mission 13 ベントウニハシイレワスレタ


逃げよう。こんなでかい化け物、敵うわけない。


「あ?だれかと思えば桃太郎さんのおやっさんじゃねえか…。お前裏切ったのか?」


「裏切るも何もわしは最初からお前達の味方ではない。」


「へえ…。それじゃあまとめてお前も食ってやるよ!」


ケルベロスは桃太郎の父親に目掛けて飛びかかった。しかしケルベロスが動くのと同時に飛び出したテンマの拳がケルベロスを吹き飛ばした。


「なんだ!?」


「僕たちが黙って君の食べ物になるとでも思ったか?」


テンマさーーん!


「…俺に殴りかかってくるとはなぁ!面白いぜお前。」


面白いと言いつつも顔は全く笑ってないんですが。


「くそ…こいつ僕の攻撃が効いてないのか?」


「人間にしては少しはやるようだが…てめえらの小さい体じゃ俺にダメージなんてあたえらんねえよ!」


格闘技や喧嘩における体格の差は絶対だ。10㍍を余裕で超えるケルベロスに170㌢程のマザコンの攻撃が効くわけがない。


「そうか…。それならば簡単だ!効くまで殴り続ける!」


「バカ!マザコン逃げるぞ!こんなでかいのに勝てるわけ無いんだ!」


「アラタ!僕は逃げないよ。」


「なんでだ!こいつのことは本隊に任せておけばいい!俺たちは調査隊なんだぞ!?」


「こいつをここで倒しておかなければダメなんだ!!1匹でこの強さ3匹揃った上に桃太郎までいるとすれば本隊が全滅する可能性だってある!だから、こいつしかいない今僕が倒さなければいけないんだ!」


何言ってんだよ…。確かに1匹でいる今がチャンスなのかもしれない。ああ。わかったよ!ここでお前が倒さなきゃいけない!


「よし。わかった!倒しておいてくれ!じゃあな!」


「え?」


倒すのはこいつの意思だ。俺には関係ない。逃げよう。


「おい…。アラタぁ?お前この楽しい喧嘩祭り参加しなくていいのかよ?」


はっ!ヒナタ激怖モード!?


「いやぁー。僕なんか居てもねえ?」


「おらぁぁあ!」


「なんだ!?もう1人増えやがった!」


「ヒナタ!」


「おいマザコンキモ男!てめえ全然攻撃通ってないじゃねえか!」


「僕はキモくはないが。その通りだ。体格差があるとは言えここまで攻撃が通じないなんて…!」


確かにその通りだ。体格差があるとはいえテンマには人間を超越したパワーがある。なのにケルベロスにはダメージが通っている気がしない。おそらく何か秘密があるはずだ。


「おい!じいさん!なんか弱点とかないのかよ!」


「わしにはわからぬ…。ケルベロスは脳が3つありそれぞれの顔がもつ視覚、嗅覚、聴覚は全て同期している…だから奴にはスキが無い。」


「強いところ教えてどうすんだ!」


いや待てよ…?隙がないならなんであいつはテンマとヒナタちゃんに殴られた?デカい図体で避けられないのはわかるけどあいつは殴られた時に驚いていた。もしかしたら。


「次はなんだ!?」


「へっ。持ってきておいて良かったぜ。ヒナタの宇宙ポットに置いてあったんだ。」


俺がケルベロスに向けて撃ったのは空気銃。それ自体に殺傷力はないが注意を引くことは出来るはずだ。


「お前の弱点わかったぜ。」


「俺に弱点だと?」


「顔が3つのお前は顔1つ1つが犬の特徴を持っちまってんだ。犬は聴覚、嗅覚に優れているけど目は悪い…。焦点を合わせるのが難しいしぼやけて見えてんだろ?それが単純に3倍…。」


「そんなものは匂いと音でわかんだよ!」


「じゃあなんでお前は殴られて驚いたんだ?答えはこの家の周りに咲いてる藤の花だろ?じいさんが地球から持ってきたものを育てたんだろうが…。お前はこの匂いのせいで自慢の嗅覚もろくに機能してないんじゃないか?音だけ聞いてから反応してもお前のそのでかい体じゃ反応しきれないんだろ?」


「…そんなことがどうした。そうだったとしてもてめえらの攻撃は俺には通用しねえ!」


「3つの脳みそが同期してるつうことは他の感覚も同期してんだろ?例えば痛覚とかな。」


「!?」


「おそらくお前は脳みそが3つなんじゃなくて1つが3つに別れてるだけだろ…。同じ脳だからこそ同期してんだ。だからお前は頭2つ殴られても100%のダメージは感じない。テンマ!ヒナタ!同時に3つの頭を攻撃すれば100%のダメージが与えられる!」


「へえ…。やるじゃねえかアラタ!」


「よし。やるぞ!ヒナタ!アラタ!」


「え?俺はやらないよ?おじいさんこれどうぞ。」


そうして俺は手に持っていた空気銃を桃太郎の父親に預けた。


「え?」


「え?」


「え?」


ん?どうしたんだみんな。不思議そうな顔して。せっかく弱点を教えてやったのに!


「な、なあ。お前さんも戦うんじゃないのか?」


「え?なんで俺が危険を犯さなきゃいけないんだよ。さっきじいさん息子の罪を償う的な話してたじゃないか。」


「…そうだな。」


他人の為に命をかけるほど俺は出来た人間じゃない。いつもやってやるぜ!的な雰囲気になると大体、俺にはピンチが訪れる。だからここら辺で逃げておく方が正解なんだ。それに自分の命より大切なものなんてないんだぜ…?


「アラタ…!手配犯の討伐ボーナスは討伐者に出るんだぞ!ケルベロスはBだがそれでも日本円で7000万くらい貰えるぞ!」


「マザコンをコピィイイイイ!おらぁぁぁあ!!」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


そうしてテンマの能力をコピーしてケルベロスに突っ込んで行った俺だが何故か今は生暖かいケルベロスの胃酸に浸かっている。


「どうしてえええええ!!!」


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