第50話
日曜日、僕達はいつも通りにお屋敷の前に集まっていた。ただ、いつもと違うのは進君と四季さんもジャージ姿であり、僕はそれに疑問を覚えた。
「二人もジャージなんて珍しいね?」
「ああ。今までは私服で参加してたけど、どうせならジャージの方がそれらしいなって思ったんだ。まあ四季も同じ事を考えてるとは思わなかったけどな」
「家にちょうどジャージがあったので。そうじゃなかったら今日も私服だったので一人だけ浮いて恥ずかしかったかもしれません」
「別に私服でも良いんだけどね」
「そうですね。さて、今日はどのようなお散歩になるのでしょうね」
「それはお題次第だな。よし、それじゃあ早速お題を見ていこうぜ」
頷いた後、僕達は携帯を取り出した。そしてお題の画面でワラシちゃんがお題を御籤箱から出そうとしていたその時だった。
「あっ、ハルちゃんだ!」
「え?」
突然そんな声が聞こえて僕達はそちらに視線を向ける。するとそこにはどことなく四季さんに似た茶髪のショートカットの女の子がおり、僕達が驚く中でその子は嬉しそうに笑いながら近づいてきたが、驚いたのも無理はなかった。その子の声が妖怪さんとGO! のワラシちゃんの声そっくりだったからだ。
「おじさん達から今日は友達と一緒に遊びに行ったよって言われたから嬉しさ半分寂しさ半分でハルちゃんが住み始めた街を歩いてたんだけど、会えるなんて思ってもみなかったよ! 座敷わらしパワー、炸裂だね!」
「お、お姉ちゃん……皆さん驚いてるから。まあ私も驚いたけど……」
「あはは、ごめんごめん。まずはじこしょ……って、みんなも妖怪さんとGO! やってくれてるんだね!」
「そうですけど……」
「あの、貴女は……?」
早穂さんが首を傾げると、その子はニッと笑った。
「私はハルちゃんの従姉妹で四季
それを聞いて僕達は更に驚いた。
「四季さんの従姉妹さんがワラシちゃんの声優さん……!?」
「声優の仕事は芸名の“NATU”でやってますからね。でも、どうしてお姉ちゃんがここに?」
「少しまとまったお休みが貰えたからハルちゃんに会いに来たんだ。最近引っ越したって聞いたし」
「……ちょっと事情があったから。とりあえず私達は共田君達の活動に参加するから、お姉ちゃんは家に──」
「活動? 何かやってるの?」
四季さんの言葉を遮る形でしてきた問いかけに四季さんが溜め息をつく中、進君は笑みを浮かべながら答えた。
「こっちにいる二人が妖怪さんとGO! を使った部活動を個人的にしているんです。それで、俺と従姉妹さんが見学者という形で昨日今日と参加しているんですよ」
「へー、そうなんだ! それなら私も参加してみたいな!」
「お姉ちゃん!」
四季さんが少し怒った様子で声を上げる中、進君は笑みを浮かべたままで頷いた。
「俺は良いですよ。歩達はどうだ?」
「僕も別に大丈夫だよ」
「私も大丈夫ですが、陽花さんが……」
早穂さんが四季さんを心配そうに見る中、四季さんは夏葉さんを怒ったような目で見てから溜め息をついた。
「……私も良いですよ。お姉ちゃんは結構強引なので断っても無駄ですから」
「そんなことないけどなぁ……でも、せっかくお許しが出たわけだし、良い子にしてついていくよ。ところで、どちらが部長さん?」
「ぼ、僕ですけど……」
「そうなんだね! それじゃあよろしくね、部長さん!」
人懐っこそうな笑みを浮かべながら夏葉さんが抱きついてくる。
「わわっ!?」
「もう、お姉ちゃん……!」
「あははっ! これは歩のモテ期か?」
「そんなんじゃないよ!」
「モテ期……そういう木があるのですか?」
「後で説明するから!」
そしてどうにか夏葉さんに離れてもらった後、僕達はワラシちゃんが出していたお題に目を向けた。
「えーと……」
「“適当に乗り換えながら30分電車に乗って、美しい写真を撮ろう”! これが今回のお題だよ!」
「お、生ワラシちゃんボイス! お題が出た時はデデン! みたいなSEが鳴るけど、今後のアップデートでワラシちゃんが読み上げてくれたら喜ぶユーザーは多そうだな」
「それは前から要望は出してるけど、中々実装まではいかないんだよね。あとはお題の追加とか妖怪達との信頼度ボーナスの実装とか」
夏葉さんが残念そうに言うと、早穂さんは不思議そうに首を傾げた。
「そういった事を私達に話しても大丈夫なのでしょうか?」
「ダイジョブダイジョブ。私がそうしてほしいって前からお願いしてるアイデアなだけだし、今後確実に実装される機能というわけじゃないしね」
「まあその辺りは歩きながら聞く事にして、そろそろ行こうぜ、歩部長」
「うん、そうだね。それじゃあ今日の活動を始めていこうか」
みんなが頷いた後、突然のゲストを交えて僕達の部活動は今日も始まった。
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