第47話
心海ちゃんとの出会いから約一時間後、僕達は心海ちゃんがよく遊ぶという公園で休憩していた。心海ちゃんは本当に活動的な子で、この一時間の間に僕達は色々なところを案内されており、早穂さんの体調はどうかと度々確認をした。
けれど、早穂さんはまったく疲れていない様子で楽しんでおり、四季さんと一緒に心海ちゃんと楽しそうに話す早穂さんの姿を見て僕は安心しながらもそれでも注意は続けようと感じた。
そして十数分かけて再び駅に戻ってきた頃、心海ちゃんのお腹からクゥという可愛い音がした。
「お腹空いちゃった……」
「まあ結構色々なところを案内してもらったしな。時間的にも程よいからそろそろ俺達も昼飯にしようか」
「そうだね。それで、さっき駅の周辺地図を見た感じなんだけど」
僕が説明をすると、心海ちゃんはパアッと顔を輝かせた。
「そこ知ってる! 案内してあげるね!」
「それは嬉しいけど……」
「心海ちゃんだってそろそろ一回帰らないと……」
「だいじょーぶ! ほら、行こ!」
はりきった様子で歩き始める心海ちゃんに続いて僕達は歩き出す。そして駅から数分かけて歩くと、目当ての定食屋が見え始め、心海ちゃんは迷う事なくドアを開けて中へと入った。
「たっだいまー!」
「ただいまって……もしかして心海ちゃんのお家だったの?」
「そーだよ! だから大丈夫って言ったでしょ?」
「はは、なるほどな」
「これならたしかに大丈夫ですね」
「ですね」
早穂さん達が笑いながら話した後、僕達も中へと入った。その定食屋は心海ちゃんのご両親が二人でやっているそうで、心海ちゃんが明らかに年上な僕達を連れて帰ってきた事を驚いていたが、駅前で出会ってから今までの事を話すととても感謝された。
そしてそれぞれの注文を終えて心海ちゃんと話しながら待っていると、それらは四つ揃って運ばれてきたが、そこには注文した覚えのないアイスクリームもあった。
「あの、これって……」
「心海と遊んでくれたお礼だよ。この子、人懐っこいのは良いんだけど、ちょっと自分勝手がすぎるところがあってね。同い年の子ともうまくやれないでいたんだよ」
「なるほど……ウチにも小学生の弟妹がいますけど、その子達が言うにはやっぱりこのくらいの子って自分が自分がってなる子はどうしても多いみたいです。でも、心海ちゃんは元気いっぱいな良い子っていう印象でしたよ。案内しながらどんなところなのかも説明してくれましたし、おかげで僕達も楽しかったですから」
「そうか……心海、良いお兄さんお姉さん達に面倒を見てもらえてよかったな」
「うんっ!」
お父さんに頭を撫でられながら心海ちゃんは満面の笑みで頷いており、早穂さん達もその姿を微笑ましそうに見ていた。そして揃っていただきますと言ってから食べ始めると、進君達は笑みを浮かべた。
「うまっ! チキンカツも本当にサクサクでうまいけど、味噌汁もしっかりと出汁が効いてて何杯でもいけそうだ!」
「私の焼き魚定食も美味しいですよ。とても脂が乗っていますし、ご飯との相性も抜群です」
「本当に美味しいですね! 定食という物を初めて食べましたが、唐揚げも衣がサクサクで噛んだ瞬間に肉汁がジュワッと出てきてとても美味しいです!」
「このコロッケ定食も美味しいよ。ふふ、ここに来られて本当によかったね」
早穂さん達が揃って頷いた後、僕達は心海ちゃんやご両親が見守る中でおかずを分け合いながら美味しいご飯を楽しんだ。
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