第45話
土曜日、僕はいつも通りに早穂さんのお屋敷に向かって歩いていた。今日は進君が活動の見学に来る上、誰かを連れてきたいと言っていた日なので、誰が来るのだろうと朝から少しワクワクしていた。
「宇佐美君とか飛騨君かな? けど、それだったらたぶん二人揃って連れてきそうだし……」
どちらかに予定があって片方だけ連れてこようとしているという可能性もあるので何とも言えないが、何となく宇佐美君や飛騨君がその連れてきたい人というわけではない気がしていた。
そうして歩き続ける事数分、お屋敷の門の前に着くと、そこには早穂さんとお屋敷で働いているメイドの吉良さんが立っていた。
「早穂さん、おはよう。吉良さんもおはようございます」
「おはようございます、歩さん」
「おはようございます、共田様。本日はご学友の方もご一緒に部活動に励まれるとお嬢様より伺っていますが、ご一緒ではなかったのですね」
「進君はもう一人と合流してからここに来るみたいです。それにしても、本当に誰なんだろうなぁ……」
「歩さんもご存じではないのですね」
僕は頷く。
「うん。それとなく進君に聞いてみたんだけど、当日まで内緒って言ってたからね。まあ進君が連れてくる人なら悪い人ではないだろうし、そこは心配してないんだけどね」
「ふふ、先日の件もあってか歩さんの魚倉さんへの信頼度は高いようですね」
「そうだね。あ、来たみたいだよ」
早穂さんと吉良さんが背を向けている方から進君と誰かが歩いてくるのが見え、僕は大きく手を振った。
「おーい、進君ー!」
進君はそれに対して手を振って応えながら歩いてきた。そして僕達の目の前で足を止めた時、一緒にいた人の姿を見て僕は驚いた。
「え、四季さん? 進君が連れてきたいって言ってたのは四季さんだったの?」
「そうだ。せっかく同じアプリやってるなら一緒にやりたいと思ってな。軽く散歩部の事について話しながら一緒に活動をしてみたらどうかって話したらやってみたいって言ってくれたんだよ」
「クラスには少しずつ馴染めていますけど、それでもまだ休日に一緒に遊べるような人はいないので、校内を案内してくれた共田君がいるなら行ってみたいなと思ったんです」
「そうだったんだね。そう言ってもらえて嬉しいな。今日はよろしくね、四季さん」
「こちらこそよろしくお願いします」
四季さんが綺麗なお辞儀をしていると、早穂さんは四季さんを見ながら僕に話しかけてきた。
「歩さん、もしかしてこちらの方が先日来られたという転校生の方ですか?」
「そう、四季陽花さん。四季さん、こちらは御供早穂さんとメイドの吉良芽衣子さん。早穂さんはご両親が二人とも社長さんをやっている社長令嬢でここのお屋敷に住んでいて、芽衣子さんはここでメイドさんをしているんだ」
「初めまして、御供早穂と申します。本日はよろしくお願いいたします」
「吉良芽衣子です。本日はお嬢様をよろしくお願いいたします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします……」
四季さんが少し緊張した様子で答えているのを見て進君はクスリと笑った。
「まあいきなりご令嬢と会ったらビックリするよな。けど、早穂さんは気さくな人だし、話しやすい人だから安心して良いぞ」
「そうだね。そういえば、この前から進君も名前で呼んでるけど、それって早依さん達と区別するため?」
「ああ。早穂さんが名前で呼んで良いのは家族や歩だけだって言うなら名字で呼ぶのに戻すけどな」
早穂さんは微笑みながら首を横に振る。
「そんな事はありませんよ。なので、四季さんも早穂と呼んでください。私も陽花さんとお呼びしますので。そして魚倉さんの事も進さんとお呼びしますね」
「わ、わかりました」
「わかった。それじゃあ早速今日のお題と行こうぜ」
「うん」
僕達は携帯を取り出して妖怪さんとGO! を起動する。そしてお題の画面に移ってワラシちゃんが振った御籤箱から出てきた御籤棒に目を向けた。
「“二駅先で電車を降りて、定食を食べよう”か。吉良さん、電車で二駅先に行ってくるのは大丈夫ですか?」
「二駅先であれば早程遠くではありませんから問題はありません。ですがお嬢様、何があるかはわかりませんので、十分に気をつけてくださいね」
「もちろんです。では早速参りましょう」
頷いた後、見学者二人を連れた僕達の部活動が幕を開けた。
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