第7話 「危機 怪物巨大サメとの戦闘」

 ふと、カミヤの様子を横目で確認した。手には『創生』のポーズが構えてあった。


 ”何か策があるんだ!”


 丁度その時、カミヤもマナトの方を見た。


 ”あと少しだけ時間を稼いでください”カミヤの目はそう訴えていたように、マナトは感じた。


 マナトは目を瞑り、全神経を集中させて、泳ぎに力を入れた。

 

 もう足が壊れたっていい、そう思えるほどバタ足に全力を注いだ。足の1本や2本、死に比べたら軽い方だ、そう自分に言い聞かせた。


 だが、怪物のスピードは止まらない。口を開けかけ、喰う準備をしている。


 (間に合え、間に合え、間に合え...)


 カミヤも全集中して『創生』を行っていた。完全に手の指はのけ反り、指が折れそうなほどであった。


 ”指なんていくらでもくれてやる!”本気でそう思った。


 怪物巨大サメの口が150度ほど開く。完全に喰う態勢が整う。そして、先端が刃物のように尖り、純白の色をした歯が、2人に襲い掛かる。


 ”ボン!!!”

 何か爆発した音が聞こえる。また、かすかに悲鳴も聞こえる。


 マナトは大きな音に気づいたが、怖くて振り向けず泳ぎ続けた。そんなマナトの腕をカミヤが引っ張る。


 マナトはカミヤを信じ、恐る恐る振り向くと、巨大サメが白目をむき口を開けたまま沈んでいく様子が視界に映った。


 水の色は少し赤味がかっていた。


 カミヤが、苦笑いしながら、いびつなグッドポーズをする。しかし、ポーズをした瞬間、手を抑えてうなだれた。


 慌ててマナトがカミヤの右手をそっと取り、様子を見る。右手の薬指が青紫色に変色していた。骨折しているようであった。


 まさかと思い、もう片方の手を確認すると、なんと人指し指と中指の2本も変色していた。


 (くそっ!!)


 自身の身体が無事なのに対し、カミヤ(子供)の身体に、負担をかけてしまうなんて...


 勿論、救急バックなどこの低予算旅で持っているわけ無かった。必死にあたりを見回すと、北度20度の方向に、後光がさしている大きな岩があった。


 カミヤの胴体に手を回し、その岩まで連れていく。そして、岩を掴み、光がさしている方向をみると...


 海の中で光輝くネオン街が、大きなバブルに包まれ地面に生えていた。


 薄暗い海の中、まるで人々の道しるべのように光を放っている海の街ヒュースに、2人は見惚れてしまった。

 

 怪我を治す為、目的地に向かう為、というより、夜中の街灯の光に群がる虫のように、2人は本能的にその地へと向かっっていった。


 


 

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