第5話 恋に落ちる時
☆
何故か私は男の子の家に居る。
それも彼氏と別れてから初めて別の男の子の家に。
私は何をしているのだろうか。
そんな事を思いながら私は目の前の目を><にしている男の子を見る。
向かい合ってリビングで座っている。
「?...どうしたの?」
「ご、ごめん。言葉が出てこない。彼女以外の女の子を家に招いたのは初めてで」
「...そう」
ああ。そうなのか。
そう思いながら私は考える。
そして周りを見渡して話題を探す。
すると...写真が目についた。
「...あれはお父さんお母さん?」
「え?...ああ。そうだね。お父さんとお母さんだよ」
「...それと...別の女性が写っている」
「...あれは妹だよ」
「妹さん?」
「...病死したんだある日」
その言葉を受けて私は「!」となる。
それから私は「そう」と返事をしながら彼を見る。
彼は「...妹の名前は霧島八重(きりしまやえ)って名前だったんだけど...朝起きたら冷たくなっていてね。...幼いながらも心臓発作だった」と言う。
私は無言で考え込んだ。
「...余計な言葉を聞いた」
「いや。余計じゃない。有難う。聞いてくれて」
「...私も幼い頃からの飼い猫がガンで死んだ。だから家族を失う気持ちはよく分かる気がする」
「...そうか」
「名前はシロだった。白い飼い猫だったから」
「...その子は...幼少期から?」
「そう。...丁度...私が産まれた頃から」
言いながら私は紅茶を飲む。
彼が淹れてくれた美味しい紅茶。
温まる。
私は波面を見ながら彼を見る。
「...そっか。...でも君に愛されて幸せ者だね。その子」
「...何でそれが分かる?」
「単純に君は愛するのが得意だ。全てを」
「...」
私はその言葉を受けてから彼氏を思い出す。
「お前の考え全然わかんねぇよ」という言葉を、だ。
その言葉に私はふさぎ込んでしまった。
だけど彼は違う。
「...霧島くん」
「うん?」
「...貴方は全然違う。何故?」
そう聞いてみた。
すると彼は「うーん」と考えてから「それは男として違うって意味?」と私に向いて笑みを浮かべる。
私は「貴方は私の彼氏だった男とえらく違いがある。何故?」と聞く。
つぶらな瞳だがそれを向けてみる。
「...君は個性がある。良い個性の良い人だ。...だから俺も自然に君に笑みを浮かべれるんだ」
「...!」
私は衝撃を受ける。
それから彼を見つめる。
彼は私を見ながら柔和になっている。
私はその姿をまた見つつ「...」となる。
「...私はそんなに良い人じゃ無い」
「それは謙遜だ。...君は本当に良い女性だよ」
「何故そう言えるの」
「...君は動物に優しいから」
「だけど金髪だから」
「それは訳があると思う。確かに金髪って何だか俺は恐ろしいなって思った。だけど君は違う」
私は動悸が激しくなる。
それから自然と視界が涙で視界が歪み始める。
すると彼は大慌てになった。
「え!?だ、大丈夫?」という感じでだ。
そんな事を言われたのは初めてだった。
内面を見てくれた男性は初めてだったのだ。
私の外見で彼氏は付き合ってくれた。
だからこうして私を大切にしてくれたのは...初めてだった。
「...何で...泣いているの。私」
「...」
「...貴方の言葉。私はとても嬉しい」
「...君は疲れているんだよ。きっと。木橋さん」
「男の子なんて所詮は外見しか見ないって思っていた。貴方は違う。...貴方は...違う。こんな私の内面を評価してくれる」
「まあ妹が亡くなってから...色々な人を見てきたから。...そういう側面もあるかも」
「...」
私は。
こんな私はこの世に要らないのかと思っていた。
だけど彼はそれを打ち砕いている。
私は彼を見ながら思わず立ってしまったが椅子に腰掛けた。
「...私...彼氏に呆れられていた。...何も出来ない女子だって」
「そうなんだね」
「そして疎いって」
「...そうなんだ」
「...そして捨てられた。いつもそうだけど」
「...うん」
全てを吐露しながら私は自嘲する様な感じで胸に手を添える。
だが彼は全てを聞いてくれた。
暖かなその顔で。
私はそんな彼を見ながら俯く。
「...頑張ったね。木橋さんは本当によくやってる」
「...でも私、疎いって言われた。絶望的に酷いって」
「それはそいつらが思った事だ。だから言わせて放って置けば良い。...君は君らしく生きたら良い」
「なぜそこまで言えるの」
「...俺がそうしてきたから、かな」
彼はそう言いながら「がむしゃらに生きて来たから、かな」と苦笑する。
私はその顔を見ながら「...」となっていたが。
段々とカァッと顔が熱くなっていく感じがした。
心臓がどくどくと波打っている。
「...木橋さん?」
「な、んでも、ない」
「???」
私は俯いてから口元に手を添える。
何だこの感情は。
もう...2度と男性に関わらないと決めていたのに。
なのに。
この感情はまさか...いやでもまさか!?
「...具合...悪い?」
「...違う」
「...え?」
「...お、お手洗いを貸して」
「え?それは構わないけど...」
急いで私はトイレを借りる。
それから便器に腰掛けた。
心臓が...痛い。
まるで血流が逆流するかの様な。
説明になって無いけど。
血圧が一気に急上昇している...。
「...私は...もう二度と。(スキ)はしない筈だったのに」
そう言いながら私は口元に手を添えたまま真っ赤になっていった。
これはマズイ...。
心臓の動機が収まらない。
少しだけ時間を置くか。
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