大丈夫。彼は...私の大切なヤドリギだよ」と説明するが燕は「どうだか」とまた隆一郎を睨んだ。
「...今までもずっとそうだった。裏切られたから」
「...」
「...お姉ちゃんを大切にしないなら今この場で殺す」
「...心に誓って俺は大切にする」
そう答える隆一郎。
燕は「はっ」と言ってからそのまま「お姉ちゃん。鍵貸して」と言ってくる。
私は隆一郎に「また」と言って帰る。
隆一郎は笑みを浮かべて手を振ってくれた。
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