mission 16 メヲツブレバカニカマモカニ


俺は1人宇宙ポッドの中でウノをしていた。


「ウノッ!!…は?なにこれ。」


果てしなく続く真っ暗な宇宙空間を1人で何時間も旅するのはとにかく暇だった。とは言え何故ウノをしているのかは俺にもわからない。


「たく…!なんなんだよあのクソメガネ!俺だけ帰ってこいだなんて。」


ケルベロスとフェニックスを討伐したあと、テンマとヒナタはそのまま星に残り桃太郎の捜索を続けているが俺だけ一時帰還をアイリに命じられたのだった。


「あ…やっと見えてきた。」


俺がポットから降りるとアイリが出迎えてくれた。


「お疲れ様でした。ケルベロス、フェニックスの討伐…貴方の活躍があってこそだと若部さんから聞いていますよ。やる時はやるんですね。」


一言余計だが、まあとりあえずは褒め言葉として受け取っておこう。


「それでなんで俺だけ帰還を?」


「桃太郎についてはあの2人に任せて貴方には違う任務についてもらいます。」


「違う任務…。」


これまた嫌な予感がする。またA級とか言い出すんだろ…!B級であれだぞ!?今度こそ死んじまう!


「D級犯罪者カグヤを捕らえてほしいのです。」


どぅうういいいいいきゅう!!大したことない!やったー!!てか桃太郎の次はかぐや姫だってか?日本の童話擦りすぎだろ!


「ちなみにカグヤはなにしたんすか?」


「カグヤは地球への不法侵入の罪で指名手配されています。居場所は月ですし…ケルベロス達を討伐したあなたにとっては簡単な任務かと。」


居場所までわかってんのかよ!最高だぜ!こんな簡単な仕事で金は貰えんだからよ!うほっ!


「この2人も連れて行ってください。」


アイリがそういうと後ろから2人が出てきた。


「確かお前らは…コシヒカリと豚ヒヅメ!」


「夢光ピリカ!あのマザコンみたいな間違え方してんじゃないわよ!この変態やろう!」


「俺は豚じゃねえ!鴻島だ!」


「ああ。そうそうそれそれ…って誰が変態じゃあ!!」


「いや…変態じゃない。初対面の女の子に抱きつくようなやつ。」


「…ぐう。」


「ぎりっぎりぐうの音出すな!!」


「め…いや隊長!なんでキラキラお花畑ちゃんと組まなければならないのですか!」


「は?誰のこと?」


「…私はいずれこの隊を2つの小隊に分け、合理的に任務を進められる様にしたいと考えています。片方のリーダーは本郷くんに。また一つを今回の活躍から見て貴方にするという選択肢が生まれました。なので今回はそのためのテストと言ったところでしょうか。」


「はぁ!?こんな変態がリーダー!?ありえないっ!」


「黙れJK風23歳!ほぅ…俺がリーダーですか…。」


リーーーーーーダァアっ!!なんて素晴らしい響なのか。


「よし。君たち俺に着いてくるんだ!」


「いやよ。」


「嫌だね。」


は…?こいつら気狂ってんだろ。ノリ悪っ!


「そもそも合理的を求めるその作戦自体乗り気じゃあねえな。俺は適当にランクの高いやつを狩りたいんだよ。」


「え…強いやつと戦いたいとかマゾじゃん。」


「ちげえよ!!弱いやつ相手にチマチマ稼ぐなんてめんどくさいだろ!適当に強いやつ狩れば一回で済むじゃねえか!」


「まあどちらにせよ強いやつと戦いたいって言ってる時点でマゾですけどねぇ〜。」


「てめえ!」


俺が少し煽ってやるとヒヅメは顔を赤くして俺の絵は元を掴んだ。


「ふっ…やめておけ。俺はB級を2体も…ぶふぇっ!」


ヒヅメはクリームパンのような右手を振り翳し俺の頬を殴った。


「調子乗んなよ?てめえ…!」


なんだこいつ…!デブのくせにかなり早い…いや俺の反応が遅すぎなのか!?


「鴻島くん。こんなところで能力を使わないで下さい。」


そうか…!こいつの能力の仕業なのか。


「おい…豚!今謝れば許してやるぞ?」


「謝るだぁ!?てめえどこまで人をおちょくれば気が済むんだよ…?」


「うるさ…。てかなんで今回は討伐じゃなくて捕獲なの?」


俺たちの言い争いを無視してピリカがアイリに問う。


「カグヤが何故、地球に何をしに来たのか。ただの宇宙旅行…?それとも何かしらの目的があって訪れたのか。私はそれを聞く必要があると考えているからです。」


「なるほどねぇ〜。」


「とにかくあなた方は3人でカグヤの捕獲任務に当たってください。仲間割れは許しません。これは命令です!」


「チッ!」


あ、今この豚舌打ちした。安物豚タンが。


「月までは先日やっと修理が終わった小型宇宙船を使って下さい。」


おやおや。何故か頭が痛いお話だな。


こうして俺と不愉快な仲間達は月に向かって飛び立つ事となった。


今度はウノ出来るカナっ!?




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