mission 20 ジカンギレノシンデレラ


ああ…うらやましい。数による武力…屈強な体…!なんて羨ましいのだろう。なあピリカ…!


(また声が聞こえる。私はお前の言いなりにはならない!)


俺を受け入れろ。そうすればお前の欲しいものは全て手に入る…!


「ピリカのやつ1人で突っ走りやがって!隊長聞こえるか!?」


「聞こえてますよ。」


「ピリカの能力ってなんなんだ?」


「彼女の能力ですか…。彼女は『嫉妬のリヴァイアサン』に由来します。」


「そんな悪魔の名前はいいから早く教えてよ!」


「…私は以前7つの大罪についてはその存在そのものが全て不明だと言いましたが厳密に言うと少し違います。彼女の能力は自分の嫉妬心に対して語りかけてくるリヴァイアサンの声が聞けるというものです。まあ俗に言う悪魔の囁きってやつですね。悪魔の囁きに『YES』で答えてしまうと彼女の想いは叶えられる代わりに一定時間身体を悪魔に支配されるというものです。」


「声が聞こえるだけ…?」


「そうです。ですが能力の引き継ぎは対象の能力に酷似したものとなるはずなのです。なのでナギサは1つの仮説を立てました。夢光ピリカは悪魔の能力を受け継いでおらずなんらかの形で精神面にリヴァイアサンが関与している…もしくは彼女の中にいると言う仮説です。」


「あいつの中に…。」


「なぜあなたと彼女を組ませたと思います?」


「え?俺がリーダーとして優秀だから?」


「違います。あなたが彼女の能力をコピー出来ればなんの問題もありません。出来なかった場合は仮説通りとなります。その場合あなたに与えられる任務はひとつ増えます。彼女が悪魔に体を明け渡した際にリヴァイアサンの能力をコピー出来るかどうか確認して下さい。」


「え?やだ!」


「は…?」


「それってつまりS級と戦えって事じゃん。

無理。」


そんな馬鹿らしい任務だれが受けるかってんだ。


「もしも7つの大罪自体の能力をコピー出来たとなれば我々NGSの戦力は大幅に変化します。その実績だけでもあなたに支払われるボーナスはA級討伐の比ではないかと。」


「…俺がなんでもかんでも金で動くと思うなよ!いくら積まれてもS級なんてものを相手にするほど俺は馬鹿じゃねえぞ!」


「そうですか…。額で言えば10億は軽く超えるのですが…。」


「俺にしか出来ない任務があるのですね。お任せください。」


「…。」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


そんなこんなで俺は試しにピリカのやつをコピーして見ることにした。


こぴぃいいい!!


え…?視界が真っ暗になった。どこだここ…いや待て待て!こういう展開はおそらく精神世界と相場は決まってる。だけど今までのコピーにこんなことは起きなかった。つまり失敗だ。


「人間ここに何をしている。」


頭の中に声が響いている。


「お前がリヴァイアサンか!」


「お前は…そうかサタンの残火。」


「残火?つーかここはどこなんだよ!早く戻せ!」


「お前が勝手に入ってきたんだろうが…。まあ良い。コピー能力を使って俺の力を真似ようとしたみたいだが…悪魔の力を借りると言うことがどういう事かわかっているのだろうな?」


「知るわけねえだろ!てかなんで俺普通に悪魔と会話出来てるの!?」


「ピリカの中にいる俺となんらかの事情で精神的に繋がってしまったようだな。」


「なんでお前はピリカの中にいんだよ!」


「人間は見ていて面白い。俺は永遠の身体だとか侵略だとかには興味がない。」


なんだこいつ。悪魔のくせにもしかしていい奴だったりするのか?


「悪いやつじゃないなら協力してくれよ!」


「思い上がるな人間…!俺は永遠の身体なんぞはいらんが人間の身体は欲しいんだ。ピリカが俺の問いかけにYESと答えれば助けてやるぞ?身体を一時的に借りるがな。」


「わかった!こぴぃいいいい!」


「!?」


俺はリヴァイアサンの能力をコピーしようとしたが何も起こらなかった…。


「なんのつもりだ!?人間!!」


「いやお前の力借りなくてもコピーしちゃえばいいやって…。」


「残火のお前に俺の力は使えないぞ。」


「だからその残火って−−−」


「起きろっていってんのー!!」


「ぶべっほっ!」


目を開けると俺の頬にビンタを喰らわせたピリカが立っていた。


「あ。起きた。」


「あ。起きた…じゃねえよ!」


「仕方ないじゃない!急に気を失ったんだから!起こしてあげて感謝してほしいわ。」


「ぐう…。」


「だからギリギリぐうの音出してんじゃないわよっ!!」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「さて…カグヤ死ぬ前に本当のことを教えてあげようか。」


「本当のこと…?」


「お前は今から月のエネルギーとなるため生贄になると思っているだろうが…それは嘘だ。」


「な…何を言ってるのですか?」


「我々ルナ族に代々受け継がれ育ててきた生き物がいるんだ。『星喰い』そいつはまだほんの40億年しか生きていない幼体だがあと20億年ほどで成体となり全ての星を喰らい尽くす存在となるだろう。」


「なんでそんなものを…!」


「征服だよ。我々ルナ族が…いやこの俺ルナ・ジールがこの宇宙で1番高貴な存在だと示すためさ。寿命で死ぬはずのないルナ族だが月の王は俺で3代目…。爺さんも親父も死んだ。なぜ死んだかわかるか?」


「いいえ…。」


「殺されたのさ!爺さんは親父に、親父は俺にな。」


「自分の親を手にかけたのですか…!」


「王は何人も必要ないだろ?そしてお前たちの役割だが…月のエネルギーではなく星喰いの養分となることだよ。星喰いにルナ族の血を吸わせることによってルナ族の命令しか聞くことない化け物にする為さ。」


「そんなことのために今まで何人のルナ族が犠牲になって…!」


「雌なんぞ征服する力も持たねえただの道具だろ。本当は星喰いの食事はまだまだ先だと思っていたんだが…変な客人たちが騒がしかったせいか目を覚ましてしまったんだよ。」


そうジールが言い放つとカグヤの背後から大きな口がこの宇宙空間にも響くかと思わせるような雄叫び共に現れた。


「グゥオオオオオオオオオオオっ!!」


「さあ娘よ。俺のために死ね!」


「貴方を親だと思ったことなんて有りません…!

私の親は地球で出会ったあの人達だけです!」


「…さあ星喰い。食事の時間だ。」


そうジールが命令すると星喰いはゆっくりとカグヤを口に入れ始めた。



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