第10話 I LOVE YOU


私が捨てられた理由を彼が知りたがっている。

その事に私はぽつりと呟く。

「私は...彼達のお気に入りにならなかった。ただそれだけ」と。

そして「みんな私がとろいって言うから」と苦笑いを見せる。

すると彼は真剣な顔で聞いてくれた。


「...だけど貴方は違った。貴方は私を見ている。真剣に内面から想ってくれている。そんな人は初めて見た」

「そうなんだね」

「そう。...貴方はどうしてそんなに全てに優しいの」

「俺は妹が亡くなってからと思っている。ただそれだけだと思うよ」

「...そう」


そして私は全てを切り出すつもりで彼を見る。

「私は...実は発達グレーゾーンの発達障害がある」と言う。

すると彼は「...!」となる。

私はその様子に「私は片付けなどが...苦手な部分がある」と言う。


「...そうなんだね」

「片付けは疎いって言われた。今までもずっと」

「...うん」

「私は...その中で貴方に出逢った」

「...」


「...私を捨てないでほしい」と呟いてしまった。

すると彼は「そんな事はしない」と答えた。

それから私を見てくる。

私の手に彼は手を添えてくる。


「...俺は何があっても君を見捨てないよ」

「...有難う」


そう言いながら私は彼を見る。

彼は「...大変だったね」と言ってくれて労ってくれた。

私はその言葉に涙が浮かぶ。

それから「うん...」と本音を漏らした。


「...君は本当によく頑張った」

「...」

「これからはゆっくり歩みだしたら良いんだ」

「...有難う。...隆一郎」


それから私はお弁当箱を片していると電話が掛かってきた。

彼に、であるが。

私は「?」を浮かべながら彼を見る。

彼は苛ついた様な姿を見せる。


「...コイツをブロックするのを忘れてた」

「...じゃあまさか」

「そうだね...」

「...」


私は警戒しながら彼を見る。

そして彼は電話に出る。

暫く離してから彼は電話を一方的に切った。

それから「戯言だ」と呟く。


「...何があったの」

「ああ。戯言。ふざけた感じばっかりだよ」

「...そう」

「もう彼女とは通信を取らない。ブロックした」

「...隆一郎」

「うん」

「...その。大丈夫かな。彼女から...嫌がらせを受けないかな」

「それは俺が許さないよ」


そして彼は私の頭に手を添える。

ゆっくり撫でてきた。

私はゾクゾクしながらその感触を味わう。

私は目を開ける。


「...どっちにせよ俺はアイツを制御する義務があると思うから。...させない」

「そう」

「そう。...だから大丈夫。君に迷惑は掛けないよ。望」

「...そう」


私は頬に触れる。

それから赤くなって「隆一郎」と呟く。

隆一郎は「ああ」と言う。

私は...いや。

今なら良いかもしれない。


「...キス」

「...そうか...え?今なんて言ったの?」

「キスして」

「...はわ!?」


隆一郎は真っ赤になって「はい!?」となる。

私はお弁当箱を背中に持ってきた。

それから彼を見据える。

そして見上げる。


「...ま、待って。お付き合いして無いよ!そんなの...」

「私は貴方が好き。心から好きだと思う。...その分、記録を残したい」

「...歯磨きをしてからは?」

「そんなの必要無い。...私は...今が良い」

「...!」


私は赤くなったまま目を閉じる。

すると彼が私の肩を掴んだ。

それから私は目を開ける。

彼の顔が至近距離にあった。

私達は破廉恥と思うかもしれないが学校でキスをした。


「...暖かいね。隆一郎は」

「...こんな事をさせるなんて...困った子だな」

「私はあくまで隆一郎だからできる。隆一郎だから」

「...」


胸に手を添えながら私は隆一郎を見る。

そしてそのままハグをした。

隆一郎は困惑しながらもハグをしてくれた。

それから私は彼の腰に手を回す。


「...ねえ。隆一郎」

「...何でしょう」

「葉っぱが付いてる。頭に。しゃがんでくれる?」

「...え?葉っぱ付いてる?すまな...」


勿論全てが大嘘。

私はしゃがんだ彼の唇を奪った。

それからキスを交わす。

隆一郎は愕然としながら私を見る。


「葉っぱは!?」

「嘘に決まっている。...キスってこんなに心地いいものだったんだ」

「...君という子は」

「隆一郎。愛しています」

「もうそれ十分に伝わっているから。半端じゃないくらいにね」

「そう。だけど言葉じゃない。私はこうして伝えたい」


私はそう言いながら「私は誰にもキスをした事はない。...だからこれはファーストキス」と言う。

すると彼はボッと赤面した。

それから「そ、そう」と言い淀む。

その姿すらも愛おしい。


「...私がこうなったのは貴方の責任」

「...!」

「責任を取って下さい」

「...」


彼は鼻の下を拭う。

そして真っ赤になっていった。

私はその姿を見ながら柔和な顔をした。

それから私達は教室に戻った。

みんなには内緒の行為であった。

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