第9話 激甘
俺達はそのまま高校に登校してから...授業を受ける。
そして3時間目になった時。
教室のドアが開いた。
それから「よ~」と言いながらその少女が入って来る。
「...ああ。千佳か」
「ああ、とはなんじゃい。...私が来てやったんだから喜べ」
「いやいや。お前がこうしていきなり来てももう何も思わないぞ」
「そうか。ひっでぇ」
足立千佳(あだちちか)。
俺の幼馴染に該当する少女かも知れない。
いやまあ腐れ縁とも言える。
ボブヘアーの泣き黒子の有る様な活発な少女。
慕っている生徒が何名かいるので姉御肌と言えるかもしれない。
俺とは先ほど言った通り腐れ縁の関係だ。
「んで。何をしに来たのか」
「ん?それは勿論。アンタが何だか彼女が出来たって噂だから」
「どこ情報だよ。無いよ」
「それは無いな。...木橋望さん。...アンタいつからあの子と知り合いになったの」
「何で知っているのかな」
「それは勿論。一緒に歩いていたって噂だから」
少しだけ複雑な顔をする千佳。
「私としてはあのクソ女と同じ様な感じになってほしくない」と言った。
俺はその言葉に「...」となってから「そうか」と横を見る。
千佳は「隆一。(あだ名)取り敢えず言うけどさ。...私は...木橋さんも怪しいから」と言ってくる。
俺はその言葉に肩を竦めた。
「...無いよ。...大丈夫だ」
「でも...あのクソ女もそうだったけど大丈夫じゃ無かった」
「...そうだね。...アイツは...あんなお淑やかでも股を開く屑だったから。だけど...望は違うよ」
「...あれ?下の名前で呼び合う仲なの?」
すると背後から「そう」と声がした。
いつから居たのか知らないが望が居た。
望は千佳を見ながら「...」となる。
千佳は「...木橋さん。一つ聞いても良い?」と聞く。
「...何」
「貴方は隆一が好きなの?」
「...隆一郎の事は...うん」
「...そう」
「...私、隆一郎を見て思った。髪の毛も染めるのを止めるって」
「...」
千佳は「...そうなんだね」と言う。
教室がザワザワしていた。
「え?木橋って髪の毛染めるの止めるのか?」という感じでだ。
俺はその言葉を聞きながら居ると望がその男子に向けてかどうかは知らないが。
こうはっきり聞こえる様に切り出した。
「私は隆一郎が好き。だから私は髪の毛を染めるのを止める」
「...」
「...それだけ宣言したら良い?足立さん」
「...そうね。...彼の横に立つぐらいならそれぐらいしてもらわないと」
「そう」
千佳は「...確かに違うね。彼女は」と苦笑した。
それから千佳は「あとはお二人さんで」と去って行く。
俺はその姿を見届けてから望を見る。
すると望は何を思ったか。
抱き締めて来た...が!?
「...な、何をしているのかな!!!!?」
「ぬくもりを感じに来た」
「ぬくもりを感じに来たって!?え!?」
「それだけの用事。...隆一郎」
教室が「きゃーきゃー」となる。
俺はその様子をながら嫉妬する男子を見つつ。
彼女をゆっくり抱き締めた。
それから頭を撫でる。
「そうなんだね」
「...そう。猫は充電しないといけません」
「いや。充電って。...恥ずかしいんだけど」
「...私は全く恥ずかしくない。...むしろ誇らしい」
「...」
俺は抱き締める彼女の背中を優しく叩きながらそのまま離れるまでジッとしていた。
そしてこの日...俺は望と付き合っているという誤解が広まってしまった。
だけどまあ望が俺を好いているのはガチなので訂正する気も無いが。
☆
屋上にやって来た。
それから木橋さんがお弁当箱を2個取り出す。
本気で作って来たのか。
そう思いながら俺は青い包みに入ったお弁当を受け取る。
「本当に作ったんだね」
「...そう。恋人らしい事もしたい」
「まだ付き合っている訳じゃ無いんだけど...」
「でももう以心伝心だから」
「い、以心伝心!?」
俺は赤くなりながら望を見る。
望は真顔のままだったが何か嬉しそうな感じをしている。
俺はその姿を見ながら柔和になる。
そして青い包みを開けてみた。
「これは...」
「冷食を減らす様にはした。だけど一部冷食になった。だけど9.9割作った」
そこにはきんぴらごぼう、鮭、卵焼きなどが並んでいる。
俺はその光景を見てから唖然としていた。
何故なら...あまりにも美味しそうだったからもあるけど。
時間がかかったんじゃないかという事が...。
「待って。9割作ったんだよね?いつから作っていたの?」
「結構前。朝5時ぐらい」
「まさか...そんな事をしてまで作るなんて」
「私が目指したい目標がある。...私、その為なら努力を惜しみたくない」
「...」
俺は彼女を見る。
望は俺の手を握ってきた。
それからモジモジしながら「そ、それから」と言う。
そして小さくカットされた卵焼きを出す。
え?
「はい。口を...開けて」
「え?...ぇ!!!!?」
「は、早く」
「...う、うん」
そしてあーんと言ってから望は俺の口の中に卵焼きを入れる。
咀嚼するが。
味が無いんだが、というか感じる暇が無い。
どうしたら良いのだ。
この子...滅茶苦茶甘い!!!!!
「美味しい?」
「...美味しい...というか味が無くて...その。あまりに緊張してしまって」
「そ、そう」
「そう」
「...」
「...」
緊張故か全く会話が無くなる。
しかし...何故だろうか。
彼女が捨てられた理由が分からない。
何故こんなに甘くて良い子を捨てるんだろう。
そう思いながら俺は赤面している望を見た。
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