第3話
マルセイユについてからは馬車でゆっくりと辺境村へ向かうようにしました。
とりあえず国に入ってしまったらこっちのもんとばかりに家族と共に馬車に揺られながら、マルセイユの街並みを見ております。
「まあまあまああっっ!!なんて可愛いのでしょう?」
お母様が馬車から見えるショーウインドウ越しのお洋服を見て声を上げました。
わたくしもそちらの方へ目を向けると確かに可愛い!
「パンツルック??」わたくしはハッとなった顔でそのお洋服を見ました。
「ローゼちゃん。ちょっと降りましょう?母様お買い物したいわ!!」
パリセル王国からマルセイユに移って文化面がこんなにも濃く差が出るなんてわかりませんでしたわ。表に出ないと見えるものが違うって本当ですのね。
「マリア。その前に換金しよう・・。そろそろ換金しなくてはならないと思っていたのだ。」
「そうですわね!私ったら気が焦ってしまいましたわ。」
「旦那様。わたしが行って参ります。」
執事のマーロンが馬車を降りて、換金して参りまいした。
どの国も通貨はあるのですが、共通通貨という概念がありませんの。
ですから、その概念に近いのが魔石なのですのね。
ただ、注意しないといけないのが換金する時にそれぞれの国の各々換金場所でルートが違うので注意しないといけませんわね。
一番ルートがいいのはギルドで換金するのが一番いいとされています。
馬車はギルドの前に降りたのでマーロンは魔石をいくつか持って換金して参りました。
実は私たち家族は王都から一歩も出ないで今まで過ごしてきたので、領地持ちや旅行好きの貴族の方たちと違って今まで他の国を出たことがないので、マルセイユきてから何もかもが新鮮なのです。
「まあ・・。こんなに換金できたのね!!」
マルセイユの価値だとざっと百五十万くらい換金できました!パリセルだと二百万くらいなのですが・・。やっぱりマルセイユの方が物価が高いのですわね。
「お母様!これだけあればお買い物たくさんできそうですわね!」
「そうね!それにこの格好だとこの街ではどうも浮いてしまうわね。
ユリウスもアダムスもここでお買い物しましょ!」
確かに、このパリルス式のファッションだとこの街では浮いてしまいますわね。
わたくしたちが着てるものも上等で品がいいお洋服だと思うのですが・・。
さすが、文化を国レベルで高めているマルセイユですわ!
そしてお母様のウキウキしてる感じと真反対に父様もアダムス兄様も若干諦め感が出ているのが対照的ですわね。
「お母様。わたくし先ほどのお店に行きたいですわ!!」
「あら〜。いいわね。あそこのお店行ってみたかったの。」
わたくしたちがその店へ行こうとしたその時ある会話が耳に入ってきましたの。
「なあそういえば聞いたか?隣のパルセル王国あそこの御貴族様のご令嬢が第二王太子に婚約破棄されたらしいぜ。それに憤った家族がパルセル王国から逃亡したらしい。冒険者ギルドにパルセル王国から懸賞金の話が出てきているらしいが、マルセイユの冒険者ギルド長、パルセル王国大嫌いじゃないか。パルセル王国の要望書さっさと破棄したらしいぜ。」
「ほう〜。面白い話だな。まああそこの第二王太子、というかあそこの国自体。昔はどうか知らないが最近はどの国も相手してないらしいじゃないか。商人もあそこに商品をおろしたがらないって聞くぜ。」
「そうなのか?まあ・・。でもパルセル王国の魔道具だけはいいんだよな。あそこの魔道具を使ったら他の魔道具使えないからな。パルセルが危なくなっても魔道具だけは使いたいなあ。」
「ああ・・。わかる。昔からパルセルは魔法の国だったからなあ。あそこの魔法式も他の国に比べると優秀らしいぜ。」
「ああ・・。そうだな。ほんと教会と癒着するといいこと何もないな。」
「いや。教会が悪いんじゃない。現にマルセイユの教会は同じ教会でも、癒着とか何もないじゃないか。あっちは元々教会でも異端扱いして追い出された人間が教会の長に治ってるからな。しょうがないさ。そこにうまく王様がつけ込まれた。これから数年の間が勝負じゃないか?」
「確かに・・。しかしお前ってほんといろんな情報が集めてくるな。」
「行商やっていたら、色々と入ってくるんだよ。」
「そうか。じゃあな。気をつけて行ってこいよ。」
「ああじゃあな。またきたら酒飲もうぜ!」
「お父様・・。」
「しっ!さっさとこの服を変えよう。」
「そうですわね。パルセルに見えなくても私達の格好はこの街では浮いてしまうわ。ローゼちゃん。アダムス。あのお店へ行くわよ。」
わたくしたちは足早で、お店へ向かいましたの
「いらっしゃいませ!ようこそ。」
店主は私たちをチラリとみてから笑みを浮かべる。
「お客様は当店が初めてでいらっしゃいますか?」
「ええ。ショーウインドウに飾ってる服を気に入ったの。
あのお洋服の形は今の流行なのかしら?」
「いえいえ。あちらは当店の専属デザイナーが作り上げた形なのです。
マルセイユでは貴族を中心に脱コルセット主義という新しい思想が出てきておりまして、それを耳にしたデザイナーが打ち出したデザインなのですが・・・。」
少し困った顔に店主はなりましたわね。確かに脱コルセットというのはわかりますが、いきなりパンツルックを打ち出すのは時代が早すぎというものですわね。
「お母様。このスタイル。絶対にこれから流行りますわ!!」
お母様はお洋服をチラリとみて、お父様を見上げる。
「マリア。君が気に入ったなら買えばいい。それにこのスタイルは実にいいじゃないか。脱コルセット主義の思想も実にいい。これからは女性ももっと自由になるべきだ。」
時々お父様の先見に驚いてしまう。
「父様。脱コルセット主義というのがなぜ女性の自由につながるのですか?」
「アダムス。君は気づかないか?女性のコルセットは女性の体をキツく締め付ける
だろう?そしてそのキツさは女性をたびたび失神させてきた。そのコルセットをなくすとなるとどうおもう?」
本当。わたくしは父様の子供でよかった。
アダムス兄様はしばらく考えて、お父様の言葉の意味を理解したみたいです。
「なるほど!!母様。僕もこのスタイル賛成です!!」
わたくしはお店の商品を見て回る。あら・・これは?
「お嬢様。こちらは庶民の労働服のデニーと言われているもので、使われなくなった馬車の帆布をインディグルに染めて作り上げたものです。」
やはりデニーはデニム。インディグルというのはインディゴでいいのですわね。
「なるほど・・・。こちらを試着できますかしら?」
「ほう・・。これはいいなあ。」
私を探しにきた父様がデニーを見て気に入ってる。
お父様スタイルがいいからデニーが似合いそう。
「お嬢様もお父様もスタイルがいいのでお似合いと思うのですが・・。
ただ・・・。そのう・・・。」
「店主。構わない。私たちはあんまりそういうものにこだわらないのだ。
それにこれからだいぶ田舎に向かうのでね。この丈夫そうな労働服がこれからの生活にしっくりくると思うのだ。」
「さようでございますか・・。かしこまりました。」
店主は頭を下げて、わたくしたち家族分を用意した。
残ったお金は執事のマーロンに預けて、旅に付随してるものたちの洋服代に変わった。
馬車に戻って、マーロンとお買い物をしてきたものたちはとても満足そうな顔で自分が買ったものたちを見ている。最初は遠慮をしていたけれど、この度に付随しているだけでもう家族だ、遠慮しないで欲しいものを買って欲しい。と父様が言ったらとても喜んだ顔になりましたの。
「旦那様。ありがとうございます。わたくしたちまでこんな素敵な服をたくさん買っていただいて。」
マーロンにメリー。御者兼魔導車運転手の双子兄弟アントニーとエドワード。それに護衛騎士のジョージとトムまで喜んでるのをみてわたくしも嬉しくなってしまいましたわ。
「さて。もっとゆっくりとしたかったが、話を聞いた限り懸賞金がパルセル王国が出したらしい。アントニー。すまないがこれから馬車で足早に誰も見えないところまで走ってくれないか?そこから魔導車に乗り換えて辺境村まで行ってしまおう。」
父様はため息をついて「もっとゆっくりしたかった。」と小声で呟いたのを見て、みんな顔を見合わせてクスッと笑ってしまった。
「何だ。俺だって旅を楽しみたいんだぞ。美味しいものとか食べてみたかった・・・。だが、懸賞金を出したということは、こっちが仕掛けた新聞と号外も出ているくらいか?辺境村で聞くのが楽しみだな。」
ああ父様が悪い顔をしてらっしゃる。王族と父様どちらが悪知恵働くのが早いのかしら?と思ったのはみなさま内緒ですわよ。
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