mission 18 オヤガチャ
「女でここまで動けることは褒めるに値するが…俺には勝てない。」
「うっ…。」
やべえ、ピリカのやつ一瞬で負けちまった。
「次こそお前だが…。」
「馬鹿どもがすみませんでした!さっさと帰ります!」
あれ?なんだろう…一瞬カグヤが悲しそうな顔をしたような気がする。でも関係ねえっ!早くメガネに頼んで迎えを呼ばなくては。
「隊長!宇宙船が壊されたので迎えをお願いします!」
俺は通信機を使ってアイリと連絡をとった。
「カグヤはどうしたんですか?」
「俺たちじゃ敵いませんでした!」
「あなたも戦ったんですか?」
「…ま、まあ?」
「引き続き任務を遂行してください。」
はぁ?あっ!切りやがった!このクソメガネが!
まずい…非常にまずい。戦っても敵わないし戦わなくても迎えが来なくて月で餓死する未来しか見えない。仕方がない…!
「すみませええええん!迎えが来れないので助けてくださぁぁあい!」
「…。」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「敵意が無いのであれば客としてもてなそう。だが我々に牙を向いた時は…わかっているな?」
「はいっ!非常に理解してます!」
俺の誠意のある謝罪が認められた様で一時的な滞在を許された。
「そこの2人は医務室で治療を受けさせると良い。何かあったら言ってくれ。」
なんだこいつ。話してみると意外にいい奴じゃないか。
「あざっす!」
「ふん。地球人などをもてなすとはカーランも甘い男よ。」
いやお前が宇宙船を壊したせいでここにいるんだが…?
「皆さん…私のせいで申し訳ありません。」
「いや…カグヤさんのせいじゃないですよ!」
「私が逃げ出したせいで…。」
「ん?逃げたって?」
「あっ!い、いえなんでもありません!」
何か俺達に隠してることがありそうだ…。でも聞くわけにはいかない。聞けば面倒ごとに巻き込まれる可能性があるからだ。
「お前何か俺たちに隠してんだろ?」
俺たちの会話をちゃっかり聞いていたヒヅメがカグヤに問いかけた。
「お前起きてたのかよ。」
「ああ。今さっきな。」
「…私が真実をお話しすればあなた方は私を救って下さるのですか?」
「俺たちが手を貸せることならなんでも言ってくれよ!」
「…お気持ちは有難いです。しかしそれは大勢が血を流す結果になるかもしれません。」
「うん。じゃあ聞かないことにしよう。」
「それは俺たちがお前に力を貸せば戦闘になりかねないってことか?つまり俺たち地球人にも関係のある話ってことじゃねえのか?」
「…ええ。」
「じゃあ聞かねえ訳にはいかねえだろ!」
しばらく沈黙が続いた。
「…月の姫は3000年に1人産まれると言われています。私が地球に行ったのは1000年前ほどでしょうか。」
「え…カグヤさんって何歳なの…?」
「1200歳です。寿命で死ぬことのないルナ族にとってはまだまだ赤ちゃんのようなものです。皆さんは月が何でできているかご存知ですか?」
「岩と塵?」
「ええ。アラタさんは博識なのですね!月には中心に核があり、それを岩石や塵が覆うようにして形を保っています。もしもその核がエネルギーを失うようなことがあれば…月は消滅します。」
「その核とあなたになんらかの関係が?」
「その通りです。核自体のエネルギーは対して大きくありません。その少ないエネルギーでは到底月の形を保ち続けることはできないのです。そこで初代月の王と呼ばれる者は生まれてきた自分の娘…つまり月の姫を核の生贄にしてエネルギーを補填しました。つまり私の役目は月の生贄となることなのです。」
「それってつまり死ぬってことかよ…。」
「1000年前…幼かった私は自分の定められた運命を恨み地球へと逃げ出しました。そこで出会った2人は私に愛情と言うものを教えてくれたのです。親からの愛情なんてものを受けたことのない私にとってあの日々は幸せそのものでした。」
「それが地球で語られてる竹取物語…。」
「しかし私の親や従者達は黙って居ませんでした。月の存亡がかかってるんですからね。ついに地球で私を見つけた両親は対抗した地球で私を拾ってくれた夫婦を殺害しました。」
「なんてひどい話なんだ。」
「それと俺たち地球人になんの関わりがあんだ?」
「月が消滅すれば地球にとっても大きな影響が出てきます。」
「月がなくなれば地球の時点速度は早くなっちまう。そうすれば1日が8時間ほどになるし強風による被害も出てくる…いやそんなことよりも隕石の被害の方がやべえ。今は月が堰き止めてくれてる隕石が全部地球に…。」
「だから私を助ければ地球の生活が大きく変わってしまいます。」
「それってカグヤさんが考えなきゃいけないことなのか?」
「はぁ?何言ってんだおまえ!月が終われば地球もやべえんだぞ?」
「だって…カグヤさんは月の住民であって地球をまもる義務は無いはずだ。カグヤさんが自分の道を選んで月を離れたとしてその結果地球がやばくなってもそれをどうにかするのがNGSの義務じゃねえのか?」
「それは…!」
「いいんですよ。アラタさん。あなたは優しい人なんですね。でも私の身勝手なために大勢の人が血を流すことになるなら私は逃げません。あの夫婦のような被害者を二度と出さない為にも。」
優しいのはあんたじゃないか…。
俺たちには何もしてやれないのか?
「ふざけんじゃないわよ!」
急にピリカが大声をあげて叫んだ。
「あんたは都合のいいこと言われて親が自分を守るために殺されるだけじゃない!?そんなの許されるわけがない!」
「…!」
「ピリカ…お前。つけま取れてるぞ。」
「このクソおとこぉおおおお!!」
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