第46話
「わぁ……景色がどんどん流れていきますね。見ていてとてもワクワクします……!」
車窓から見える景色を早穂さんが目を輝かせながら見る。お屋敷を出発した僕達は最寄りの駅まで行き、二駅先の場所に向かうために電車に乗った。
ただ、早穂さんは駅を使うのも初めてだったため、切符の買い方から改札の通り方まで教えながら乗る事になっており、その一つ一つを嬉しそうな顔でする早穂さんの姿に僕達は微笑ましさを感じていた。
そうして一駅目が過ぎ、二駅目にもう少しで着こうとした時、早穂さんは目を輝かせながら僕達に視線を向けた。
「そろそろ着きますね! 今回は何があるのか本当に楽しみです!」
「僕達の部活動で電車に乗ったのは今回が初めてだしね。とりあえずあまり遅くなってもよくないし、夕方ぐらいに帰る想定をしておいて、予めその時間の電車を調べておこうか」
「その方が安心して歩き回れるからな。けど、吉良さんにも予め連絡しておいた方が良くないか? 昼飯の件とかあるだろうしな。もちろん俺達もだけど」
「そうですね。では、電車を降りたら芽衣子に電話をします」
早穂さんはとても楽しそうであり、その姿を見て僕は嬉しくなった。そして電車を降りて駅の外に出ると、そこはまったく降りたことのないところだったため、見慣れぬ景色にワクワクすると同時に少し緊張をしてしまっていた。
「ここが最寄りの駅から二つ先のところ……」
「週末だからか広場には人がいっぱいいますね。家族連れやカップルもちらほら見受けられます」
「そうだな。さて、今回のお題の二つ目は定食を食べる事だったし、まずは定食屋を見つけないとな。という事で歩部長、リサーチは任せたぜ」
「それは良いけど、この近くにあるかな……」
僕は近くにあった周辺の地図を見に行った。それによると、最寄りの定食屋さんは駅から歩いて五分程度のところにあるらしく、ある程度の道順を確認してから僕は早穂さん達のところに戻った。
すると、そこには小学生くらいの知らない女の子がおり、早穂さんや四季さんと一緒に楽しそうに話をしていた。
「進君、あの子は一体……?」
「さっき話しかけてきた子だよ。早穂さんと四季を可愛いと思って近づいてきたみたいで、お前に調べてもらってる間にすっかり仲良くなったみたいだ」
「とても楽しそうに話しているしね」
「ああ。けど、そろそろ場所を移したいな。さっきから周りの奴らに見られててあまりいい気分がしないんだ」
進君は居心地が悪そうに辺りを見回す。進君の言う通り、周りの人達は僕達、正確には進君や女の子と話す早穂さんと四季さんを見ており、大人達は微笑ましそうに見ていたが、同年代の人達は明らかな好意の視線を向けていた。
「進君は学校でも異性から人気があるって聞くから、こういう視線には慣れてると思ってたよ」
「慣れてはいるけど、結構嫌なもんだぞ? 見てくれだけ見て判断されてる感じがしてな」
「そうなんだ。僕には経験がないからちゃんとはわかってあげられないけど、それって辛そうだね。今だって僕にはまったく視線は向いてないし」
「その分、いつも早穂さんからはばっちり向いてるだろ。さて、とりあえず場所を移そう」
「そうだね」
僕達は女の子と話す早穂さん達に近づいた。
「早穂さん、四季さん、だいたいの場所はわかったから、そろそろ移動するよ」
「あ、わかりました」
「
すると、心海ちゃんは残念そうな顔をした。
「えー……もっとお姉ちゃん達とお話ししたいのに……」
「そう言われましても……」
「どうしたら良いですかね……」
早穂さんと四季さんが困ったように顔を見合わせる中、僕はある事を思いつき心海ちゃんに話しかけた。
「それなら心海ちゃんがおすすめの場所を案内してもらえないかな?」
「おすすめの場所?」
「そう。そうすれば僕達は色々な物が見られて楽しいし、心海ちゃんもお姉さん達ともっと一緒にいられる。どうかな?」
「わあ、それ良い! 心海、案内する!」
「うん、ありがとう。みんなもそれで良い?」
早穂さん達が頷くと、心海ちゃんは嬉しそうな顔をした。そして僕達は心海ちゃんの案内に従って歩き始めた。
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