第28話

 翌日、僕はいつものように学校に向かっていた。けれど、その気持ちはいつもと違って悪いものではなかった。



「早依さんも言っていたけど、外に出て歩いているという事が元気の源になっているのかも。それに、魚倉君と話す事も増えてはいるし、それも楽しみの一つになっているのかもしれないな」



 妖怪さんとGO! がきっかけとなった事で僕の気持ちも以前に比べて上向きになっているのはとても嬉しい事であり、思わず鼻唄でも歌いたくなってしまう程だった。



「とはいえ、慎重に生きるのは続けていこう。昨日も感じたけど、変に自信をつけて調子に乗ったらよくない方にしかいかないから」



 戒めるように言った後に歩き続ける事数分、学校に着いて下駄箱で靴を履き替えてから教室内に入った瞬間、数人の男子に突然取り囲まれた。



「なっ、え……!?」



 突然の事に僕は困惑し、休み前に何かやったかと考えていると、数人の男子は揃って頭を下げ始めた。



「共田! 俺達にも女の子を紹介してくれ!」

「え? お、女の子……?」

「あの噂の女の子と仲が良いんだろ!?」

「頼むよ、共田大先生!」

「えっと……何がなんだかわからないんだけど……?」



 噂の女の子というのは恐らく早穂さんの事だろう。僕にとって身近な女の子は妹の愛花と週末と祝日に一緒に散歩をしている早穂さん、そして早穂さんの家でメイドをしている吉良さんくらいだけど、噂になってるのは早穂さんの方だから。


 ただ、早穂さんを紹介してくれというのはどういう事なのだろう。そんな事を考えていた時、魚倉君が近づいてきた。



「おはよう、共田」

「おはよう、魚倉君。あの、これは一体どういう……?」

「それなんだけどさ、俺のせいなんだよ」

「魚倉君のせい?」

「ああ。土曜日にお前達の写真を携帯で撮っただろ? それで、あまりにも良い写真だと思ったからさっきも見ていたらソイツらや女子達に見つかって、それで写ってるのが例の女の子だって話したら自分達も会ってみたいって言い始めてな」

「なるほど、それで……」



 僕が納得していると魚倉君は僕を取り囲んでいる男子達に話しかけた。



「ほら、まずは共田を席に座らせてやれ。そこにいると邪魔だぞ」

「そ、そうだな」

「共田、また昼に頼みに来るからな!」



 男子達が去っていき、僕が席に着くと、魚倉君はため息をついてから近づいてきた。



「まったく……共田、ごめんな。俺がうっかりしてたばかりに……」

「仕方ないよ。でも、それだけ良い写真になってたんだね。よかったら僕も欲しいかな。早穂さんにも送りたいし」

「ああ、もちろん。そういえば、昨日はどうだった? 俺は予定があって参加したくても出来なかったけど」

「うん、昨日も色々あったよ」



 そして僕は先生が来る時間まで魚倉君に昨日の活動について話をした。

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