第39話

「!!!!」


ノーティスに別れの言葉を告げた後、それを合図にしてレグルスの周りがなにやら不思議な光に包まれていく。

…ノーティスはその動きを封じたかったらしいが、もはや彼にできることは何もなく、ただただその光景を黙ってみている他はなかった。


自分たちの周りがまばゆい光に包まれ、体がふわっと浮き上がる感覚を覚えるエリッサたち。

そして彼女たちが次に目を開けた時、そこにはレグルスによって作られた、彼女とレグルスの家の光景が広がっていた。


「成功だわ!無事にみんなで戻ってきたのね!ありがとうレグルス!」


エリッサはいの一番にレグルスの体を抱きしめ、その思いをストレートに表現した。

一方で子どもたちの方は最初、何が起きたのかあまり理解でいない様子だった。


「あ、あれ??ついさっきまで僕らの目の前にノーティスがいたはずだけど…?」

「それにここはどこ??ここも王宮の中?」

「ノーティス、逃げちゃったのかな?」


思い思いの言葉を口にする子どもたちに対し、エリッサは優しい口調で説明を始める。


「大丈夫よみんな。もうここには怖い王子様もいないし、みんなにひどいことをする王宮の人間もいないの。だってここは王宮じゃないからね♪」

「「???」」

「このレグルスが、みんなを私たちの家まで瞬間移動させてくれたの!だからもう大丈夫よ!」

「「???」」


エリッサは子どもたちに事実をありのまま話し、そこに嘘は全くないものの、あまりに現実離れしたレグルスの存在などいきなり子どもたちに理解できるはずもなく、彼らはここが未だに王宮の中なのではないかと信じて疑わない。


「(い、いきなりこんなことを言っても訳が分からないよね…。ど、どうしようかな…)」


その時、そんな彼らの心を察したのか、レグルスはあえて分かりやすい方法で自身が聖獣であることを示すこととした。


「フンっ!!!!!」

「レ、レグルス…?」

「「ええええ!!!なにそれすごい!!!どうやってるの!!!」」


レグルスは子どもたちに向け、大きな虹を発生させて見せた。

その虹は物理現象として発生するものとは異なり、姿かたちが非常に鮮明に目に映るものであったため、子どもたちは大いに沸き上がった。


「フンっ!!!」

「「ええええ!!!!」」


そして息もつかせぬまま、レグルスが次に発生させたのは、一面に広がるお花畑だった。

しかもただのお花畑ではなく、時間とともに花の種類がグラデーションのように美しく変化する、まさに魔法のお花と形容するにふさわしいお花畑だった。


「(レ、レグルスすごすぎ!!!本当にきれい!!!)」


それには子どもたちだけでなく、エリッサまでもその心を奪われていた。

そしてそんなエリッサの姿を見て、心から満足したような表情を見せるレグルス。


レグルスのそれらの行いは、自身が聖獣であることを分かりやすく子どもたちにアピールするためのものであったものの、レグルスが満足しているのはそれに成功したからではなく、エリッサがうれしそうな表情を浮かべているところを見たからだった。


そんな不思議な力を目撃した子どもたちは、当然のようにレグルスやエリッサに質問攻めをする。


「今のどうやったの!!私もやってみたい!!」

「お姉ちゃんなら分かるんでしょ!!私にも教えて!!」

「さっきのお花畑すっごい綺麗だった…!また見てみたいなぁ…!」

「だ、大丈夫だよみんな!でもあんまりいろいろお願いしちゃったらレグルスも疲れちゃうから、今日はここまでにしようね!」


エリッサの言葉を聞き、どこか不満そうな表情を浮かべる子どもたちだったものの、エリッサに言われたことであるなら仕方ないと言った様子で、最後にはみんな素直にその言葉を聞き入れていた。


「それじゃあみんな、おうちの中に入って!おなかすいたでしょう?ご飯にしましょう!」

「「わーーい!!!!」」


子どもたちはエリッサの言葉に導かれるかのように、勢いよく家の中にへと入っていく。

そんな子どもたちに続いて後を追おうとしたエリッサの服の袖を、レグルスは自身の口でつかんだ。


「??どうしたのレグルス??なにかあった??」


そう疑問の声を上げるエリッサに向けて、レグルスはそれまで隠し持っていたある書類を差し出した。


「こ、これは…??」


一体何の書類かと頭を巡らせるエリッサ。

よく見てみると、その書類の表紙には王宮の刻印がはっきりと記されており、これがただの紙切れではないことを暗示していた。


「レグルス、これ持って帰っちゃったの??」

「♪♪♪」

「や、やっちゃったのね…」


得意げな表情を浮かべ、褒めて褒めてと言わんばかりの雰囲気を発するレグルス。

エリッサは一旦レグルスに言葉をかけるのを後回しにし、ひとまず差し出されたその書類に目を通してみることにする。


…そして間もなく、そこに書かれた衝撃的な事実を見てその腰をひっくり返すのだった…!

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