海の街 ヒュース編

第6話 「いざ、海の街へ」

 「海の中?冗談じゃない。どうやって行くんだよ」


 もしかして、冗談で弄ばれているだけなのかもしれない。


 カミヤは何も言わず、『創生』をし始めた。両手の間から、シャボン玉みたいなバブルが出始めてくる。ぷよぷよした見た目だか、表面は頑丈そうな大きなシャボン玉という印象だった。


 できたシャボン玉をカミヤが頭に被る。


 「空気バブルです!」

 真面目な顔で自身満々に答えるカミヤ。”これ着けて行きましょうよ”と言わんばかりの手の合図をしている。


 (おいおい勘弁してくれよ...)


 こんな不安要素モリモリで行けって言うのかよ。せっかく転生したというのに、こんな序盤で死にたくないよ。


 「安心してください、破れたりしない限り大丈夫です!」


 「それを1番心配してるんよ...」


 その後、少し話し合ったが、結果この方法で行くことになった。


 乗り物を丸ごと空気バブルで包んで、沈むのが1番安全らしい。


 だがカミヤの現状の力の『創生』では難しく、また、やってもらうにしても莫大な費用が掛かるらしいから、無理とのこと。


 なので結局、顔だけを空気バブルで包み酸素だけを確保する、低予算方法になったのだ。


 早速、カミヤの『創生』が活躍していて、仲間に入れて良かったと思うマナト。


 空気バブルをもう1つ創生してもらい、マナトも頭に被った。


 少し歩き、港に着く2人。


 目の前には大きな大海原が広がっていた。日は出て海は輝いていたが、どこか暗く不気味な雰囲気が少し漂っていた。


 「よし、行くか」


 「はい!」


 2人は同時に海に飛び込んだ。海中は暗く、ある程度地形に詳しいカミヤが海中電灯で前を照らして、潜っていく。


 また、声は届かないので、水中ボードで文字を書いて会話する。


 顔以外は水に触れているので、服は濡れ動きづらい。


 「ところで、海の街ヒュースはどういうところなの?」


 「僕も行ったことないので分からないですが、"ネオン輝く眠らない街"と言われてるらしいです」


 「海中なのにネオン街なのか、綺麗そうだな」


 「いえ、街自体は大きな空気バブルで包まれています」


 その後もマナトとカミヤは、水中ボードに文字を書いて会話をしていった。


------

 

 あれから数分が経ち。


 「まだ着かないのか?」


 「うーん。もう着いててもおかしくないんですが」


 カミヤは不思議そうに水中コンパスを見つめている。


 そんな迷っている2人に大きな影が覆いかぶさる...


 マナトが最初に影に気が付き、上を向いた。マナトは見てしまった。そして、言葉では言い表せないほどの恐怖を感じた。


 水中ボードを見せても、一向に読んでくれないマナトの変な様子に気が付き、カミヤも同じ方向を見た。


 なんと、2人の上に、巨大な口とギザギザの歯をした怪物のようなサメが、歯並びを見せつけるかのようにして、こちらを見ていたのだ。

 

 ぱっと見だが、全長10メートルくらいの大きさだ。


 ”来る!”

 マナトは殺気を瞬時に感じ取り、カミヤの手を引っ張り、おもいっきり泳いだ。


 すると、0.3秒後にサメが元居た場所に、かみつく動作を行っていた。すぐに失敗したと気づいたサメは、2人を目掛けて、猛スピードで追いかけてきた。


 (やばい...)

 とマナトは思ったが、意外にも距離は縮まなかった。海に潜り始めた時から感じていたが、身体能力が上昇している感覚があった。


 きっと、ゴブリンの特性を受け継いでいるのだと思った。ずっと泳いでても全く疲れないし、今だってサメに中々追いつかれないスピードを出している。


 だが、それも時間の問題であった。カミヤは普通の人間であるので、俺が引っ張って泳いであげないと逃げきれない。


 つまり、1人引っ張って泳ぐハンデがあると、サメに追いつかれてしまうのだ。


 (くそっ...このままだと追いつかれる...)


 何か策はないのか、必死に考えるが何も思いつかない。次第にサメとの距離は縮まっていく... 


 (もうだめだ...)

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