第9話 パリセル王国崩壊序曲(ミーナ視点)

親友からこの地位を略奪するにあたって、特に頑張ったという記憶がない。

親友のそばにいて、親友はずっと私にお妃教育ということを陰ながら教えてくれたから。


親友は気立てが良くって頑張り屋で、表面だって決して弱音を吐いたりしなかった。

王立学院の初等部からずっと一緒にいて、私の家がとんでもないことになって、私の周りから人間が離れていっても、その親友はずっと私の傍らにいてくれたし陰で手助けをしてくれた。貴族から平民になってまた貴族の養子になるというプロセスを経て

私は、貴族のことが心底嫌になっていた。

嫌な理由をあげたらきりがないので、ここでは口にはしない。

それと同時に貴族の腐敗度と王族の腐敗度が比例していることとはどういうことなのだろうか?


王族は国を治めるために孤独であり潔癖であり、至高の存在であれ!とはこのパリセル王国の始祖の言葉で代々受け継いできてる・・・そう信じていたのに。

私の家はてっきり貴族の陰謀で奪われたと思ったのにその裏で王族が手を引いていたとは・・・。いやはや・・。

・・・王族に復讐してやろうと思ってどこが悪いのだろうか?


お妃候補として、ずっと幼い時からお妃教育をしてきた親友はもっとだろう。

もっとひどいものを見てきただろう?それなのに陰で泣いても表に立つ時は

泣いていたことを微塵に感じさせない表情を見せた。

私は親友が泣いていたということも陰で言った悪口も全て覚えている。

大事な親友を傷つけた。それだけでも王族にいいイメージはない。

そこに私の家族を奪った。なんも変哲のない一貴族の平和な家族を。

私の心は王族に一矢を報いたい・・。その気持ちしかなかった。


だが、一介のなんも力もない私に何ができたというのだろう?

だから、私は親友に話を持ち込んだ。

親友は私の話を聞いて、最初は反対をした。その反対を押し切ったのは私。

そこからは・・私の計画通りに物事が運んだ。

私が奪い取った王太子様は本当、頭が大変よろしくないからかもしれない。


でもごめんね。親友に一つだけ謝らなければいけない。

「殺したらダメよ。」

それはどうも守れなかった。

だが安心して欲しい。自分では殺しはしない・・。


自分が美しくなるためなら、どんな外道なこともする王妃には、その貪欲さに目につけて、”ますます美しくなる魔法のような化粧品”をプレゼントした。

ただ。この化粧品には注意が必要なのだ。この化粧品はある毒を使っております。

使いすぎるとその毒に身を侵されますが、それでもお使いになりますか?

と私は確かに言った。

さすがあの馬鹿(王太子)を産んだ女だけある。

注意をしたのにも限らず、化粧品を使い込んだ結果どうなったか。

ふふふ・・・。見るも無惨な異形に成り果てた。

私はチラッと首輪をつなげて飼ってるものに目を向ける。

「本当。あなたはこれがお似合いですこと。」


王太子の方はもっと簡単だ。あんな下手の遊戯でよく自分は女の気持ちを理解してるって周りに吹聴していたなと思う。人の親友を傷つけて、王太子という身分で好き勝手女に手を出した人間にはとてもふさわしいものだと思う。

馬鹿だと余計なことを考えないで計画できるからいい。

その計画を実行するために私はどんな下手な遊戯の前で懸命に演技をした。

そして、あのバカは一通り自分が絶頂に至ったら、ベッドテーブルに置いている果実水を一気飲みする習慣がある。

私は、そこにちょっと不思議なクスリを盛ったのだ。

このクスリを手に入れるのには少し苦労したが、そんな話は必要ないだろう。

このクスリを飲むと、三日間熱が出る。熱が引いたらそれで終わりというわけではない。むしろここからが本番だ。熱が引いたら、今度は下の部分が木になるのだ。

そして、徐々に下半身が木になっていく。

そして、一週間後に植物になるのだ。

私は部屋の片隅に置いてある一本の植木を見る。

「どのようなお気持ちですか?一本の木になった感想は?ああ聞いても声は出ませんわよね」


そしてこの国の王にはとびっきりのプレゼントをこれからする。


王妃も王太子も謎の行方不明になってるという王宮内は一気に雰囲気が暗くなってる。

様々な噂が流れているが、一番信憑性が強い噂は、王妃は贅沢のしすぎで国費を使いすぎて、流石にこれ以上使うのはよしとしない王様が自ら王妃を監禁させた。

王太子は、女の尻を追いすぎて性病を患って人の目に触れられなくて王宮の奥で生活してる。

もちろん。これは全部私が意図的に流した噂だ。


「ああ・・王妃も王太子も一体どこにいってしまったのだ。

ミーナ君は知らなかったのか?」

妻と子供がいないことを嘆きつつも私の膨らんだ胸を揉んでる時点で

心配してることなんて一切ない。

この男は自分のことしか興味ないのだ。

色仕掛けをしてる私も大概な女だが、これも計画の一つだと言えばいいだろう。

この計画を実行するために、私は差し違っても構わないと思っている。

でも、私はわがままな人間だから、必ずこの計画が終わったら親友の元に向かうって決めているのだ。

親友に一目会うまでは、絶対に死ねない。ただ心配事がある。こんなに汚くなった私でもあってくれるだろうか??


「王様。このお部屋寒いですわ!暖炉の前にある『木』をくべてくださりませ。」

「おお・・そうだな。少し待っておれ。」

王様はなんも思わずに、暖炉の前にある木を燃やし始める。

「と・・父様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっーーーーーーーー!」

主寝室に王太子の断末魔の叫びが上がる。

「お・・王太子の声が暖炉から聞こえたが・・。気のせいか??」

いや。気のせいではない。あなたは自分の息子を自分の手で燃やしたんだよ。

そう、あの木は燃える時に断末魔の声を上げるのだ。

私は素知らぬ顔で王様に言った。

「いいえ気のせいではないでしょうか?」

「うむ。そうだよな。全くあのバカ息子どこの娼館に入り浸っているのか・・。」

「本当ですわね・・。早く帰ってこないと私結婚できませんわ。」

「おや?お前は私のことが好きではなかったのかな?」

「王様も好きですけれども、王妃様がいらっしゃるではありませんか?

ですから、私が結婚するのは王太子様だけですわ。」

「・・お前も悪い女だな。本当にリリアンヌの親友なのか?」

「ええ・・私は悪い女ですわ!悪い女ですから親友から王太子を奪い取りましたの。」

王様と私はお互い笑い合う。

「そうだ!王様。今日は一風変わった遊戯をしませんか?」

「ほう・・どんな遊戯だ?」

「少しお待ちくださりませ。」


私は一旦王様の主寝室を出て、自分の部屋に行き、”首輪に繋がってる異形”

を引きずって、王様の主寝室にまた向かう。

「お!なんだこの気持ち悪い生き物は・・。」

「王様。これは世界で数匹しかいないと言われる。狗と呼ばれるものですわ。」

「おー!そんな珍しいものなのか!この毛むくじゃらで顔もぐちゃぐちゃになって面妖な姿よのう。」

王様は物珍しさで狗に手を差し出したら、狗は苛立った声をあげて王様の手を噛んだ。

「な・・何をする!!!」

「王様!!大丈夫ですか??大変!!この狗。珍しい生き物なのですが、それと同時に世にも恐ろしい病原体を持ってると聞いたことありますわ!!」

「そ・・そうなのか??」

「どうしましょう!わたくしのせいだわ・・わたくしが王様の遊戯を楽しもうとしたばかりに・・どうしましょう・・どうしましょう・・どうしましょう・・。」

私はだんだんと息を荒くしていって発作の状態を起こしていく。

「其方のせいではない・・ど・・どうすればいいんだ。」

私は発作状態を装いながら、王様にいう。

「た・・確か・・・。この狗を殺した・・・血を塗るといいと・・。」

「こ・・殺すのだな!わかったぞ!!」

王様は剣を取り出して”狗”を殺した。

「王様・・・・は・・やく・・殺した・・」

私は迫真の演技を続けながら、私にこんな才能があったのかと他人事のように思う。

王様は私の声に殺した狗の血を傷口に塗った。


「ふふふ・・王様。本当に塗ったのですわね。」

「え?な・・うわ!これはなんだ?どうして私が狗みたいな姿になっていってる?

お前・・騙したのか!!!」

私に攻撃をしようと剣を取り出しても苦しみ出して剣を放り投げた。

「いいえ・・。騙しておりませんわ。実際に傷は治ってるでしょう?ねえ?王様。

わたくしの本当の名前はミナルス・エンデと申しますの。エンデ家の人間といえばおわかりますでしょうか?」

「お前・・エンデ家のものだったのか!!」

「ええそうですわ・・。あなたたちが取り潰したエンデ家です。

私たち一家あの事件以降家族がどうなったかご存知ですわよね?

まさか、エンデ家のものが生き残っていたって知らなかったみたいですわね?」

私は苦しんでる王様に冷ややかな目を向けて手をパンと叩いて面白そうにいう。

「そういえば、王様が燃やしたあの木。あれ王太子様なんですよ。王様が殺した狗。あれは王妃様です。ご自分の手で葬って今度はご自分が異形になっていくのはどのようにお思いかしら?」

王様は何かを言ってるけど、異形になってるから何て言ってるかわからない。

何か私に攻撃しようとしているけれど、まだ苦しいのだろう。私にまで攻撃が届かない。

「それではごきげんよう。みなさま。」

私はカーテシーをして部屋を出た。


王様もいなくなったと分かるまで時間がない。

私が王宮を早足で歩いてると、王様の護衛騎士と王妃様のメイドが私に小走りでついてくる。

「ミーナ様。全てが終わったんですね。」

「ええ・・今からリリアンヌに向かいますわ。」

「わかりました。ただいま準備します。お二方失礼します。」

護衛騎士が私とメイドを抱えて、近くの窓から飛んで地面に降り立ってそのまま

走っていく。

時間は5分くらいだろうか?メイドさんは護衛騎士に指示を出して王宮の裏の森にいく。

「ローゼ様から預かってるこの魔導車でリリアンヌの森に向かいます。」


私たちはその魔道車に乗ってリリアンヌにむかった。



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婚約破棄されたので全力で家族と辺境村へ逃げ出します〜辺境村から始まるほのぼのライフ(ちょっとチートあるかも)〜 K0壱 @honobonotoao

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