聖歴1558年 5/3 快晴
聖歴1558年 5/3 快晴
僕が生まれ育った町を出て今日で2日目。
海は昨日と変わらず穏やかで、昼間の太陽はうるさいくらい照っていた。
この船「ビクトリア号」の乗組員は、エルナンド船長が各地の港町を船で周り集めた人達だ。
乗組員となる条件は、健康的な肉体と精神を有していること。そしてなにより大切なのは、人類史上初の世界周航を成し遂げたいという強い野心を持っていること。
世界一周にも及ぶ長期の航海には多大なる苦難が待っているだろう。
それらの試練に立ち向かえるような強い信念を持った人間じゃないと、この船の乗組員は務まらないからだ。
かくいう僕も、生まれ育った狭い田舎町を飛び出したいという命をかけた航海に出るには十分すぎるほどの強い動機を持っている。
この船は今、海を西周りに進んでいる。目標はオウム諸島。そこで一旦停泊し、十分な補給と休養を済ましてから南へと進路を変えて、「導きの大陸」を目指す。
「導きの大陸」については、過去にその大陸に流れ着いたある船の船長の航海日誌に、色々と書かれているらしい。
エルナンド船長はその航海日誌の写しを持っていて、その「導きの大陸」までの航海はその写しを頼りに行うんだとか。
その大陸について船乗りの間では、色んな噂がある。
なんでもその流れ着いた船は、3ヶ月に及ぶ漂流の末もうダメかと思われた矢先に「光の柱」を水平線の遠くに発見して、藁にもすがる思いで光の柱めがけて船を進ませたらその大陸に辿り着いたとか。その逸話から「導きの大陸」という名前が付けられたんだって。
また流れ着いた浜辺から広がるジャングルには、漂流者の行手を阻む独自の進化を遂げた凶暴な動植物が多数生息していたんだとか。
そしてそのジャングルを掻き分け奥へと進むと、人喰い文化を持つ原住民が住んでいて、捕まったら生きたまま火炙りにされて食われるんだとか。
どこまでほんとか嘘か分からないけど、とにかくその大陸にはまだ僕達が出会ったことのないような世界が広がっているんだろう。
まあ、ひとまずはオウム諸島という穏やかで平和な島を目指しているから、なんの心配もない。
『チャールズ・ロビンソンの航海日誌』から抜粋)
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