第10話 I LOVE YOU
☆
私が捨てられた理由を彼が知りたがっている。
その事に私はぽつりと呟く。
「私は...彼達のお気に入りにならなかった。ただそれだけ」と。
そして「みんな私がとろいって言うから」と苦笑いを見せる。
すると彼は真剣な顔で聞いてくれた。
「...だけど貴方は違った。貴方は私を見ている。真剣に内面から想ってくれている。そんな人は初めて見た」
「そうなんだね」
「そう。...貴方はどうしてそんなに全てに優しいの」
「俺は妹が亡くなってからと思っている。ただそれだけだと思うよ」
「...そう」
そして私は全てを切り出すつもりで彼を見る。
「私は...実は発達グレーゾーンの発達障害がある」と言う。
すると彼は「...!」となる。
私はその様子に「私は片付けなどが...苦手な部分がある」と言う。
「...そうなんだね」
「片付けは疎いって言われた。今までもずっと」
「...うん」
「私は...その中で貴方に出逢った」
「...」
「...私を捨てないでほしい」と呟いてしまった。
すると彼は「そんな事はしない」と答えた。
それから私を見てくる。
私の手に彼は手を添えてくる。
「...俺は何があっても君を見捨てないよ」
「...有難う」
そう言いながら私は彼を見る。
彼は「...大変だったね」と言ってくれて労ってくれた。
私はその言葉に涙が浮かぶ。
それから「うん...」と本音を漏らした。
「...君は本当によく頑張った」
「...」
「これからはゆっくり歩みだしたら良いんだ」
「...有難う。...隆一郎」
それから私はお弁当箱を片していると電話が掛かってきた。
彼に、であるが。
私は「?」を浮かべながら彼を見る。
彼は苛ついた様な姿を見せる。
「...コイツをブロックするのを忘れてた」
「...じゃあまさか」
「そうだね...」
「...」
私は警戒しながら彼を見る。
そして彼は電話に出る。
暫く離してから彼は電話を一方的に切った。
それから「戯言だ」と呟く。
「...何があったの」
「ああ。戯言。ふざけた感じばっかりだよ」
「...そう」
「もう彼女とは通信を取らない。ブロックした」
「...隆一郎」
「うん」
「...その。大丈夫かな。彼女から...嫌がらせを受けないかな」
「それは俺が許さないよ」
そして彼は私の頭に手を添える。
ゆっくり撫でてきた。
私はゾクゾクしながらその感触を味わう。
私は目を開ける。
「...どっちにせよ俺はアイツを制御する義務があると思うから。...させない」
「そう」
「そう。...だから大丈夫。君に迷惑は掛けないよ。望」
「...そう」
私は頬に触れる。
それから赤くなって「隆一郎」と呟く。
隆一郎は「ああ」と言う。
私は...いや。
今なら良いかもしれない。
「...キス」
「...そうか...え?今なんて言ったの?」
「キスして」
「...はわ!?」
隆一郎は真っ赤になって「はい!?」となる。
私はお弁当箱を背中に持ってきた。
それから彼を見据える。
そして見上げる。
「...ま、待って。お付き合いして無いよ!そんなの...」
「私は貴方が好き。心から好きだと思う。...その分、記録を残したい」
「...歯磨きをしてからは?」
「そんなの必要無い。...私は...今が良い」
「...!」
私は赤くなったまま目を閉じる。
すると彼が私の肩を掴んだ。
それから私は目を開ける。
彼の顔が至近距離にあった。
私達は破廉恥と思うかもしれないが学校でキスをした。
「...暖かいね。隆一郎は」
「...こんな事をさせるなんて...困った子だな」
「私はあくまで隆一郎だからできる。隆一郎だから」
「...」
胸に手を添えながら私は隆一郎を見る。
そしてそのままハグをした。
隆一郎は困惑しながらもハグをしてくれた。
それから私は彼の腰に手を回す。
「...ねえ。隆一郎」
「...何でしょう」
「葉っぱが付いてる。頭に。しゃがんでくれる?」
「...え?葉っぱ付いてる?すまな...」
勿論全てが大嘘。
私はしゃがんだ彼の唇を奪った。
それからキスを交わす。
隆一郎は愕然としながら私を見る。
「葉っぱは!?」
「嘘に決まっている。...キスってこんなに心地いいものだったんだ」
「...君という子は」
「隆一郎。愛しています」
「もうそれ十分に伝わっているから。半端じゃないくらいにね」
「そう。だけど言葉じゃない。私はこうして伝えたい」
私はそう言いながら「私は誰にもキスをした事はない。...だからこれはファーストキス」と言う。
すると彼はボッと赤面した。
それから「そ、そう」と言い淀む。
その姿すらも愛おしい。
「...私がこうなったのは貴方の責任」
「...!」
「責任を取って下さい」
「...」
彼は鼻の下を拭う。
そして真っ赤になっていった。
私はその姿を見ながら柔和な顔をした。
それから私達は教室に戻った。
みんなには内緒の行為であった。
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