4. ベンチに戻って

無事、生還したカズトは、一塁からベンチへ戻ってきたキョウヘイの方を向き、ガッツポーズをして喜びを表した。

「やったな、キョウヘイ。ナイススクイズ!」

ベンチから監督やチームのみんなが声を掛ける。

「カズトもナイスランなや!」

ベンチの一番前で嬉しそうに話し掛けてきたトモロウの隣にカズトは座った。

「いやー、マジで焦った。三塁にいる時に一瞬、サインが頭の中から消えたわ。」

カズトは監督に聞こえないようにささやき声でトモロウに話した。

「監督が右肘を触るやん。その瞬間、『あれ、何やったっけ』ってなって、頭が真っ白になって――。」


突然、カズトの話を聴いていたトモロウは、一瞬顔をしかめた後、話を遮って言った。

「カズト、今日のキーサイン、帽子やで。」


(試合後にポール間ダッシュ×10をするカズトを尻目に話は終わる)

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消えかけた監督のサイン 古田地老 @momou

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