第2話 5匹の猫と?

彼女に浮気されてから何でこんな事になるのか分からない。

何故か俺は浮気相手とは違う女の子と歩いている。

そして傘を貸してくれたお礼として連れられて来た場所は...猫カフェだった。

俺は「?」を浮かべながら木橋さんを見る。

意外な展開だった。


「ここが木橋さんがお礼をしたい場所なの?」

「そう。...私が私自身を取り戻した場所でもあるし...その...嫌な事もあったけどお気に入りの場所でもある。だからお礼の場所に選んだ」

「...???」

「...まあそんな事はどうでも良いけどね。行こう」


そして彼女はビルの階段を歩く。

俺はその後ろを付いて行くと彼女はカランカランと鳴るドアを開けた。

それから中に入るとそこに老夫婦が居た。

どうやら猫カフェではあるが個人経営っぽい感じだ。


「田中さん」

「こんにちは。...あれ?其方さんは?」

「私の知り合いです」

「そうなんだ。...ゆっくりしていってね」


そんな老夫婦の周りに猫が5匹ほど居る。

茶色だったり黒だったりする。

猫は「にゃん」と言いながら俺達に遊んでほしげに見てくる。

というか木橋さんに先ず行く。


「のぶなが。こんにちは」

「のぶなが?」

「この茶色の子はのぶなが。黒は、みつき」

「...へぇ」

「この白いのは、ばにら」

「...何でも知っているんだね」


「というかこのお店に暇な時によく来る」と木橋さんは笑みを浮かべる。

俺はその姿を見ながら「そうなんだね」と柔和になった。

それから木橋さんは嬉しそうに「で。こっちの茶色と黒の子は...きゃらめる。こっちの白と黒は、いご」と言う。

囲碁か。

俺は意外な事にクスッと笑う。


「何か可笑しい?」

「...いや。最後だけ何で囲碁なのかなって思って」

「囲碁は...何でだろうね。充美さん」

「そりゃ囲碁の様な色だからよ!」

「そ、そうなんですね」


力強い説得に俺は気圧される。

だけど、そうなんだな、と思い笑みを浮かべる。

それから見ていると充美さんという女性が「何か飲む?」と言ってくる。

え?ここってカフェじゃ?


「まあカフェだけど...本当に何かスナックみたいな場所だし」

「スナックに入った事無いです」

「そうだぞ。充美。無理がある」

「まあ分かりやすく言うとフリースペースみたいな感じよ!アッハッハ」


そして充美さんは「キャラメルマキアートを作るわね!」と勝手にメニューを決めて去って行った。

田中さんが苦笑しながら後を追う。

「じゃあ待っていて」と言いながら、だ。

そうなると2人きりなんだが。


「...木橋さんは...」


ポツリと出た。

そこまで言ってから俺はハッとして口を閉じる。

すると木橋さんが俺を見ている事に気が付く。


「?」という感じで、だ。

俺はその姿に真っ赤になりながらそっぽを見る。

すると木橋さんに、ばにら、が寄って来た。


「よしよし」

「...」


危ない。

何だか危険な事を聞こうとした。

なんてこったい。


聞こうとしたのは「昨日何で泣いていたの」という事だ。

馬鹿じゃ無いのか俺は。

失礼だな。

そう思っていると擦り寄って来た。

いご、が。


「良い子だな」


そう言いながらいごを撫でる。

するといごは「にゃーん」と言いながら更に擦り寄って来た。

俺はその可愛さに圧倒されながら撫でる。

そうしているといつの間にかジッと木橋さんが見てきていた。


「き、木橋さん?」


金髪の長髪。

だけど化粧は一切してない様な瞳。

猫の様な瞳が俺を見る。

大きな目だな。というか滅茶苦茶な美少女だ。

等と話を逸らすが何でこんなに見てきているのだ。


「凄い懐いている」

「そ、そうだね」

「...凄い才能だね」

「才能っていうか...」

「...前の彼氏はみんな嫌っていた。嫌がっていた」

「...?!」


ポツリと呟く。

木橋さんはハッとした。

そして首を振る。

それから「...ゴメン何でもない」と言う。

え?彼氏...?


「木橋さん...もしかしてその。何か。...彼氏さんが居るの?」

「...聞こえちゃった?」

「そう...だね。ポツリとだったけど声が大きかった」

「...」


木橋さんは眉を顰めていた。

俺を再度見て口を開こうとする。

だがその前に充美さんが「はいよー!!!!!」と言ってキャラメルマキアートを持って来てしまった。


そして俺は聞きそびれた。

木橋さんはかなりホッとしていたが何を言おうとしていたのだろうか。

それが気になってしまった。

だけど本人が言わないならそれはそれで良いのかもしれないが。

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