第5話 恋に落ちる時


何故か私は男の子の家に居る。

それも彼氏と別れてから初めて別の男の子の家に。

私は何をしているのだろうか。

そんな事を思いながら私は目の前の目を><にしている男の子を見る。

向かい合ってリビングで座っている。


「?...どうしたの?」

「ご、ごめん。言葉が出てこない。彼女以外の女の子を家に招いたのは初めてで」

「...そう」


ああ。そうなのか。

そう思いながら私は考える。

そして周りを見渡して話題を探す。

すると...写真が目についた。


「...あれはお父さんお母さん?」

「え?...ああ。そうだね。お父さんとお母さんだよ」

「...それと...別の女性が写っている」

「...あれは妹だよ」

「妹さん?」

「...病死したんだある日」


その言葉を受けて私は「!」となる。

それから私は「そう」と返事をしながら彼を見る。

彼は「...妹の名前は霧島八重(きりしまやえ)って名前だったんだけど...朝起きたら冷たくなっていてね。...幼いながらも心臓発作だった」と言う。

私は無言で考え込んだ。


「...余計な言葉を聞いた」

「いや。余計じゃない。有難う。聞いてくれて」

「...私も幼い頃からの飼い猫がガンで死んだ。だから家族を失う気持ちはよく分かる気がする」

「...そうか」

「名前はシロだった。白い飼い猫だったから」

「...その子は...幼少期から?」

「そう。...丁度...私が産まれた頃から」


言いながら私は紅茶を飲む。

彼が淹れてくれた美味しい紅茶。

温まる。

私は波面を見ながら彼を見る。


「...そっか。...でも君に愛されて幸せ者だね。その子」

「...何でそれが分かる?」

「単純に君は愛するのが得意だ。全てを」

「...」


私はその言葉を受けてから彼氏を思い出す。

「お前の考え全然わかんねぇよ」という言葉を、だ。

その言葉に私はふさぎ込んでしまった。

だけど彼は違う。


「...霧島くん」

「うん?」

「...貴方は全然違う。何故?」


そう聞いてみた。

すると彼は「うーん」と考えてから「それは男として違うって意味?」と私に向いて笑みを浮かべる。

私は「貴方は私の彼氏だった男とえらく違いがある。何故?」と聞く。

つぶらな瞳だがそれを向けてみる。


「...君は個性がある。良い個性の良い人だ。...だから俺も自然に君に笑みを浮かべれるんだ」

「...!」


私は衝撃を受ける。

それから彼を見つめる。

彼は私を見ながら柔和になっている。

私はその姿をまた見つつ「...」となる。


「...私はそんなに良い人じゃ無い」

「それは謙遜だ。...君は本当に良い女性だよ」

「何故そう言えるの」

「...君は動物に優しいから」

「だけど金髪だから」

「それは訳があると思う。確かに金髪って何だか俺は恐ろしいなって思った。だけど君は違う」


私は動悸が激しくなる。

それから自然と視界が涙で視界が歪み始める。

すると彼は大慌てになった。

「え!?だ、大丈夫?」という感じでだ。


そんな事を言われたのは初めてだった。

内面を見てくれた男性は初めてだったのだ。

私の外見で彼氏は付き合ってくれた。

だからこうして私を大切にしてくれたのは...初めてだった。


「...何で...泣いているの。私」

「...」

「...貴方の言葉。私はとても嬉しい」

「...君は疲れているんだよ。きっと。木橋さん」

「男の子なんて所詮は外見しか見ないって思っていた。貴方は違う。...貴方は...違う。こんな私の内面を評価してくれる」

「まあ妹が亡くなってから...色々な人を見てきたから。...そういう側面もあるかも」

「...」


私は。

こんな私はこの世に要らないのかと思っていた。

だけど彼はそれを打ち砕いている。

私は彼を見ながら思わず立ってしまったが椅子に腰掛けた。


「...私...彼氏に呆れられていた。...何も出来ない女子だって」

「そうなんだね」

「そして疎いって」

「...そうなんだ」

「...そして捨てられた。いつもそうだけど」

「...うん」


全てを吐露しながら私は自嘲する様な感じで胸に手を添える。

だが彼は全てを聞いてくれた。

暖かなその顔で。

私はそんな彼を見ながら俯く。


「...頑張ったね。木橋さんは本当によくやってる」

「...でも私、疎いって言われた。絶望的に酷いって」

「それはそいつらが思った事だ。だから言わせて放って置けば良い。...君は君らしく生きたら良い」

「なぜそこまで言えるの」

「...俺がそうしてきたから、かな」


彼はそう言いながら「がむしゃらに生きて来たから、かな」と苦笑する。

私はその顔を見ながら「...」となっていたが。

段々とカァッと顔が熱くなっていく感じがした。

心臓がどくどくと波打っている。


「...木橋さん?」

「な、んでも、ない」

「???」


私は俯いてから口元に手を添える。

何だこの感情は。

もう...2度と男性に関わらないと決めていたのに。

なのに。

この感情はまさか...いやでもまさか!?


「...具合...悪い?」

「...違う」

「...え?」

「...お、お手洗いを貸して」

「え?それは構わないけど...」


急いで私はトイレを借りる。

それから便器に腰掛けた。

心臓が...痛い。


まるで血流が逆流するかの様な。

説明になって無いけど。

血圧が一気に急上昇している...。


「...私は...もう二度と。(スキ)はしない筈だったのに」


そう言いながら私は口元に手を添えたまま真っ赤になっていった。

これはマズイ...。

心臓の動機が収まらない。

少しだけ時間を置くか。

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