第5話 その頃パリルス王国では。(ジャクソン伯爵家。マクリュール公爵家視点)
「はい・・。はい。そうですか。アダムス様くれぐれもお気をつけてくださりませ。
私もです!!私もアダムス様にお会いできる日を楽しみにしております。」
魔導通話機をテーブルにおいて、そっとため息をつきました。
母様と父様がお茶を楽しんでいるところに私もお邪魔します。
「父様。母様。アダムス様から連絡がありましたわ。無事に逃亡を楽しんでいるみたいです。」
「アダムスちゃんから連絡があったのね!無事でよかったわ。」
「ユリウスが無事ならそれでいい。」
「もう!あなたったら。ユリウス至上主義もいい加減になさりませ。
アダムスはユリウスの大事な大事なご子息でしょ!!それにその大事なご子息様と私たちの娘が結婚するのでしょ。」
「うむそうだ。」
本当に父様は・・・。痩せ型無表情必要最低限な言葉しか発しない父様と少しふくよかで表情がコロコロ変わって口を開いたらおしゃべりが止まらない母様と貴族には大変珍しい恋愛結婚と聞いていますが、毎回二人がどのように恋愛して育んでいったのか不思議です。
「それにしても、シャーリちゃん。アダムスちゃんとこんなに会ってない日って初めてじゃないの?寂しいでしょう??うふふふ・・。」
んもう!!母様ったら・・。寂しいですよ。
「早くアダムス様に会いたいです。」
「早くユリウスに会いたい。」
あらあら父様と気持ちがかぶってしまいました。
母様はそんな父様に冷たい視線を向けてます。
「あなたのつぶやきなんてどうでもいいんですのよ。ちっとも可愛くないし。」
「ホリーちゃん。ひどい。」
ふふ・・。父様と母様は本当に仲がいいですね。
「父様。母様。そろそろ王都を出る準備をなさらないといけないですわね。」
リリアンヌの森についたら魔導通話機に連絡がきます。
その連絡が来たら魔法陣と魔法陣が繋がって、パリルス王国から扉の向こう側に
リリアンヌの森へ行けるというわけです。
魔法陣が持つ時間は3時間。その間に必要なものを運んでしまいます。
3時間経ったら、魔法陣は自然消滅するようになっていますので、誰にも気づかれずにこの王都から抜け出せるというわけです。
しかし・・本当にこの国は終わってしまってますわね。
まさか女王様があんなことをしていたなんて・・。
第二王太子がああなら親も・・。
あら?これって不敬罪ですね。
私は今朝刷られたばかりの新聞と号外を見て、深いため息をつきました。
魔導通話機から連絡がありました。今度は何ということでしょう。
アダムス様のお顔が映ってます。慌てて受信します・
「シャーリー。待たせてすまない。今から魔法陣を開くから準備してくれるかい?」
「アダムス様。お待ちしておりましたわ。お声を聞くだけでも嬉しいのに、お顔を見られるなんて・・。」
「あれ??説明していなかったかな??」
「説明・・・。受けたかしら??」
アダムス様と私はお互い首を傾げながらくすくすと笑ってしまいました。
「まあ。いいや。あともう少しで会えるね!!たくさん話したいことがあるんだ。
こっちで待ってるからね。」
「はい。すぐにそちらへ向かいます。」
魔導通話機を切りました。
「お嬢様。魔法陣が光りました。ご準備してくださりませ。」
専属侍女のアカリが私の部屋に来ました。
魔法陣が光った!!さあ。これから3時間が勝負です!!
「アカリ。運べるものをさっさと運びましょう。」
ああ・・。やっとアダムス様にお会いできるわ!!
〜マクリュール公爵家視点。〜
「ああ。任せろ!こっちは万事大丈夫だ。では切るな。次は魔法陣の時な。」
俺は開発した魔導通話機を切って、家族のもとに向かう。
マクリュール公爵家は代々パリルス王国の”武”の部分を担当していた。
代々騎士を輩出する家柄だ。
突然変異というべきか、騎士よりも魔導具が三度の飯より大好きな俺が生まれてしまった。
だが、騎士の訓練も大好きだった。大好きだったのだが、魔導具を開発するのがもっと好きだった。
そして王都学校でアダムスに出会う。代々宰相を輩出しているリリアンヌ侯爵家と代々騎士を輩出するマクリュール公爵家。父親同士が親友という間柄なのに、息子同士はそこまで交流がなかった。
だが、王都学校に入ってから一気に加速する。
あいつ。すっごく頭がいいんだよ。面白いアイデアが次から次へと出てくる。
そして、俺の開発したいという心をずっと刺激していく。それは今も変わらない。
そんなこんなで俺とアダムスとそしてアダムスの婚約者のシャーリー嬢と三人でつるむことが多くなっていく。
多分さ。俺のこの気持ちをアダムスはいざ知らず、シャーリー嬢も気づいてる思うんだ。
「ねえ。ジュリアン様。アダムス様と寝屋を共にしたかったら別によろしいんですのよ?私。アダムス様とジュリアン様が仲睦まじくしているのを見ているのとても好きなんです。お二人の間に入れない時を見るのが・・こう・・何というか至福なんですの。」
って恍惚とした表情でおっとり爆弾発言をした時があったんだよ。あれはいつの時だったかな?三人でいる時間が長すぎて、楽しすぎていつかなんて忘れちまった。
シャーリー嬢に言ってはいなかったが、お互いそういうタイミングがあって経験上としてやってみようとなったけど、お互いできなかったんだよな。俺がアダムスを抱きしめて寝ただけ。
「ジュリアンどうだ?ユリウスは無事だろうか??」
父さんが俺にそう聞いてきた。
父さんはガタイも顔もイカついし表情をあまり出さないのにのにユリウスおじさんのことになると、表情が十分わかりやすくなる。
「大丈夫みたいだ。ユリウスおじさん。なんだかんだ逃亡を楽しんでるみたいだ。
マリアおばさん。母さんとジャクソン伯爵夫人に会いたがってるみたい。」
「ああ・・あの三人は仲良いからなあ・・。」
父さんはあの三人が集まった時の会話を思い出して苦笑いを浮かべた。
「父さんもユリウスおじさんとジャクソン伯爵と仲いいよね。」
「ああ。そうだな。早くリリアンヌの森へ行きたいよ。」
父さんはそう言って本を読むのを再開した。
表は鬼のような強さと牽引力でパリルス王国の騎士団を他国の騎士団と遜色しないまで引き上げた父親は、家にいるときは読書が趣味という穏やかな人だ。
父さんの部屋を出た時に少し騒々しい音が聞こえてきた。
ああ母さんと妹のエイミーが戻ってきたんだな。
「ただいま戻りましたわ。」
「お帰りなさい。母さん。エイミー。」
「ただいま戻りました。ジュリアン兄様。」
エイミーが駆け寄ってきて足にしがみつく。
「おお楽しんだか?母さんとのショッピング。」
「はい!!とても楽しみました。ですが・・。私たちのお気に入りのお店がみんな寂しそうだったんです。」
エイミーはお気に入りのお店の商品が少なくって寂しい思いをしたらしい。
商店から商品がなくなるということは、そこまでかパリセル王国だと商売が成り立たなくなってきてるということか・・。本当この国どうなるのか??
一週間後。
「おお!アダムス。そうかついたか。今から魔法陣設置するんだな。了解。
家族に伝える。」
アダムスは俺と今度はビデオ通話した。
シャーリ嬢にビデオ通話の説明をしたと思っていたのに、していなかったらしくて二人で笑い合ってしまったようだ。
ったく。二人ともそういうところが天然というか気が抜けているというか・・。
俺もその時の二人の表情を想像してクスッと笑ってしまった。
「もう!ジュリアンまで酷いよ!!」
「悪い悪い・・。魔法陣消えるの3時間しかないから通話切るな。」
俺は通話を切って団欒室にいる家族のところに向かう。
俺の説明を聞いてから、一気に家の中が慌ただしくなっていく。
こうして、パリルス王国からリリアンヌ侯爵家。ジャクソン伯爵家。マクリュール公爵家のパリルス王国始祖から連なる三家がパリルス王国から消えた。
さようならパリルス。こんにちはリリアンヌの森ってわけだな。
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