mission 5 キノウモオトトイモナベダッタキガスル


さあどこから逃げるか。

今いるここは宇宙空間…来る時に乗ってきた宇宙船を奪う他脱出の方法は無さそうだけど。


「おい…テンマくん外に出るにはどうすればいいんだ?」


俺は周りに聞かれないように隣にいたテンマに問いかけた。


「外…?君は馬鹿だな。宇宙には酸素がないから人間が出たら死ぬぞ?トイレならこの部屋を出て右に行ってまた右に行くとあるぞ?」


「ちげえよ!外に出るための宇宙船はどこにあんの?って聞いてんの!」


「なぜそんな物を探す…!君まさか逃げる気か?」


「ふっ…。桃太郎ってやつは相当やばいやつなんだろ…?今もどこかで被害にあってる人がいるかもしれない。そんなこと考えたら俺は居ても立っても居られないんだ。かと言って俺たちの隊全員が動くのは敵に気付かれる!だから俺が1人で先に乗り込んで捜査を始めるんだよ!」


「き、君はなんて素晴らしい男なんだ…!わかった。僕にも協力をさせてくれ!」


「ああ。頼むぜ、相棒!」


「相棒…!なんて心地のいいフレーズなのだろうか!」


よし。こいつがバカで助かった。


「た、隊長俺ちょっとトイレに〜。」


「きききききみはトイレの場所を知らないだろ?僕が案内してあげるよ!」


おい。わかりやすく動揺すんな。


「トイレ…ですか?わかりました。早見くん案内を。」


よし。部屋を抜け出すのには成功した…。あとは宇宙船のところまでこいつに案内させて…はっ!お、俺…運転できねえ!!


「て、テンマくーん?君って宇宙船運転できたりするかな〜?」


「NGSにある宇宙船は自動操縦AI?が装備されてるから運転手なんてものは必要ないよ。」


勝った。完全勝利だ。


マザコンの案内で俺たちは宇宙船のある部屋の前まできた。しかし扉の前には警備が2人。仮にこの2人をボコして突破したとしてもパスワードが入力できなければ扉は開かないようだ。


「どうやって中に入る?」


「簡単だ見ててくれ。」


どうやらこのマザコンには中に入る術があるらしい。アルファベット順もわからないバカだがここでは一応先輩。こう言う時は頼りになる。


「あのー。宇宙船に乗りたいんで通してください。」


なぬぅ!!やはりこいつは最上級のバカだ!


「君はどこの部隊所属だい?隊長の許可無しでこの部屋に入れることはできないよ。」


「そうですか。では。」


一瞬だった。入室を拒まれたマザコンはまず右側に立っていた警備員の顎に向かってハイキックを繰り出した。警備員は顔全体を守るためのフェイスシールドを着用していたにも関わらず脳震盪を起こし膝から崩れ落ちた。その異常事態に瞬時に反応し銃をマザコンに対して構えたもう1人の警備員だったがマザコンの拳はそれよりも早く警備員の顔面に届いていた。


へ、ヘルメットが割れた…。こいつとんでもない馬鹿な代わりにとんでもなく強い。


「よし。これで通れるね。」


「いや!良しじゃねえよ!!どーすんだよこれ!」


「え?後で謝ればいいじゃないか。」


「もはや謝って済む問題かこれ…。」


「とにかく中に入ろう。」


「パスワード知ってんの?」


「あ。」


暫しの沈黙が訪れた。


「どーーすんだよ!!ただ警備員ぶっ飛ばしたやつじゃねえか!」


「と、扉を壊すしかあるまい!」


いや。無理だろ。扉は鉄で出来てるし厚さは大体12cmくらいか。そんなもの握力が500Kgあるゴリラで壊せるかどうかだ。


「えいっ!」


壊せた。こいつはゴリラだったのか。


「お前さては人間じゃないな?」


マザコンの体型は普通よりもやや痩せ型。きんに君みたいな体型でもゴリラと同等の力を出すのは到底不可能。しかしこいつはこの体型でそれを成し得ている。考えられる結論はこいつが地球外生命体であると言うことだ。


「いや僕は日本人だよ。」


「な訳あるか!どこの国に鉄の扉壊す人間がいんだよ!」


「説明を受けていないのか?流石にNGSに入隊するための条件は聞いたよね?」


「あ、ああ。」


「幼少期…いや正確に言うと8歳から10歳の間に地球外生命体と接触した人間はその生物の特徴の一部を引き継ぐ可能性がある。僕は8歳の時にS級犯罪者ベルゼブブの特徴である超パワーを引き継いだから鉄の扉くらいなら簡単に壊せるんだよ。まあ、なぜ引き継ぐのかまでは解明していないんだけどね。」


はあ!?なにそれ?すっごいやん!え?てことはもしかしたら俺にもこいつみたいな力があるかもしれないってこと!?それって…すっごいじゃん!


「お、俺にもあんのかな!?そんな力!」


「有るかもしれないよ。だからここにいるんだろう?」


フオオオオ!!テンション上がってきた!そんな力あるなら俺も地球を守る一員になれるかもしれない…。でもそれとこれとは話が別だ。仮にそんな力あったとしても日本に戻って金儲けの為に使わせてもらうさ。よし。帰ろ。


部屋の中には沢山の宇宙船が置いてあった。おそらくは宇宙船の下に設置されているハッチから外に出られるのだろう。


ん?なんだこれ。太陽風式荷電粒子砲試作機…。なにこれ。絶対やばいやつじゃん。


複数の宇宙船の中に一つだけ異質に置かれたそれはおそらく兵器のようなものだろう。発射ボタンのようなところには日本語で大きく『押すな』と書いてある。こんなわかりやすく書いてあるものを押すバカなんてそうそういないだろうしこんなものより早く宇宙船を…はっ!今俺フラグを立ててしまったのではないだろうか。


「お、おい!テンマくん!これはさわっちゃ−−−」


「え?」


押していた。アホマザコンキラキラネームは押すなと書かれたそのボタンを人差し指でしっかりと押し込んでいた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る