第48話

 夕方頃、僕達は電車に乗っていた。心海ちゃんの家の定食屋でお昼を食べた後、僕達は心海ちゃんにまた町中を案内してもらった。その途中で心海ちゃんと同じ学校の子と出会ったが、その子達も別に悪い子達というわけではなく、僕達も混ざって遊んだからか心海ちゃんもその子達と楽しく遊ぶ事も出来て最後にはまた遊ぶ約束も出来ていた。


 そして僕達が帰る頃には心海ちゃんはすっかり寝てしまっていて、ご両親にまた来る事を伝えてもらう事にして僕達も帰路に着いていた。



「初めての遠征ではあったけど、良い感じになって良かったなあ」

「そうだな。美味いもんも食べられて楽しく遊ぶ事も出来た。今回の部活も大成功なんじゃないか?」

「ふふ、そうですね。ですが、お家に帰るまでがお散歩ですから」

「遠足と同じですね」

「そうだね。早穂さん、疲れてない? もし眠たいとかあったらおぶってくよ?」



 早穂さんは笑いながら首を横に振る。



「ありがとうございます。ですが、まだ大丈夫です。いつもよりは疲れたかなとは思いますが、この疲れもとても心地よいですし、しっかりと自分の足で帰りたいんです」

「うん、わかった。でも、無理はしないでね? 何かあったらすぐに言ってよ?」

「わかりました。お気遣いありがとうございます」



 微笑む早穂さんに対して頷いていた時、僕達のやり取りを見ていた四季さんは不思議そうな顔した。



「お二人は付き合ってるんですか?」

「え!? つ、付き合ってないよ!?」

「四季、たしかにこの二人は付き合ってない。けど、その辺の恋人なんかよりは結構固い絆では結ばれてるんだ」

「進君も何を言ってるの!?」

「固い絆……ふふ、とても良い言葉ですね」

「早穂さんまで……」



 溜め息をついていた時だった。



「……そっか、付き合ってないんだ」



 そんな言葉が四季さんから聞こえた気がして、僕は首を傾げた。



「四季さん、どうかした?」

「なんでもないです。ただ、羨ましいなとは思います。そういう関係の人は私にはいないので」

「まあ中々出来るもんではないよな。俺だって羨ましいわけだし」

「二人からそう言われるなんて……」

「ふふ、それならお二人でそうなってみても良いのではないですか?」



 それを聞いて四季さんは驚く。



「魚倉君と私が……?」

「はい。今日一日見てみてお二人の相性が悪いようには見えませんでしたし、今日の出来事をきっかけにお互いの事を知ってみるのはどうでしょうか? もちろん、私達ももっとお二人と仲良くなりたいです」

「そうだね。僕もまだまだクラスメート達には馴染みきれてないけど、だからこそ一緒に馴染んでいけるし、まずは僕達の事を色々知ってみてほしいな」

「まあたしかにそうだな。とりあえず連絡先の交換から行こうぜ。この二人みたいに夜に電話をするみたいなのも面白そうだしな」

「……そうですね。是非お願いしたいです」

「うん、わかった。それじゃあ電車を降りて、お屋敷に戻ったら早速やろうか」



 三人が頷いた後、僕達の町の駅に着くのを待ちながら今日一日の出来事について話を始めた。

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