第35話
ノーティスの支配する王宮は非常に大きな建物であるため、遠目に見る分には中で起きている変化を確認しにくい。
しかしそんな背景がありながらも、たった今自分たちの目の前で起きていることはよく見てとれた。
「よしよし、この調子で少しづつ聖獣を
自らの作戦を続行することとしたノーティスは、その機嫌を非常に良いものにしていた。
エリッサを婚約破棄で追い出してからまだ半日もたっていない。
にもかかわらずこれだけのスピードで聖獣を我が物にする計画が進捗していることに、彼は自分で自分に酔い散らかしていた。
「(俺には想像ができている…!第二王子であるこの俺のもとに、聖獣ルグルスが頭を下げて従っている姿が…!その力を掌握することができたなら、もはや俺に敵などいやしなくなる…!もはやこの俺に文句を言ってくる奴はどこにも)」
ドガアァァァァン!!!!!
「!?な、何の音だ!?」
自分の頭の中に未来予想図を描いていたノーティス、その最中にとんでもないほど大きな音が王宮の中より聞こえてきた。
「(…い、いくら聖獣が手に入るから損害に目をつむるとは言っても、面子というものがあるのだぞ…。せめていい勝負くらいはしてくれなければ、第二王子としての威厳が…)」
バリイイイィィィィン!!!!!!
「っ!?こ、今度はなんだ!?」
全ては計画通りと言っておきながらも、起きている出来事にいちいち反応するノーティス。
…なんだかんだ言っても、あれほど自信満々に語った自分の計画が本当にうまく行っているのかどうか、心配になっている様子…。
そんなノーティスに対し、隣に立つシュルツが一つの提案を行った。
「ノーティス様、やはりここではなく彼らの身近で戦いをご覧になられてはいかがですか?この私もお供させていただきますよ?」
「う、うぅむ……」
その言葉を聞き、どうしたものかと頭を抱えるノーティス。
…しかしその提案は、決してノーティスのことを思って発されたものではなく…。
「(…もしかしたら、エリッサ様がお戻りになられたのかもしれない…。我々もあの現場に戻れば、エリッサ様に再会することができるかも…!)」
…シュルツがひそかにその目を輝かせている裏にあったのは、ノーティスでもレグルスでもなく相変わらずエリッサだけであった…。
しかしそんなシュルツの心をノーティスに見抜けるはずもなく、結局彼は言われるがままにシュルツの提案に乗ることを選んだ様子。
「やれやれ、仕方ない…。腑抜けな兵たちに前線で活を入れるのも、王たる者の役目…。この私が直々に尻を叩いて回れば、この状況も変わることだろう。(…なにより、一体あそこで何が起きているのかが気になって仕方がない…)」
そんな思いを抱えながら、レグルスの元へと戻ることを決めたノーティス。
そしてそこで彼が見ることになるものは…。
――――
「さぁ、第二王子であるこの私が直々に駆けつけてやったんだ!貴様ら、持てる力を存分に発揮するがいい!!」
王宮の中に舞いもどったノーティス高らかにそう言葉を叫び、兵たちを鼓舞して回っていく。
本人はそれが兵たちの力になると信じて疑っていない様子であるが、当の兵たちの気持ちは正反対だったようで…。
「な、なんで戻ってきたんだよ…。あのまま外にいてくれればよかったのに…」
「ま、また無茶を行ってくるに決まってるぞ…」
「どこまで俺たちはついてないんだよ…」
と、ノーティスが戻ってきたことを知るや否や愚痴をこぼす兵がほとんどであった…。
しかしそんな彼らの心情など全く知らないノーティスは、近くにいた一人の兵にある質問を投げかけた。
「おいお前、さっきの音は何だ?説明しろ」
「え、えっと…。と、突然に動き始めた聖獣に一斉に攻撃を仕掛けたのですが、すべて跳ね返されてしまいまして…」
「バカが!!!!いったいどんな間抜けな攻撃をすればそうなるのだ!!」
「も、申し訳ありませんっ!!た、ただいま迅速に罠を張りなおしまし、聖獣の動きを止めようとしておりまして…」
と、兵がそこまで話をしたときの事だった。
偶然にもノーティスの間近に仕掛けられていた魔法罠のもとに、レグルスが駆け出してきたのだった。
「…ククク、やはり私はもっている。聖獣を罠にはめる瞬間をこうして間近でこの目にできるとは…♪」
罠への直撃コースを走っているレグルスの姿を見て、ノーティスは心の底から湧き出る笑みを隠せない。
「さぁ、かかるがいい!ここまで調子にのって王宮の中を好き勝手に荒らしてきた聖獣よ、
ノーティスがさっと身を引いたのと同時に、レグルスが罠の仕掛けられた床を駆け抜けた。
そしてそれをトリガーにして罠が起動し、相手の魔力を根こそぎ吸収する術が発動、標的は当然レグルスであった。
「ざまぁみろ!!!これでお前も終わりだ!!!」
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