第43話
「それで、こっちが……」
「なるほど……」
お昼休み、昼食を食べ終えた僕は四季さんを連れて校内を歩いていた。何故そんな事になっているのかといえば、仙田先生から四季さんに校内の案内を頼まれたからで、仙田先生が言うには他の男子だと不安だからなのだそうだ。
その結果、僕は大変そうだなという顔をしてくるサッカー部トリオを除いた男子達から悔しさと羨ましさが入り交じった目を向けられ、女子からは色々な事を出来れば聞いてほしいとお願いされていた。
そうしてある程度校内を案内し終えた頃、携帯がブルッと震え、取り出してみるとそれは妖怪さんとGO! にメッセージが来た通知を報せる物だった。
「早穂さんからだ」
「早穂さん? 知り合いなんですか?」
「うん。妖怪さんとGO! っていうアプリを一緒にやってる子だよ」
「妖怪さんとGO! なら私もやっていますよ。始めてまだ数日ですけど」
「そうなんだね。ウチのクラスでもやってる人はいるから話が弾むと思うよ」
「そうですね。その話もしてみます」
四季さんはふわりと笑う。可愛らしい顔立ちをしているためその笑顔もあらゆる人を魅了しそうな程に可愛いもので、前の僕だったら照れてしまってまともに話せなかっただろう。ただ、普段から早穂さんの事を見ているからか僕は平常心でいる事が出来、クラスの男子達がこの笑顔を見たら恋に落ちる人が多いだろうなぁと考える余裕すら出来ていた。
そして四季さんに一言断ってから早穂さんからのメッセージを見るために妖怪さんとGO! のアプリを起動し、ワラシちゃんの声でタイトルが読み上げられたその時だった。
「……お姉ちゃん」
四季さんはポツリと呟いた。
「お姉ちゃんって?」
「あ……いえ、気にしないでください」
「う、うん」
少し気にはなったけれど、僕はとりあえず早穂さんからのメッセージを確認した。
「へえー……雪女が進化したんだ。初めて手に入れた妖怪だったし、嬉しいだろうなぁ」
「初めてということは、まだ一段階目の進化ですか?」
「そうみたい。因みに、僕は犬神が初めての妖怪なんだけど、まだ素材が集まらなくて進化出来てないんだ」
「そうなんですね。私は座敷わらしです。同じ座敷わらしだからかワラシちゃんの声優さんがこちらも担当しているみたいですよ」
「あ、やっぱりそうなんだ。四季さん詳しいんだね」
メッセージに返事をしながら感心していると四季さんは少し哀しそうに笑った。
「おねえ──知り合いから聞いた話なんですけどね。その知り合いは妖怪さんとGO! をリリース初日からやっていて、既に色違いの妖怪もいるみたいです」
「僕の友達の早穂さんは犬神の色違いを持ってるよ。色違いを持ってる人ってなんだか羨ましいよね」
「それは思います。特別感があってなんだか良いんですよね」
「うんうん」
そんな事を話している内に僕達は教室へと戻ってきた。すると、女子達が次々と僕達に近づいてきた。
「共田君、何か話は出来た?」
「校内の事以外だと妖怪さんとGO! についてくらいかな」
「あ、そうなんだ!」
「私達も共田くんの影響で始めたからやってるんだよ!」
女子達が沸き立ち、男子達もそれに聞き耳を立てながら携帯を取り出し始めると、四季さんはそれに驚きながらも楽しそうな様子で笑った。
その姿を見ながら安心していると、サッカー部トリオが僕に近づき、進君は僕の頭に手を置いた。
「案内お疲れさん。仙田せんせが言ってた通り、お前が案内役として適任だったみたいだな」
「四季さんが親しみやすい子だっただけだよ。でも、あの調子だとすぐにクラスに馴染んで人気者になりそうだね」
「だな。んで、進との人気ツートップになるってわけだな」
「今にベストカップルだなんだって言われるな、進」
「俺と四季がか……まあ悪い気はしないな」
進君は余裕たっぷりな様子で笑い、その姿に僕は進君はやはりスゴいなという感想を抱いた。そしてお昼休みが終わる時間まで四季さんは女子達に話しかけられていたが、その顔はとても嬉しそうな物だった。
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