第49話
電車を降りた後、数分かけてお屋敷まで歩くと、門の前には早依さんと歌穂さんの二人が立っていた。
「お父様、お母様、ただいま帰りました」
「おお、お前達か。おかえり」
「おかえりなさい、皆さん。本日の活動はどうでしたか?」
「今日も楽しく出来ました。美味しい定食も食べられましたし」
「はっはっは、それならよかった。さて、そちらが今回初めて見学をしに来た子だな」
早依さんが四季さんに視線を向けると、四季さんは緊張した様子で頭を下げた。
「し、四季陽花です」
「四季さんはこの前ウチのクラスに来た転校生なんです」
「四季、早依さん達はスッゴく気さくな人達だからそんなに緊張しなくても良いぜ。ある程度の礼儀は当然あるべきだけどな」
「ああ、緊張される方がやりづらいしな。だから、肩の力は抜いてくれて良い。君が礼儀正しい子なのはパッと見てわかったしな」
「は、はい」
まだ少し緊張した様子ではあったけれど、四季さんの表情は多少和らいでおり、その様子を見て僕達は笑い合った。
「やはりお父様はスゴいですね」
「うん、そう思うよ。さて、それじゃあ今日も散歩を終わりにしようか」
「だな」
「はい」
僕達は携帯を取り出して自分達が食べた定食の写真をアップしてから散歩を終わるをタップし、リザルト画面に表示された妖怪を獲得するをタップした。すると、画面内に深い霧が立ち込めた後に座敷わらしらしいシルエットが現れたけれど、僕は通常色の座敷わらしは持っているのでこれは期待した。
そして霧が晴れていくと、そこには茶色のおかっぱ頭で紺色の着物姿の座敷わらしが立っていた。
「やっぱり、色違いの座敷わらしだ!」
「お、マジか! 俺は犬神だったぜ。色違いじゃないけどな」
「私は
「私は豆腐小僧でした。それにしても、座敷わらしの色違いだなんてスゴいですね」
「これで僕もようやく色違いを手に入れられたよ。座敷わらしは通常色もいるからこれでどっちもゲット出来たしね」
「お、良いじゃないか。歩君はだいぶ座敷わらしに好かれてるんだな」
「座敷わらしは住み着いた家に幸福をもたらすようなので、ゲームとはいえ座敷わらしに好かれている歩君にも何か幸運が訪れるかもしれませんね」
早依さんと歌穂さんの言葉を聞いて僕もそうなれば良いなと思った。けれど、その幸福は僕のためじゃなく家族や友達のような大切な人のために訪れてほしい。みんなが楽しそうに笑ってくれてる方が僕は嬉しいし、幸せなのだから。
携帯をしまいながら考えていた時、四季さんは携帯を軽く握りながら僕の方を向いた。
「共田君、明日も見学に来ても良いですか?」
「良いけど、予定とかはないの?」
「今のところ、誰からも誘われてないので。それに、今日の件だって両親は喜んでくれてるので明日も行ってくるって話したら喜んでくれると思うんです」
「そっか。僕はもちろん良いよ」
「私も大丈夫です。進さんはどうしますか?」
「せっかくだから俺も参加するかな。明日も予定はないし、何よりちょっと面白そうな事になってるようだからな」
進君は笑い、早依さんと歌穂さんもその言葉の意味がわかった様子で笑い合う。
「面白そうなってどういう事? 早依さんと歌穂さんもわかってるみたいだけど……」
「なにそんなすぐにわかろうとしなくて良いさ」
「そうですね。それに……」
「それに……?」
「ふふ、なんでもありません。これから頑張ってくださいね、歩君」
「は、はい……?」
何がなんだかわからないまま僕は答え、早穂さんも首を傾げる中で四季さんは少し顔を赤らめながら俯く。結局その言葉の意味はわからなかったけれど、頑張るのは当然だ。散歩部の部長として副部長である早穂さんの体調管理や進君達のような見学者達にも色々目を配らないといけないのだから。
「よし、明日も頑張ろう」
みんなの笑顔を見ながら僕は拳を軽く握って独り言ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます