第23話
「いやはや、まさかそんなことまでできるとは…。やはり聖獣とは、なかなか面白い性質を持っているのだな♪」
そう言葉を発しながら、一人の男がエリッサとレグルスの前に姿を現した。
…ほかでもない、今回のパーティーを開催した張本人である、ノーティス第二王子その人である。
「久しぶりじゃないか、エリッサ。元気にしていたかな?」
「お、お久しぶりです、ノーティス様…」
上機嫌な様子を隠さないノーティスに対し、エリッサはどこか居心地の悪そうな表情を浮かべる。
「なんだ、そんな暗そうな表情を浮かべて…。なにか嫌な事でもあったのか?」
「い、いえ……そういうわけじゃ……」
これまでノーティスから散々な扱いを受けていたエリッサにとって、それらをすべて忘れてノーティスと普通に話をすることは、なかなかに難しいことであった…。
ノーティスはそんなエリッサの様子を見て、的外れな持論を大々的に繰り出し始める。
「分かる、分かるよエリッサ…。本当の運命の相手に気が付いた時というのは、誰しもそういう状態になってしまうというものだ。君だってこれまで気づいていなかっただけで、心の奥底ではこの私と結ばれたくて仕方がなかったんだろう?」
「え、えっと…」
ノーティスがあまりに自信満々にそう告げてくるため、エリッサも否定するにも否定できなくなってしまう。
そんな彼女のリアクションを見ながら、ノーティスはその心の中でこう言葉をつぶやいた。
「(…この俺に話しかけられただけで、きっと心臓が破裂しそうなほど興奮しているのだろう…。やはり女なんて、俺の前じゃ単純で簡単なものよ…♪)」
エリッサの雰囲気を見てやや調子に乗り始めたノーティスは、そのままゆっくりと彼女との距離を短くし、その肩に自身の手を置いた。
「正直になろうじゃないかエリッサ。私も心の中では君との関係を望んでいるんだ。君と私が婚約関係になることこそ、お互いが胸の内で望んでいたことだろう?」
「(う……き、気持ち悪い…)」
近距離でそう言葉をつぶやくノーティスに対し、大きな嫌悪感を抱くエリッサ。
…そんな彼女の姿を見て、彼女の隣に座るレグルスがノーティスに対し、とてつもない殺気を孕んだ視線を送りつける…。
「…さて、我々はもう夫婦になることが決まったんだから、少しくらいこんなことをさせてもらっても構わないな?♪」
「っ!?!?!?」
ノーティスはそう言いながら、自身の左手をエリッサのお尻の方に、右手を胸の方に向けて動かし始め、それぞれが目的の物をつかまえる。
ノーティスはその触り心地を体感しつつ、率直な感想を口にした。
「…まぁ、悪くはない感触だな。尻はもう少し小ぶりで張りがある方が好きだが。胸の方は…妙に硬い気が…………!?!?!?!?」
刹那、ノーティスはその両手を一瞬のうちに体から離し、それまで触っていた人物から同じく一瞬のうちに距離をとった。
…見るに堪えないほど脂汗をかいた、小太りの中年男性貴族から…。
「ノ、ノーティス様…もしかして酔っておられるのですか…?この私の尻や胸を触って何がされたかったのですか…??」
「ひっ!?!?!??!」
…自分より数段年上の男の尻や胸を触っていたという事実に、ノーティスはその体を戦慄させ、震え上がらせる…。
「(い、一体どういうことだ…!?エリッサのやつは一体どこに…!?)」
その場できょろきょろと周囲を見回して見せるノーティス。
すると、エリッサの姿をすぐに見つけることができた。
彼女がたたずむその場所と彼女の雰囲気、そしてこの貴族男の雰囲気から考えるに、この状況の答えはノーティスの頭の中にひとつしか思い浮かばなかった。
「(…レグルスのやつめ…。エリッサとこの男の場所を瞬時に入れ替えたというのか…)」
当のレグルスはといえば、エリッサの横で彼女に体を撫でられ、その尻尾を上機嫌に上下左右に動かしまくっている。
…肩を触るまではぎりぎり許せたが、それ以上の場所を触ることはレグルスは許せなかったらしい。
「(お、おのれ…小動物の分際で生意気な…。この俺にこんな不快な思いをさせやがって…)」
自分から始めたことだというのに、一方的に二人の事をにらみ上げるノーティス。
そんな彼に対し、先ほど体を触られた貴族男性がやや興奮した様子で言葉をかけた。
「あ、あの、ノーティス様?さきほどの触り方、なかなかに興奮するものでした
…。よ、よろしければ、もう一度私の体をあなた様の手で…!」
「ひっ!し、知るかそんなのっ!!」
ノーティスは貴族男性を強引に引きはがすと、そのままある場所を目指して走り始めたのだった。
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